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【かすみを食べて生きる 4 HCU②】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症2日目:HCU2日目
状態は前日に比べると若干落ち着いた様に感じる。
ほんの少しの時間なら、ベッドのリクライニングを起こせるようになった。
唾液や痰も前日よりは減ったが相変わらずで出続けてはいる。
今日からリハビリがスタート。
「食べれない」ことに向き合うことになる。

<発症1日目:HCU①   発症3日目:HCU③>一般病棟①>


起きると異世界

鼻につけられた酸素は耳元で常にシューシューいっている。枕元からはモニターの音。
1時間ごとにくる尿意。
入院2日目にして夜間のおむつ替えを排尿の度にお願いする事をあきらめた。
そして少しだけ眠り、目覚めた時、不思議な事が起きる。

上がどちらかわからない。

いや、わからないというよりは、思っていたのと違う、という事が何度かあった。
寝そべって左を向いて寝ているから、私にとっての右手が上なのだが、起きた瞬間、自分の頭がある方向を上だと思ってしまい、よくわからない世界が広がる。
ちょっとするとすぐにわかるのだが、発症2日目位までこの症状があった。

今日こそは検査デー

昨日断念した頭部CTの造影検査に、首と心臓のエコー。
前日よりは状態も落ち着いてきたのでなんとか検査できた。

リハビリ開始

発症2日目、まだ結構しんどい時期だったが、この日からベッド上で動けない私の元にリハビリのセラピストさんが毎日訪れるようになる。

最初に来たのは作業療法士の国島さん(仮)。
おしゃべりが滑らかでよどみない。
この日は挨拶だけと顔を出してくれた。

その後少し落ち着いたタイミングで来てくれたのは理学療法士さん。
子どもの話しをしながら、身体の動きを確認して手足を軽く動かしてくれた。
頑張って動けるようになって早く帰らないとねと励ましてくれた。
この方にはここで一度だけお会いしたきりだった。

そしてその後来てくれたのが、言語聴覚士の谷元さん(仮)。
嚥下ができなくなった私にとって、この方の存在はとても重要となる。

言語聴覚士さん

その方は少し大柄で穏やかにしゃべる方だった。
何だか牧師さんみたいだなと思ったのは、はじめて私の病状を見るタイミングで、少し神妙な目つきをされていたからかもしれない。
その後ほぼ毎日会う事になる谷元さん(仮)、普段は優しい目元の方だった。
(リハビリのセラピストさん達は感染対策で頭からすっぽり覆われた防護服で来られていたので、第一印象が身体の大きさと目と声しかない)

いくつかの簡単な検査をしたと思う。喉に手を添えられた状態で唾を飲み込む様に言われて、驚くほど飲み込めなかった。
ひと通りを終えて帰っていった谷元さん(仮)は、もう一度戻ってきて私に話をしてくれた。

  • 口から飲んだり食べたりする事ができなくなっている

  • そのため栄養を摂る事が難しくなっている

  • 恐らく先生から鼻に管を入れて胃に直接栄養を入れる経鼻栄養を提案される

  • それはネガティブな事ではなく、点滴よりも胃に栄養が入る方が普段の栄養摂取に近く、体力もついてリハビリも頑張れる様になる

そんな内容だったと思う。
先生から急に経鼻栄養を言われてショックを受けない様に、事前に丁寧に前向きに説明をしてくれている事が伝わった。
この人の言葉は今後も私にとって重要なものになるだろうことはわかった。

その後主治医の町田先生(仮)が来て、先程言語聴覚士の谷元さん(仮)が話してくれたのとほぼ同じ話をして、鼻に管を入れて栄養を摂っていきましょうという話になった。
先生と谷元さん(仮)の話が二人とも同じく、前向きに経鼻栄養をしていこうというスタンスだったので、抵抗なく受け入れる事ができた。こうして私の鼻に経鼻栄養の管を入れる事が決まった。

経鼻栄養のチューブ

経管栄養をする事が決まったその日のうちに、鼻にチューブを入れる事になった。
入れてくれる看護師さんの顔が少し緊張している。
なかなかの太さの柔らかいチューブが鼻に入れられた、がそんなにむせる感じはない。
あっけないほどにスルッと入り、その後レントゲンがやってきて腹部を撮ってチューブが入っていることを確認してくれた。
その時はまだよくわかっていなかったのだが、私には右半身の感覚が鈍くなる症状があり、顔面上部だけは左側に感覚鈍麻がある。
管を入れたのは左の鼻の穴だったのでちょうどあまり痛みや違和感を感じにくい状態で入れる事ができたのかもしれない。
ここからしばらく、常に鼻から管をぶら下げている生活となる。


---振り返って

普通に暮らしているとなかなか関わる機会のない、言語聴覚士さん。
嚥下ができなくなった私にとっては、暗い海の上で見つけた灯台の様な存在でした。
言語聴覚士谷元さん(仮)の気遣いに何度も助けられる事になりました。

いきなりの経管栄養、今思えばショックを受けそうですが、まだしんどすぎて悲観するほど先を見通すこともできていませんでした。

あと、小さいレントゲンがベッドまで来てくれたの、驚きでした。



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