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note小説 三十路のオレ、がん患者

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毎週月曜更新の小説。30代の会社解雇された「オレ」がガンになり、患者視点から描いていく
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2016年5月の記事一覧

note小説 三十路のオレ、がん患者   第18回 母との関係

note小説 三十路のオレ、がん患者   第18回 母との関係

オレは自分の母以外を知らない。

当たり前だと言いたいところだが、人によっては親戚をたらい回しにされたり、継母など2人以上の母親を経験する人もいる。

今のところ、オレは実母だけの経験しかない。

ただ、他の人の母親経験を知らないと言いたいだけで他意はない。

母の経歴をざっと紹介しよう。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第17回 最終日 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第17回 最終日 玉川温泉

母の仕事の都合があるので長期滞在とはいかない。

オレは温泉、母は岩盤浴メインで療養をした。

帰りはダイヤ的に新幹線までの乗り継ぎがギリギリだ。

田舎のバスは失敗が許されない。

ミスしたら1時間待つ事さえ当たり前。

信じられないが、乗ってみて周りを見回すと仕方ない。

ほぼ貸し切り状態だ。

バスは赤字ではないのかと思うが、聞くわけにはいかない。

家に着く頃には忘れているだろう。

オレ

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第16回 中日 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第16回 中日 玉川温泉

母はオレに岩盤浴をさせようと躍起になっている。

温泉と効果がそんなに違うのかオレには全然わからない。

オレとしても折角来たから観光気分で見るだけ見てる事にした。

外に出ると、戦隊ものか仮面ライダーで敵と戦うような岩場などが見えた。

と言うか正確に言えば山のふもとになるのか。

あちこちで湯気が出ている。

これが免疫力を上げるのか。

湯気の近くで思い思い御座を敷いて寝ている人があちこちに

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第15回 初日 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第15回 初日 玉川温泉

ドスン!

バスを降りようとした時、後ろで音がした。

振り返ると、母が倒れていた。

バスが少し動いた拍子に段差から転げ落ちた。

幸い何でもなかったが、たまに母は転げ落ちる。

母が胃がんの時、ある地下駐車場に寄った時に同じような事が起きたのを思い出した。

大した段差ではなかったものの振り返ると同じように転げ落ちていた。

その時は手術を控えていたので、念のために救急車を呼んで事なきを得た。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第14回 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第14回 玉川温泉

外来の帰り道。

トボトボと帰路につく。
歩いて10〜15分なので、考え事をしながら歩く。

病理検査の結果は、母と同席したが、具体的に抗がん剤の話までは出なかった。

どう言おうか困ったが、言わないわけにいかないので言うしかない。

会社をクビになった事よりは言いやすいかもしれない。
同席していたから予想はしているだろうし。

薬の説明は、またやるみたいだし。

若いし身体を巡るのが早いかもしれ

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