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笑える旅話|“消化はされてるけど、ただの草だから” という話

◆お食事中の方は、ごちそうさましてから読むことをお勧めします。

旅の途中でサリーという女の子と仲良くなった。
そのお母ちゃんがオリーブの収穫のバイトを募集している、と聞き、
彼女の実家へ働きに行った。
(サリーは旅を続けるということで、一緒には来なかった)

サリーの母ちゃんはマギーと言った。
着いてすぐマギーに
『明日から羊の毛刈りを手伝ってちょうだい』と言われ、
『???』となった。

『あら?オリーブは??』と思ったが、羊の毛刈りもまた面白そうなのでオッケーした。

翌日からサリーの弟、ダニエルと2人で羊の毛刈りが始まった。
広大な土地にいる羊をダニエルと牧羊犬2頭が柵の中へ追い込む。
で、一頭ずつ連れ出しては電動バリカンで刈っていく。

見渡す限り、全てマギーの土地だ
ダニエル。見た目は強烈だけど優しい。


私は、ダニエルが羊を一頭片付ける度に刈り取られたフリース(刈り取られた毛のこと。この段階ではフリースは1枚の大きな布状で、広げると羊の身体の形をしている)を大急ぎで纏め、近くの作業台に広げ、また大急ぎでダニエルの所まで戻って、彼の足元に散らばるゴミや毛屑を箒で掃き、またまた大急ぎで作業台へ取って返し、ダニエルが次の一頭を仕上げる間に、フリースからゴミや使えないパーツを選り分ける作業をした。


目の回るような忙しさだったが、新しいことをするのは面白い。

毛足が短くて商品価値の低い部分をフリースから切り離し、袋にまとめる。
お尻の近くは排泄物で汚れているので、うんこがそのまま付いているところはゴミ袋へ、黄色く変色している部分はまた別の袋へ大急ぎで切り分ける。
手が汚れるのを気にしていては間に合わない。
最初から最後まで全力の速さでこなす。

羊たちは普段自由に森や草原で過ごしているので、彼らのフリースの中には小枝やゴミや植物のトゲなどたくさん紛れ込んでいた。

トゲはふわふわのフリースの中に入り込んでいて外からは見えない。
大急ぎで選別をしていると、何度もブスっと手に刺さった。
かなり硬く、長さが2センチくらいあったので、刺さると手から血が出た。

作業は全部素手だった。
毛に含まれる脂と排泄物とトゲによる流血で、手はとんでもなく汚れた。

そして、何も考えていなかった(というか、自分の作業内容について事前に聞かされていなかった)旅具店は、その日のランチにサンドウィッチを持参していた。

お昼休み。
羊の毛刈り小屋には水道が無いことが判明した。

手はうんこまみれだ。

一応外に出てみたが、小屋の周りは柵の向こうに牛が見えるだけで、水道は無かった。

とりあえず草に手を擦り付けて、取れるものは取った。
が、爪にはびっしり詰まっている。

困った旅具店はダニエルに相談した。
するとダニエルは
『羊は草しか食わない。うんこは、消化はされちゃってるけど、ただの草だから』
『うちは牧草地に農薬を撒いたりしてないから、あいつらのうんこはオーガニックの草ってこと。全然汚くないよ〜』
と明るく言った。

旅具店もそれを聞いて
『あ、なるほどね。うんこはただの草なのか』
と妙に納得し、そのままの手でサンドウィッチを食べた。

その土地に行って、その土地の人間に言われると、どんなことでもそれっぽく聞こえてしまう。

サンドウィッチを食べながら、やっぱり手が臭いのは気になったが、これも羊の毛刈りの仕事ならではだと思うと楽しかった。

ダニエルと私の二人三脚の毛刈りは1週間くらい続き、かなり仲良くなった。

マギーは仕事にとても厳しい人だったが、旅具店の仕事をとても褒めてくれて、オリーブの収穫が終わったらダニエルと組んで毛刈りの仕事をしながら旅をしたらどうか、と言った。
(羊の毛刈りはとてもいいお金になる)

とりあえずマギーが所有する羊を全部刈り終えて、旅具店はいよいよオリーブの収穫をスタートさせたが、その後もダニエルとはよく遊んだ。
彼は牧羊犬の調教や馬の調教などもしており、週末はよく馬で遠乗りに連れて行ってくれた。

その話はまた別で書こうと思う。

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