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外国ルーツの高校生との出会いがもたらした、私の変化

カタリバのRootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援)に所属する私は、外国ルーツの高校生が日本の企業でインターンシップを行う「Rootsインターン」を担当しています。そんな私にとって印象的だった生徒のエピソードや、自分自身に生まれた変化についてお話できればと思います。

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今は外国ルーツの高校生支援に関わる私ですが、カタリバに入るまで日本で外国ルーツの子どもの人数が増えていることや、彼らを取り巻く課題を知りませんでした。カタリバへの転職を決めたのは、前職で子ども向けの実験教室など教育事業に携わり、「学ぶことに対する子どもの意欲をどのように育んでいくか、もっと深く考えたい」と考えるようになったことがきっかけです。

カタリバの採用プロセスのなかでRootsプロジェクトを知り、課題が明確ながらも世の中の認知度が高くはない、外国ルーツの高校生に関するテーマに向き合いたいと思いました。

私がプログラム開発や運営を担当しているRootsインターンには、2つの目的があります。

1つは、インターンシップを通して外国ルーツの高校生自身の将来像を明確にし、高校での勉強や自分の進路と向き合うなど今やるべきことに対する意欲を高めることです。

私たちが接する外国ルーツの高校生と留学生との大きな違いは、本人の意思で日本に来たのではなく、親や家族の都合で日本に来ることになったケースが多い点です。本人の意思ではないから、日本社会でキャリアを築くことへの不安も大きく、自分の将来像が見えないために、学ぶことへの意欲が湧きづらいという声も耳にします。

Rootsインターンで日本で働く大人と話したり仕事を体験してみたりすることで、「将来自分はこんな風に働いているのかもしれない」「自分も日本の会社で働けるかもしれない」という未来への自信を持つことにつなげたいと考えています。

私にとって特に印象的だった生徒は、中国にルーツを持つAさんです。学校や部活の欠席が多く、Rootsのオンライン面談も遅刻や欠席が多い生徒でした。そんなAさんがインターンシップで訪れたのは、動画制作を行う会社。

元々動画制作に興味を持っていたAさんにとって、動画を撮影したり、動画制作を仕事にしている社員から話を聞いたりしたことは大きな刺激になったようで、インターン中にはこれまでのAさんには見られなかったような笑顔が溢れる瞬間もありました。

さらにインターンシップ後の面談には遅刻どころか開始時間より早くZoomに入室し、30秒くらいの動画を自主的に作ってきては私に見せてくれるようになったんです。1週間で3本ほどの動画を作ってきたこともあります。

インターンシップについて振り返るなかでAさんは、「自分が動画制作に興味があるのは、人の助けになりたいから」ということに気づき、日本を訪れた外国人に観光スポットをおすすめする動画を作りたいという目標も生まれました。

最近は学校で、多言語交流部の部長として「交流を求める生徒の助けになりたい」と頑張っているという話も聞いていて、1つのきっかけでこんなにも変われるのかと驚いています。

Rootsインターンのもう1つの目的は、外国ルーツの高校生を認知していない大人側が子どもたちと出会う機会を作るということです。

Rootsプロジェクトに関わる前の私のように、外国ルーツの方のことをよく知らない、イメージがわかないという方もいらっしゃると思います。私自身も、以前は自分の身近に外国ルーツの方はほとんどいないと思っていました。でも、意識して見渡してみると、想像している以上に外国ルーツの方はいらっしゃるんですよね。

他にも例えば外国ルーツの方がフードを被って歩いている場面に出会った時に、以前だと少し「怖い」と思うことがあったのですが、今は「もしかすると、すれ違う相手に外見だけで怪しまれ、ジロジロ見られたことがあるからなのかもしれない」「職務質問をされることがあるからなのかもしれない」など、普段接する外国ルーツの高校生から聞く話を思い浮かべながら、その方の背景に考えを巡らせるようになったり。

知らないことが「怖い」「不安」という感情につながる一方で、1人でもいいから「出会ってみる」ことで見える景色が大きく変わると思うんです。外国ルーツの高校生だけでなく、日本社会に生きる私たち大人側の変化も生み出していけたら……そんな思いを持ってRootsインターンに取り組んでいます。

私は前職時代に言語化した、「一人ひとりに世界を変える力が備わっていると信じ伝える」というライフミッションを大事にしています。人それぞれに見える世界は少しずつ違っていて、誰しもが持つ自分ならではのレンズから見えたことや気づいたことを他者に伝えることで、世界は少しずつ変わっていくんじゃないかなと。Rootsプロジェクトを通して、自分ならではの“レンズ”に外国ルーツの高校生が気づくことができる機会を届けていきたいと思っています。

今回のコラム担当:内山 啓文(うちやま・ひろふみ)/Rootsプロジェクト
高専を卒業後、メーカーエンジニア、UX/サービスデザイン、中高生の科学技術教育、ベンチャー支援などに携わり、2023年にカタリバに転職。Rootsプロジェクトで、Rootsインターンのプログラム開発・運営を担当する。


日常生活の中で外国ルーツの方に会うことのハードルが高くても、まずは「知る」ことからでも変化は生まれると思います。このブログを読んでくださった方でもう少し知りたいなと思ってくださった方がいたら、Rootsプロジェクトが発信しているnoteで、外国ルーツの高校生一人ひとりのエピソードに触れていただけたらうれしいです。

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