次は自分が「大丈夫だよ」と言えるように。最適なコミュニケーションの実現のため、泳ぎ続ける僕の価値観
こんにちは!カタリバ広報部の森田です。
カタリバで働くあの人は、どんな価値感を持っているのだろう?日々どんな想いで働いているんだろう?そんな想いからスタートした、職員一人ひとりにスポットを当てた連載企画「9BOX 〜わたしが大切にしている9つの価値観〜」。
▼前回の記事
今回は、デジタルを中心としたコミュニケーション施策をメインで担当している藤沼 靖尚さん(以下、やすさん*)にインタビューしました。
高校時代での出会いが、今の自分を形成している価値観やカタリバ入職へとつながっているというやすさん。そんな彼の忘れられない出会いや、仕事で感じている難しさ、そして9つの価値観について迫ります。
やすさんの9BOX~わたしが大切にしている9つの価値観~
Q. 自分を表すひと言で「泳」という漢字をあげたのはなぜですか?そこに紐づくエピソードがあればお聞かせください。
僕は主に新規の方からご寄付を頂戴するためのコミュニケーション施策を中心に業務を行っているのですが、そのためには「魚の目(流れを読む力)が大事」でして……
世の中全般の動き・同じ業界の動きなどを観察しながら、まるで魚が水中を進むように、地道に施策を模索しているので、「泳ぐ」という意味にしました。
また、「泳ぐ」には「前のめりになってよろめく」という意味もあって、それが僕の仕事っぽいなあと思ったのもあります。
Q. どんな点から、自分の仕事は前のめりになってよろめいているようだと感じたのでしょうか?
9BOXシートの中の「1勝3分6敗」にも関連するのですが、僕が日々行っている業務は、感覚的に10回中1回は成果が出て、6回は成果が出ない中で、3回はどちらに転ぶかわからないものでして。
その3回のうち1回でも成果へつなげるのが僕に求められていることだと思っていますし、1回でも成功にもっていこうともがく姿が、前のめりになってよろめいている姿そのものだな、と。
Q. 個人的にもう少し詳しく聞いてみたいのが「それ、世の中動かしてますか」。こちらについて具体的に教えてください。
僕はコミュニケーションを仕事にしているので、自分たちの打ち手の結果、世の中が変わっていく。イメージ的には、A地点からB地点までをつなげる矢印のような作用をもたらすことが価値だと思っています。
その “世の中” というのはどんなに小さくてもよくて。
コミュニケーションの最小単位は1対1。画面の先で見て下さっている方に、心を込めて手紙を書くようなイメージで行なっています。
また、寄付者さんからのコメントもできる限り確認しています。ご寄付を頂戴したり、ときには応援メッセージまで頂戴することもあって、インタラクティブなコミュニケーションが実現した際にはとてもやりがいを感じますね。直接お話していなくても、お寄せいただいたお声はとても大きな力になっています。
Q. カタリバに入職してから、より意識することが増えた価値観はありますか?
「モーマンタイ」です。こちらは「問題ない」「大丈夫」という意味なのですが、僕の仕事の価値はまさにこれだと思っています。
新しく始める施策や、やってはみたものの思ったほど成果が出ていない施策においてサポートを依頼されることがよくあるのですが、冗談交じりに「モーマンタイ」と言いながら、矢印作りをするのが役割だったりします。
この言葉を意識したきっかけは実は高校生の頃の出会いにあります。
Q. 高校時代のお話についてぜひお聞かせください。
僕は東北地方の出身で、高校1年生のときに東日本大震災を経験しました。
その後、家庭の事情で転校をするのですが、学校に上手く馴染めませんでした。
当時を振り返ると、自分の中で何も整理がついていないのに世の中が勝手に進んでいき取り残されていく感覚や、親元を離れ祖父・祖母のお世話になっていたこともあり、周りに迷惑をかけてはいけないというプレッシャーを強く感じていたと思います。
周囲に思うように相談もできず、やがてストレスを抱えきれなくなり、夏休み明け頃から不登校に。周囲とのコミュニケーションを拒否するようになりました。
不登校状態が半年間ほど続いたある日、コンビニで立ち読みをしていると、面識のある先輩に会い、家に遊びに行くことに。
軽音楽という共通の趣味もあったことで定期的に遊びに行くようになり、次第にその先輩に心を開けるようになっていきます。
あるとき、ふと自分の状況を相談した際に「大丈夫っしょ」と声をかけてくれました。
そこから徐々に心の壁が溶け、先輩伝いに周りとのコミュニケーションが取れるようになったのです。
「学校に通いたい」、「学びたい」という意欲も取り戻し、再度転校をすることにはなったものの、無事高校を卒業し、大学に進学することができました。
今度は僕が、周りに「大丈夫だよ」と言える立場になりたい。
そう強く思ったので、社会人になった今でも「モーマンタイ」という言葉を意識していますし、僕自身もこの言葉に支えられています。
Q. ビジネスセクターからカタリバへ転職したやすさん。教育やNPOに興味を持ち始めたきっかけは?
カタリバのことは知らなかったのですが、Facebookで流れてきた求人募集で見た “ナナメの関係” に強く共感したのがきっかけです。
もともとキャリアを通じて、過去に自分がしてもらったように、ボランティアや寄付を通じて周りを支えることをしたいと考えていました。
高校時代の自分の体験は、今思えば僕にとっては親や先生のようなタテの関係でもなく、友達のようなヨコの関係でもない、利害関係なく本音で相談ができる“ナナメの関係” だったと思っていて。そのおかげで僕の今がありますし、心の底からナナメの関係の価値を信じられています。
だからこそ、カタリバの活動や理念をもっと世の中に広げていきたいと思っています。
Q. “ナナメの関係”をより広めていく中で、どんなときにやりがいや難しさを感じますか?
コミュニケーション施策は、やればやるほど難しさを感じますね。自分の作った発信物が実情と乖離がないか、ご覧いただく方のお気持ちに寄り添えているか、生徒が見て心を傷めないかなど、気にする点は多いです。
また、やりがいについて、自分の価値観としてあげている「二途を追う」にもつながりますが、「自分たちの届けたい価値を伝えること」と「インパクトのある届け方」はトレードオフになりがちなのですが、これらを両立させ、カタリバの活動に共感いただき、応援したいと思っていただけたりする瞬間にとてもやりがいを感じます。
Q. 最後に今後の展望についてお聞かせください。
カタリバでは “積み上げること。つなぐこと” を大事にしていきたいです。
目に見える施策や数字だけでなく、目に見えないカタリバのブランドが守られているのは、先輩方の試行錯誤の結果だと思っていて。これからは自分が何を積み上げて、どう次につないでいくかは常に考えています。カタリバの幹をちょっとでも太くするような取り組みをしていきたいです。
≪インタビューを終えて≫
ときどき、自分たちが届けたい内容が伝わっているなと実感するときがあります。その瞬間がたまらなく嬉しくて、やりがいを感じるんですよね。
そう語るやすさん。前のめりになってよろめきながらも、着実に前へ泳げているからこそ、相手へ想いが通じるのではないかと感じました。カタリバの幹がより太くなり、ちょっとやそっとのことでは折れない木になる日が待ち遠しいです。