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愛鐔紹介

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#成木一成

成木鐔㉔ 伝村上義輝所用鐔写

成木鐔㉔ 伝村上義輝所用鐔写

重要文化財に指定されている伝村上義輝所用と伝わる鐔を成木一成氏が写した作。本歌は以下の作。

同図を船田一琴も写している。
こちらは独自の文字を刻んだり、耳に桜の象嵌を施すなどオリジナリティを加えている。

さて以下が成木氏の製作した同図の鐔。
こちらは本歌を忠実に写している。
横95.9㎜×縦96.2㎜×厚1.8㎜

ペラペラだが手で曲げる事は出来ない。
薄い板材を買ってきてそのまま使って作って

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成木鐔㉓ 山吉兵写

成木鐔㉓ 山吉兵写

今回鑑賞記録を残すのは山吉兵写の成木鐔。
横82.4㎜×縦85㎜×厚5.3㎜。

地鉄が常に見る成木鐔とは異なり、赤茶けている。
以下左の柳生鐔写しはよく見る成木鐔の艶のある少し白みのある黒色、右は今回の山吉兵写しである。赤茶けている様子が伝わるだろうか。

拡大して見ると、明らかに異質な地鉄が露わになっている部分が見られる。

肌触りも独特で全体的にカサカサしたような触り心地。
成木氏なりに山吉

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成木鐔㉑ 四分一地の牡丹獅子図大小鐔

成木鐔㉑ 四分一地の牡丹獅子図大小鐔

鉄鐔作りで有名な成木一成氏による四分一地の牡丹獅子図の大小鐔。
この鐔を手にしたのは2022年の大刀剣市であるが、まさかこのような四分一の成木鐔が存在しているとは思わず、目にした瞬間に衝撃が走ったのは記憶に新しい。
成木一成氏の作ではその殆どが鉄鐔である事は図録を見ても分かり非常に珍しい作に思う。
他に色金だと真鍮の安親写しなどが存在しているようである。
(本鐔については以前こちらのブログで触れた

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成木鐔⑲ 中津川市制 四十周年記念鐔

成木鐔⑲ 中津川市制 四十周年記念鐔

成木鐔を探していると何度も何度も目にする鐔がある。
それがこの中津川市制40周年を記念して作られた鐔。

表には長野県阿智村と岐阜県中津川市にまたがる「恵那山」と風流踊り、裏には中津川の市章と市の花であるサラサドウダンが描かれている。

同図の鐔はヤフオクでも度々出るし、昨年の大刀剣市でも出品された。

上記は2023年大刀剣市の時の物であるが、ここに書かれているように鍛造の鐔ではなく、鋳造の鐔に

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成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

今回紹介する鐔は無鑑査鐔工、成木一成氏により平成4年に作られた信家写の道歌鐔。
刀連全国大会の天位賞で送られた鐔と箱書きがあります。

この本歌は以下になります。

表裏それぞれ並べて見ます。
櫃孔は後世開けられたものと思われるので、写の方は製作当初の形を再現するためか櫃孔は開けられていません。

この鐔は平成作でいわゆる成木氏の作風が確立した頃の作と見られ、トロンとした艶やかな地鉄をしている。

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成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

今回紹介するのは昭和54年(己未)に作られた古刀匠鐔を写した鎌透かしの板鐔。成木氏は昭和53年から自家製鋼による鐔作りを開始している。
箱は無いが銘の形はこの時期のものと一致しているし、まず成木氏が製作した鐔で間違いないと感じる。
縦104㎜、横103㎜、厚み2㎜(耳、切羽台共)と大型。

こちらは常に見る成木鐔とは鍛が明らかに異質で、一言で言えば泥を乾燥させたような肌をしている。
爪ではじくとカ

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成木鐔⑮ 赤坂初代忠正  鉢木透写

成木鐔⑮ 赤坂初代忠正 鉢木透写

好きすぎる成木鐔の紹介が止まりませんが、手元にある成木鐔でまだ紹介していない物がいくつかあるので気が向いた時に載せていきます。
今回は有名な赤坂鐔の鉢木透写の鐔になります。
謡曲の「鉢木」の物語を比喩した図柄です。

箱書きは無いのですが、鉄の質感や銘の書体から平成頃の作と思われます。

成木さんの作は高温で熱する為か側面に鍛割れが出ているのが多いのですが、こちらの作も出ています。
むしろこれがあ

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成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔で個人的に多く見るのは透かしの鐔だろうか。
尾張や赤坂、京透など、様々見る。

今回は鉄地でここまで凝った肉彫を施した作もあるのかと驚いた事もあり、購入した品。個人的には傑作の部類に入る1つに感じられる。

昭和57年というと、成木氏が炭焼きからたたら作業を一貫して行うようになった年で、昭和57年11月~昭和58年1月まで連日けら押し作業と記録作成を行っていた。
本作はこの2ヶ月後の作である

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成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

以前書いた現代鐔工、成木一成氏による信家の亀甲紋写の鐔。

よく見る成木氏独特の艶ある錆色とは異なり古風でしっとりした風合いの本鐔は、個人的にもとても良く出来ているように見え、仮にここに信家と銘があったら信家と信じてしまいそうな出来に見えるほど。もしくは江戸期の明珍あたり。

そんな折、信家鐔を詳しく知る方にお会いする機会があったので本鐔を実際に見て頂き、本歌信家との違いについて聞いてみたところ、

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大刀剣市の戦利品をじっくりと

大刀剣市の戦利品をじっくりと

大刀剣市2022の戦利品として成木一成氏の大小鐔を買いました。
これで手にした事のある成木鐔が10枚になりました。
今回の大刀剣市は出展側だったことで会場をゆっくり回ることも出来なかったことから何も買わずに終わるかと思っていました。
加えて成木氏の鉄鐔についてはずっと欲しかった物が先日手に入ったばかりで、もういいかなと思っていたのですが、どういう縁か大刀剣市の最終日の終わり頃に刀屋さんがこの鐔を紹

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成木鐔⑤甲冑師写

成木鐔⑤甲冑師写

成木鐔がまた一枚増えました。
前回信家写しの鐔が手に入り大満足していたのですが、成木さんの企画展の本を読んでいると成木さんの製作していた鐔に実に多様な作風がある可能性を感じ、一成さんの鐔が他に無いか探していたところ、銀座長州屋さんに甲冑師写しがあるとの事でお伺いしてきました。

上記本に記載ある通り、成木さんは全国各地で砂鉄を集め鐔を作られているので鉄味が違う物が多数存在していると考えられそうです

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成木鐔①尾張写

成木鐔①尾張写

今回縁があり給付金で買える程度の比較的お手頃な値段の鉄鐔を買いました。
現代鐔工の成木一成氏による鐔で、通称「成木鐔」とも呼ばれています。
現在は消息不明らしく、既に亡くなられているのでは?とも噂されていますが、実際の所は分からないようです。

①成木氏について成木氏は古い鉄鐔の復元に情熱を捧げ、自ら材料となる砂鉄を全国各地から採集、自家製たたら製鉄によって赤坂鐔や尾張鐔、金山鐔、肥後鐔などの再現

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