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成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔で個人的に多く見るのは透かしの鐔だろうか。
尾張や赤坂、京透など、様々見る。

今回は鉄地でここまで凝った肉彫を施した作もあるのかと驚いた事もあり、購入した品。個人的には傑作の部類に入る1つに感じられる。

昭和57年というと、成木氏が炭焼きからたたら作業を一貫して行うようになった年で、昭和57年11月~昭和58年1月まで連日けら押し作業と記録作成を行っていた。
本作はこの2ヶ月後の作である。
そして翌年昭和58年には第2回個展「自家製鋼による鐔つくり」を開催しており、国内各地の砂鉄、鉄鉱石による鉄の比較をしている。

非常に目に力がある作。目の部分だけ僅かにとんがらせてある。
最初目の部分は真鍮など別素材を象嵌で埋め込んでいるかと思ったが、恐らく鉄地に鏨を入れて製作している、というのが正しい。
赤銅地のような艶やかな鉄地で蛇の鱗の艶やかさを表現している
手の入れずらい内側にも鏨を入れ鱗を精密に彫り込んでいる
裏側
側面部にも鱗が丁寧に彫られている

あまりに彫り込みが細かく最初は鋳造で製作しているのかと疑ったほどであるが、接合部も見られず、鉄地にちまちまとひたすら鏨を入れて製作している事に驚愕させられる。
因みに成木氏は同図を3つほど作るが、これと同じ図のものが岐阜県博物館に寄贈されている。

「鐔の美 -鐔工成木一成の挑戦- 岐阜県博物館」より

こちらは四分一地と珍しいものであるが、成木氏らしく、同じ構図でも顔の表情など変えていたり、裏の鱗の範囲や皺の入り方を調整している様子が伺える。

この鐔は鉄地が非常に良く、本当に赤銅のように見える。
成木氏の鉄地の幅の広さには驚かされるが、もう少し色々な時代の作を集めていずれ論文などにまとめてみたい気もする。


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以下では成木氏の経歴について恐らくなによりも細かくまとめていますので興味ある方はご覧ください。

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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