シナリオ【 アイドル 】

ふたりが出会ったのは中学時代の修学旅行。忘れられないまま離れて暮らし、大学3年の春、彼は同じ日に同じ場所に立つ…会いたいと願った6年越しの恋。

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●画面の左端に横書きでタイトル「アイドル」

続いて以下の文字が出る。

アイドル【idle】偶像。崇拝される人や物。人気者。あこがれの的。熱狂的なファンを持つ人。


●表参道(午後)

F.I.5月下旬。新緑の樹々。爽やかな風。洗練されたファッションの若者たち。通りに面した交番。中学生の男子(学生服)のグループ。


●原宿・竹下通り

様々な店。学校帰りに遊びに来た女子高生、修学旅行らしき女子中学生など。


●明治神宮参道

砂利に埋まるように落ちている白いカバーをしたスマートフォン。男子中学生たちのスニーカーがそばを通り過ぎ「ちょちょちょ待って」と山崎修也の声。彼の手がスマートフォンを拾う。「スマホ落ちてる」

拾いに戻った修也のむこうに友人4人がいて、

友人A「お、マジで」

友人B「女もん?」

石井優斗「中見れる?」

修也「(スマホを操作し)いや、ロックかかってる」

友人C「放っとけ。そこら置いとけ」

修也「マジ」

友人A「行くべほら」

修也「誰かに持ってかれるよ置いてったら」

友人B「目立つとこ置いとけ。そこら端とか」

友人C「落としたヤツ戻って来るって」

修也「そうかな」

優斗「持って歩いてたらかかってくんでね、電話」

修也「ちょっと届けてくる。さっき交番見たし」

友人C「遠いって。めんどくせって」

修也「先いいよ行ってて。俺行ってくる(と引き返す)」

優斗「(見送って)さすが警官の息子」

友人A「迷子になったらどうすんだ」

友人B「自分が警察の世話になったりして(と行く)」

友人C「俺知らねぇ」

友人A「もう戻って来るなよ」

友人B「それは警察じゃなくて刑務所な」

少年たち「ハハハ(と笑いながら行ってしまう)」


●参道

修也がスマートフォンを持って急ぎ足で来る。電話が鳴って驚き止まり、出るしかないと電話に出る。

修也「はいもしもし」

少女の声「あ、出た出た、はい」

別の少女の声「あ、もしもし、すみません。私あの、その携帯電話の持ち主で」

修也「あぁ」

少女の声「落としてしまって、取りに行きたいんですけど、そちらはどちらですか?」

修也「あ、明治神宮の(見まわし)道って言うか、広い道で」

少女の声「あ、じゃあ行きます。すみません待っててもらえますか?」

修也「いやここだと、たぶんわかんないって言うか、見つけられるかどうか。今どこですか」

少女の声「竹下通りです。原宿の駅に戻るとこで」

修也「あ、じゃあ橋、鳥居に入るとこの橋の上で。線路の上にかかってる。そこまで行くんで」

少女の声「わかりました。ありがとうございます」

修也「じゃあ」

少女の声「ごめんなさい」


●神宮橋

修也がスマートフォンを持って走ってくる。女子中学生の4人グループがいて修也を見る。ひとりが指さす。別の少女が駆け寄る。西沢留未。4人の中で一番背が高くショートカット。

留未「すみません、さっき電話したあの(スマートフォンを見る)」

修也「あぁ、はい(と返す)」

留未「ありがとうございます(受け取りお辞儀)ごめんなさい」

修也「いやぁ、交番行こうと思ったら鳴って、かかってきて」

留未「そうですか」

修也「うん、よかった」

留未「ありがとう」

修也「ううん(留未のむこうで待っている友人たちを気にし)じゃあ(行きかける)」

留未「ごめんなさい。ありがとう」

修也「(一瞬振り向いて手をあげ、小走りで行く)」

留未「(少し見送ってから仲間の方に戻る)」

修也が歩調を緩め、鳥居に入る手前でまた振り向く。

留未が仲間たちに「よかったね」と言われながら去っていく。後姿。

修也、走りだして鳥居の中へ。

留未が歩きつつ、仲間たちに気づかれないように振り向く。

修也の走り去る後姿。画面が白くF.O.して、


●桜の花(昼)

満開に咲いている。


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