かしわもち 柏書房のwebマガジン

出版社・柏書房のwebコンテンツを掲載します。

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  • 君たちの記念碑はどこにある?――カリブ海の〈記憶の詩学〉

    中村達さんの連載『君たちの記念碑はどこにある?――カリブ海の〈記憶の詩学〉』に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=髙井愛]

  • 地下鉄にも雨は降る

    友田とんさんの連載『地下鉄にも雨は降る』に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=小川恵子]

  • 新刊速報

    柏書房営業部による「新刊速報」のまとめです。[イラスト=荒木(営業部)/バナーデザイン=見野(営業部)]

  • 鳥の鎮魂歌

    北田斎さんの連載『鳥の鎮魂歌』に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=髙井愛]

  • まちは言葉でできている

    西本千尋さんの連載『まちは言葉でできている』に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=髙井愛]

最近の記事

第1回 カリブ海作家と「記憶」との諍い|君たちの記念碑はどこにある?――カリブ海の〈記憶の詩学〉|中村達

「人間」の条件  1957年10月4日、ソ連は人類初の人工衛星であるスプートニク1号を打ち上げた。ハンナ・アーレントは『人間の条件』において、この瞬間を人類史的であったとし、当時の人々の狂騒をこのように解釈する。「この喜びは勝利の喜びではなかった。実際、人びとの心を満たしたのは、驚くべき人間の力と支配力にたいする誇りでもなければ、畏敬の念でもなかった。むしろ、時の勢いにまかせてすぐに現れた反応は、『地球に縛りつけられている人間がようやく地球を脱出する第一歩』という信念であ

    • 【第5回】地方の地下鉄も見に行く|地下鉄にも雨は降る|友田とん

       地下鉄の駅構内で見かける漏水対策を追うフィールドワークの連載も5回目である。前回は東京メトロのいくつかの路線と駅を見て回るうちに、東京メトロとビルの境界や出口など、周縁にこそ管理し尽くされていない、興味深い漏水対策が現れるという傾向に私は気づいた。そして、同じ周縁というならば、地方の漏水対策も見て回ろうと思い立ったのだ。  ちょうど、地方へ行くのに好都合な状況が整っていた。私は今、ひとり出版社を営んでいて、本を販売する機会があれば、全国各地に出店するようにしている。用もない

      • 新刊速報【2024年4月版】|柏書房営業部通信

         柏書房営業部です。寒さが消え東京は今年も春がきました。春と言えばみなさん何を想像しますか。開花、冬眠明け、新生活……突然きかれるとステロタイプな回答しかなかなかできないものです。さて、柏書房の今月の新刊は2点。動物学者がもしエイリアンがいたとしたらその姿や生活スタイルがどのようなものになっているのかを科学的に考察する『まじめにエイリアンの姿を想像してみた』、かつて科学者になる夢をあきらめた著者が、憎んでいた科学と「和解」し、女性の観点から科学を見つめ、科学の観点から女性の体

        • 奇妙なふたり|シミズくんとヤマウチくん――われら非実在の恋人たち|清水えす子【試し読み】

           2024年3月に、山内尚[漫画]+清水えす子[文]『シミズくんとヤマウチくん――われら非実在の恋人たち』が発売となりました。  この記事では特別に、本書の第2話に収録されている清水えす子さんのエッセイ「奇妙なふたり」を公開します。ご一読いただけたら幸いです! 奇妙なふたり  いわゆる「おつきあい」をはじめたとき、私たちは女性同士のカップルだった。外からは疑いなくそう見えていただろうし、自分たちでもそう思っていた。あのころ私はクィアな大人たち(自分自身も成人はしていたが

        第1回 カリブ海作家と「記憶」との諍い|君たちの記念碑はどこにある?――カリブ海の〈記憶の詩学〉|中村達

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        • 君たちの記念碑はどこにある?――カリブ海の〈記憶の詩学〉
          1本
        • 地下鉄にも雨は降る
          5本
        • 新刊速報
          37本
        • 鳥の鎮魂歌
          3本
        • まちは言葉でできている
          10本
        • まとまらない言葉を生きる
          6本

        記事

          新刊速報【2024年3月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。今年の冬はとても寒くて長い、というわけでもなく気温が乱高下して合わせるのが大変な日々、着るものをどうするか悩んでいる人も少なくないのではないでしょうか。さて、柏書房の今月の新刊は2点。ノンバイナリーの著者が、ままならない「装い」の問題に絵とことばで向き合った『ノンバイナリースタイルブック』、名づけがたくかけがえのないパートナーシップを、漫画とエッセイ二つの形式を交差させ描く『シミズくんとヤマウチくん――われら非実在の恋人たち』です。 『ノンバイナリースタ

          新刊速報【2024年3月版】|柏書房営業部通信

          新刊速報【2024年1月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。2024年初の営業部通信の更新になります。本年も弊社の刊行物をよろしくお願い致します。さて、柏書房の1月の新刊は1点。ウェブマガジン『ニッポン複雑紀行』初の書籍化企画、『密航のち洗濯』です。 『密航のち洗濯』宋恵媛 文 望月優大 文 田川基成 写真  『密航のち洗濯』は本日1月10日(水)の配本です。ニッポン複雑紀行さんの下記の記事にてこの本の成り立ちなどについて詳しく書かれております。こちらもぜひご一読ください! 連載更新のお知らせ また昨日、友田

          新刊速報【2024年1月版】|柏書房営業部通信

          【第4回】管理台帳の姿を想像しながら|地下鉄にも雨は降る|友田とん

           地下鉄構内の天井からの漏水をビニールシートで受け、チューブを伝わせ、バケツやボトルに集める。ただそれだけのことであるはずなのに、どうして私はいつまでもこの漏水対策というものに惹かれ続けているのか。取り憑かれたように写真に収めており、やればやるほど、もっともっとと興味が湧いてくる。  前回(第3回)は、梅雨時6月6日に新宿三丁目駅から永田町駅まで丸ノ内線に乗って、接続する路線も含めて駅構内や出口をくまなく観察して回った。設置されたばかりの漏水対策を観察し、対策に付与されたナン

          【第4回】管理台帳の姿を想像しながら|地下鉄にも雨は降る|友田とん

          【第3回】火の鳥|北田 斎

          バンドメンバー以外でただ一人の親友  メレンゲはフジファブリックとほぼ同時期にメジャーデビューしたバンドだ。繊細でどこか中性的だが感情をはらんで張り詰めるヴォーカルと、飴のように文法を曲げながら独特の言語感覚で書かれた歌詞、スピッツなどからの影響を感じさせる瑞々しくポップで美しいメロディを特徴としていて、音楽性はフジファブリックと共通する部分はあまりない。だがフロントマンであるクボケンジと志村正彦はお互いに「大親友」と呼びあう仲だった。2002年ごろ、下北沢か新宿のライブハ

          【第3回】火の鳥|北田 斎

          【第2回】飛べない蒼い鳥のための鎮魂歌|北田 斎

          冬の墓標  はじめて出会った鳥の鎮魂歌は、ひとりのミュージシャンの死を縁取るようにたちのぼったいくつかの歌だった。死の爆心地に立つ見えない墓標、そこに刻まれた日付は2009年12月24日。刻まれた名はフジファブリック、志村正彦。  志村は1980年7月10日、山梨県富士吉田市に生まれた。中学三年の夏、初めて観た地元のライブで奥田民生に憧れてミュージシャンを志す。ロックミュージシャンというと派手な衣装のイメージだったのに、Tシャツにジーンズというラフな格好で、「不況にならな

          【第2回】飛べない蒼い鳥のための鎮魂歌|北田 斎

          【第1回】神話的想像力とうたをめぐる試論——鳥の鎮魂歌へ|北田 斎

          神話とうた  子どものころから歴史が好きだったが、天皇や貴族や武将にはあまり興味がなかった。敗者には少し惹かれたが。歴史に残るべくして名を遺した人びとではなく、それよりもただ生きて死んでいった無名の人びとのことが知りたかった。偶然文字史料に遺ってしまった人びとの——たとえば古代の戸籍に遺された——名前をぼんやりと眺めていたこともある。そしてできれば、より古い時代の人びとの営みの根源的な部分について知りたかった。人間の知覚で捉えられるものはわずかしかない。世界は混沌として洪水

          【第1回】神話的想像力とうたをめぐる試論——鳥の鎮魂歌へ|北田 斎

          新刊速報【2023年12月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。12月も既に折り返しの頃、今年がどんな年であったかの振り返りや、新年がもうすぐそこまできていることに、色々な感情が去来する時期です。少し気が早いですが、この一年間も小社の出版物にご注目くださりありがとうございました。  さて、今月の柏書房の新刊は2点。12の地域での調査と20年間の学びがつまった暴力を止めて平和を始めるための実践的ガイド『平和をつくる方法』、さまざまな系図や史料を検証しつつ、神秘のベールに包まれた謎だらけの武家の出自に迫る『戦国大名は経歴詐

          新刊速報【2023年12月版】|柏書房営業部通信

          「謝罪」からひろがる世界を探検する――『謝罪論』刊行記念・古田徹也さん選書リスト公開!

           2023年9月に発売となった古田徹也さんの『謝罪論』刊行を記念し、9月28日から11月30日までの期間、代官山 蔦屋書店で選書フェアをご展開いただきました。  しかしフェア期間中、さまざまな事情から、足を運べなかった方も少なからずいたのではないでしょうか。また、選書フェアにあたってつくられた32冊のタイトルと選書コメントが掲載された小冊子は、「謝罪」という行為を考える上で最良のガイドになっているとも思われます。このまま眠らせておくには惜しい……。  というわけで本稿では

          「謝罪」からひろがる世界を探検する――『謝罪論』刊行記念・古田徹也さん選書リスト公開!

          ふつうの人たちのすごい戦略|セヴリーヌ・オトセール『平和をつくる方法』試し読み

           2023年12月8日、セヴリーヌ・オトセール 著/山田文 訳『平和をつくる方法──ふつうの人たちのすごい戦略』が配本となります。  平和構築という言葉は、私たちが何度も耳にした物語を想起させるかもしれません。ある地域で暴力が発生すると、国連が介入し、ドナーが多額の支援を約束し、紛争当事者が協定に署名して、メディアが平和を称える。そして数週間後、ときには数日後に、暴力が燃えあがる──そのような物語。  はたして、持続可能な平和を築くことなど可能なのでしょうか? 可能だとす

          ふつうの人たちのすごい戦略|セヴリーヌ・オトセール『平和をつくる方法』試し読み

          新刊速報【2023年11月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。10月の28日と29日に開催された神保町ブックフェスティバル、弊社ワゴンにお越しくださったみなさま、ありがとうございました。両日とも客足途絶えることなく、おかげさまで過去最高の売上となりました!……とよろこびもつかの間、お祭りが終わったということは11月、2023年も早いもので残り2ヶ月を切りました。さて、今月の柏書房の新刊は1点。性染色体XXとXYの違いは寿命や健康にどのくらい影響を及ぼすのか――身近なエピソードや歴史的な出来事、多面的な科学的見地を織り

          新刊速報【2023年11月版】|柏書房営業部通信

          「動物と話してみたい」人類はその夢にどこまで近づいた?|トム・マスティル『クジラと話す方法』序章全文

           2023年10月24日、トム・マスティル 著/杉田真 訳『クジラと話す方法』が配本となります。  あらすじは以下の通り。  本書は、国際的評価の高い映像作家である著者が、生物学の世界で起こる革命を丹念に追ったドキュメントです。Amazon Books編集部が選ぶ「ベスト一般向け科学書2022」のTOP10、『ニューヨーカー』誌が選ぶ「必読書2022(ノンフィクション部門)」にも選出されています。  このたびの日本語版では、迫力満点の図版71点はもちろん、2023年のペ

          「動物と話してみたい」人類はその夢にどこまで近づいた?|トム・マスティル『クジラと話す方法』序章全文

          新刊速報【2023年10月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。この冒頭の文章は生成AIに任せてみてもいいかしらんという思いが過るこの頃、とはいえそれはそれでどんどん文章を書かなくなり、いざ文章を書かないといけない場面(があるとして?)に直面したとき、手元にアプリケーションにアクセスするデバイスがなかったら困るかもしれませんね。過渡期における新しい技術は、神か悪魔か、毒か薬か(ところでここまでの文章が生成AIによるものでないことをどのように証明したらよいのでしょうか)。さて、今月の柏書房の新刊は2点です。「動物と話して

          新刊速報【2023年10月版】|柏書房営業部通信