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【かすみを食べて生きる 5 HCU③>一般病棟①】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症3日目:HCU3日目>一般病棟1日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。水分、栄養とも点滴。鼻からの経管栄養を準備中。
・状態:ベッド上安静。ねたきりからベッドで少しの時間だけ上体を起こすことはできるようになってきた。
いよいよ経鼻栄養というタイミングで、私の身体には残念な変化が起きていた。
一方、HCUから一般病棟に移ることになり、新しい環境となる。
この日は長い1日だった。

<発症2日目:HCU②   発症4日目:一般病棟②>  


おむつ替えは頼め

相変わらず夜は眠れない。
常時点滴で頻回の尿意。
でもせっかくうつらうつらしかけたところでおむつ替えをお願いすると眠気も覚めてしまう。
消灯後に何度もおむつ替えを頼みにくい。
何より夜になると女性の看護師さんの数が減って頼める人がいない。
などの理由で一晩おむつを替えずに耐えたところ、翌朝おむつがぱんぱんになっていた。

朝おむつを替えてくれた看護師さんが見かねて、「おしっこが出たらすぐに呼んでくれていいですよ。肌のトラブルにもなるので」と言ってくれた。そう言ってもらえるだけでありがたかった。

謎のJ-POP

朝、他の方が朝ごはんを食べている時間、なぜかZARDやDEENなどの90年代J-POPがかかっていた。
他の患者さんが、朝ごはんのタイミングで音楽をかけているのかなと思っていた。
それが許されるとは、なんて懐の広い病院なんだろう。
この時以外も時折、音楽が聴こえていた。

はじめての注入

昨日入れた鼻の管に、はじめて入れてもらったのはお水だった。
胃にお水が入る感じがなんとなくわかった。
飲んだわけではないけれど、おなかが満たされる感じはうれしかった。
しかしお水が入ると、唾液や痰は増えた。
口からティッシュにどんどん吐き出さなければならない。
ティッシュがすぐになくなってしまう。
病棟から一箱お借りして、後で家族に持ってきてもらうよう連絡をした。
この時期は2日に一箱位のペースでティッシュがなくなった。

誤嚥性肺炎

朝7時半頃に経鼻でお水の注入をして、その後すぐの9時頃、胸部CTの検査があった。
そこでどうやら肺炎になっている事がわかったらしい。
熱も38.0℃と上がってきた。

誤嚥性肺炎。

恐らくここ2日ダラダラと出た痰や唾液が肺に入ったのだろうとの事だった。
できる限り口から出してきたつもりだったがうまく咳き込むことができず、何度かベッド上で溺れそうなほどむせた事はあった。
ずっと左を向いて寝ていたが、症状も左側に出ていたということを聞いた。
(私が起き上がれなかったこともあり、検査画像は最後まで見る事はなかった)
脳梗塞をして肺炎になるとは思っていなかった。
吸引をするか聞かれた時、吐き出せるから大丈夫と言ってしまったのがいけなかったのかもしれない。
吸引は一、二度してもらったけど、すっきりした感じはしなかったので、自分で吐き出す方が早いと思っていた。
どうしていれば防げたのかはわからない。
誤嚥性肺炎になったことにより、経鼻の栄養注入は中止。
この肺炎はその後、私を空腹で荒れ狂わせることになる。

一般病棟へ

肺炎になった事はそれとして、午後から一般病棟に移りますよ、と言われる。
一般病棟は窓もあるし、気分も一新してリハビリができますよ。
一般病棟にいっても頑張ってね。
そう激励してもらい、午後2時頃、私はベッドで寝たまま一般病棟にお引っ越しとなった。

移動した部屋は4人部屋。
入口寄りで、窓は見えないベッドだった。
「今日の担当です!」
やってきた看護師さんは元気で明るい方だった。
HCUの看護師さん達は職人のように落ち着いた印象だった。
一般病棟の看護師さんは太陽のような明るさで患者さん達を退院に向けて励まし力づける、そんなパワー感じる方が多かった。

リハビリが始まった

一般病棟に移って早々、リハビリが始まった。
この日3人のリハビリ担当の方が私の元に来てくれた。

・作業療法士 国島さん(仮)
・理学療法士 九里さん(仮)
・言語聴覚士 谷元さん(仮)

急性期の病院に入院の間、この3名が私のリハビリを担当してくれた。

作業療法士の国島さん(仮)は最初に「日常動作が一番のリハビリ」という話をしてくれた。
今まで何気なくやっていたさまざまな日常動作が病気や障害でできなくなる。
それをどうしていけばまたできるようになるか、できるようになるにはどんなことをしていけばいいのかをサポートするのが作業療法士なのだという話だったと思う。
この日は考え方をお聞きして、次から頑張りましょうとのことだった。

理学療法士の九里さん(仮)は、立ったり歩いたりという身体の基本動作の回復をサポートしてくれた。
若い方ながらとても落ち着いていて、立ち姿のきれいな方だった。
初日は主に足の動きを淡々と確認をしてくれた。
この時わたしはベッド上に起き上がる事まではできたが、九里さん(仮)にベッドに腰かけて足を下におろしてみましょうと言われ、しばらく身体全体を縦にしていない事に気づいた。
試しにやった途端、気持ちが悪くなった。
これは、無理。
そのままベッドに横になり足もベッド上に回収した。
歩けるかどうかどころでなく、まずは起き上がって足を地につけるところが始まりだということがわかった。

そして言語聴覚士の谷元さん(仮)。
嚥下機能回復をサポートしてくれた。
この日は手足の動きを確認して、言葉がしっかり喋れるか、首のうごき、ぶくぶくうがいができるかなどをみてくれた。
入院してから歯みがきはできず、かわりに水を少しだけ含ませたスポンジで口の中を拭いてもらうという事しかできなかったので、久しぶりのうがいはうれしかった。
今後うがいはしてもよいことになった。

おむつ替えは頼めない

リハビリが終わった頃、私のおむつはがっつり汚れていた。
近くにいた看護師さんにおむつ替えを頼んだ。
「ちょっと待ってくださいね」
夕方の4時頃だった。

「お待たせしてごめんなさい」
来てくれたのは6時だった。
なるほど…これが一般病棟…。
この2時間の間、看護師さん達が皆さん忙しそうなのは見ていてわかった。ナースコールはガンガン鳴っていた。
そして聞こえる範囲でコールの体感3割位が「お茶ください」だった。
歩ける患者さんもみんなお茶を頼んでいて不思議だった。
(普段ならリハビリも兼ねて患者が自分で給茶機までお茶を汲みにいくところが、新型コロナのために給茶機の使用が禁止され、必ずナースコールで頼まなければならない状況だったと後になってわかった。)
おむつは替えなくても死にはしない。
でも水分はないと苦しい人もいるだろう。
ここは自分でできることはできる最大限、自分でやらなければいけない場所なのだと認識した。
38℃の熱でぼんやりしつつも、頑張らねばならないなと思った。


---振り返って

頼んだおむつ替えにすぐ来てもらえなかったことについて、今振り返ると、もしかするとちょっと忘れられてたのかもしれない、30分程待ってこなかったらもう一度ナースコールを押して頼めばよかったのではないかと思います。
もしくは通りがかりの看護師さんに頼んでしまったので、病室担当の方に頼んだほうがスムーズだったのかもしれません。
しかし入院慣れしてなかった私は、
 ナースコール=苦しい時に押すと看護師さんが駆けつけてくれるもの
というイメージがあって、どの程度ナースコールを押してよいのか、まだよくわかっていませんでした。

ちょうど月経も来て血みどろでもあったおむつの気持ち悪さを誰に言うこともできず、でも看護師さん達の忙しそうな状況はどうしようもなさそうなことも見てわかったので、ただただ自分でなんとかせねばと思ったのでした。

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