液タブで絵を描いてみるまで
趣味はにかける時間やエネルギーは、人それぞれちがう。「趣味」という言葉そのもののニュアンスだってちがう。集中するものや没入するもの。向上したいものや気分転換にしたいもの。
私にとって文を書くのは、時間を自分でどうにか作ってでも楽しみたい趣味の一つ。
映画やマーベル関連のドラマを観たり好きな漫画を読んだりするのは、気合いなどいらない。でも時間やエネルギーがないとあきらめてしまう。
ピアノとかお菓子作りとか縫物とかは同じ位置にあって、「えいや!」と気合を入れてきっかけを作らないとできない。それでもその世界に入りこんでいる時は楽しいと知っているからまた取り組みたい。と思いつつ「えいや!」がないとなかなかできない。
それよりさらにもう少しハードル高くなるのが絵を描くこと。
人の絵、イラストを見ると羨ましいなと思うけど、どちらかと言えば目の保養。憧れであって、自分でするものという感覚ではない。
描いてみると面白いので、時には楽しみたいよなあと思うけれど。
色の組み合わせを考えるのも好き。パッチワークだって、昔楽しんだ水彩画だってそうだった。
だから絵具とかクレヨンとか色とりどりのペンとか並んでいるのを見ると、ワクワクする。
でもそれを生かせない。
形だけでなく、思った色が出せない。
水彩画を楽しんでいた頃も心象風景みたいな、模様みたいなものを描いていたけど、思い描いている色と少し違う。「ウーンちょっと違うんだけど」と思いつつやり過ごしていた。
その程度の「好き」だし、今までの絵にかける時間が圧倒的に少ない。
そもそも絵が上手ではない。ある程度描ける人が「いやあ上手じゃあないのよ」と言うレベルじゃあないのよ。
かと言って「画伯!」と楽しんでもらうほどの味があるわけでもない。
ただただ素人レベルで上手とはほど遠い。
なのに時々描きたくなるんだよ。困ったものだね。
まあ文もそんなものだけどさ。でも文は何よりも好きだから、時間だけはやたらに割いてきた。
noteで知り合ったみやべゆか先生に習って少しは描く時間も作ったけど、それ以外ほぼ描いていない。
ごく初歩的で当たり前なところを教わっただけで少しだけ絵がマシにはなるので、習うのはすごく良いなあと今も思う。文とちがってすぐに助言を仰ぎたくなる。
好きなキャラクターを描きたい気持ちもあった。
我が家には中古の液タブがあるため、使ってみたいと思っていた。
そこに「鬼滅の刃」の伊黒さんのキャラクターを出して、上からなぞる。それを見てもだえる。
そのはずだったけど、液タブがうまく使えない。
機械関係は苦手だし、行き当たりばったりで使うから、こみ入ってくるとイライラする。もうずっとそう。こういうの、イライラする!
イライラして全部を投げ出してしまうのを回避すべく、これもみやべゆか先生に習おうとお願いした。
ところがリモート越しでもなかなかうまくいかない。パソコン越しの先生を前に、私はイライラしてしまった。機械苦手!!
でも先生は無になって、私をじっくり待って下さった。
おかげでどうにか最低限を使えるようになり、その後少しは人物を描いてみたものの、もだえるほど上手くなぞれなかった。
しばらく液タブに触れたくなくなってしまった。またイライラするのが怖い。伊黒さんについてはやはりプロの描いた漫画を見て、グッズを眺めていれば良いと思うことにした。
でも液タブがホコリをかぶった頃。
以前着ていたコートについてエッセイを書きたい気持ちが盛り上がってきた。
コートの写真を探したけど、正面から鮮やかに写っているものがない。
そうだ。自分で描こう。
最初はクレヨンを出してきてどうにかその色が出ないか試行錯誤した。
でも出なかった。
あのコートの、あの色を出したい。
液タブが視界に入ってくる。
何度も、何日も、「あのコートの……」「液タブ……」と繰り返し。
ある日。すごく重たい腰をどうにか上げて、とうとう液タブとパソコンをつないでみる。
どうやって使うのか、何もかも忘れたよ。と思うけど少し頑張ってみる。先生だって忍耐強く待ってくれていたではないか。私だって無になってどうにか絵を描けるようには頑張って操作するのだ。
その後、コートを描く時にコツなどないか聞きたくて、あと色がうまく塗れないのでやり方を聞きたくて、結局先生にレッスンを申し込む。
そうやって私はどうにかコートの絵を描き、色を塗れた。
ただね、こういうものって機能が多いでしょ。便利な分、使いこなせないと損した気分になる。筆の使い方とかペンも色々種類があるし、点線とかさ、直線とかさ、背景も色も使いこなせたらどんなに楽しく絵が描けるのだろう。下手さが少しはカバーできるほどには見えるかもしれない。そんな幻想を抱きつつ、使えていない。
とりあえず線を描いて、色を塗る。
以上だ。
ぼかしたり、あんなことやこんなこともできますよ。
先生がさらさら~と見せてくれて「うおっほう……すごいー!」と感動するも、使えるのはその一瞬で、すぐ忘れる。
コートを描きながら、ふちの色と中の色、描いていくうちに元の色がわからなくなる。よく目をこらすと、コートの色が何色にも分かれている。白だって200色あるんでしょ? 赤にだって何百色とあるんだな!
ペッタリと同じ色を出したかったのにできず。消したり描いたりしているうちに、ふちがガタガタしてきた。色塗りの太さが難しい。ペンキでうまく塗りつぶせない。
あきらめて地道にシャカシャカ塗りつぶした。
そんなわけで、もう少し機能を使いこなせるようになったらなあと思ってはいる。
絵は、下手なりの私で良い。時々描いて「そもそも練習にかける時間がちがい過ぎる」と自分を嘆きつつ、少しでも伝わったら良いと思うことにする。
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。