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【第4回】管理台帳の姿を想像しながら|地下鉄にも雨は降る|友田とん

 地下鉄構内の天井からの漏水をビニールシートで受け、チューブを伝わせ、バケツやボトルに集める。ただそれだけのことであるはずなのに、どうして私はいつまでもこの漏水対策というものに惹かれ続けているのか。取り憑かれたように写真に収めており、やればやるほど、もっともっとと興味が湧いてくる。
 前回(第3回)は、梅雨時6月6日に新宿三丁目駅から永田町駅まで丸ノ内線に乗って、接続する路線も含めて駅構内や出口をくまなく観察して回った。設置されたばかりの漏水対策を観察し、対策に付与されたナンバーがきちんと時系列になっていたことに驚いた。そして、夕刻、地下鉄構内のカフェでビールを頼んで飲み、突然恍惚感に襲われたのだった。
 私は恍惚感とほろ酔いのまま、今度は有楽町線に乗って池袋駅へと向かうことにした。その日手に入れたい本があり、大きな書店に行きたかったからだ。通勤で混雑した電車で有楽町線池袋駅に到着して改札を出ると、改札脇の柱に漏水対策があった。天井を透明のビニールシートで覆う、というよりもビニールシートでできた点滴のような形状の袋で受け、バケツに注いでいた。バケツには柱の裏側から来るチューブもある。ここにも記号「1/10 MSF22-08237」とあった。

有楽町線改札脇の柱にも漏水対策/2023.6.6、池袋駅
花屋の脇にも漏水対策/2023.6.6、池袋駅

 通路を歩いて行くと、駅コンコースに花屋があり、花屋の前の天井にも、白い柔らかいパネルで作られた対策があった。柱を伝って足下の水路へとガイドされている。ただ、ここはメトロなのか、それともJRの駅構内なのか。ひょっとしたらと不安を覚えながら近づくと、「D-2021 0105」という見慣れない形式の記号があった。
 用を済ませた帰り、副都心線の池袋駅へと歩いて行くと、改札手前のモダンなライトなどの装飾のある地下通路の天井を、何カ所もビニールシートが覆い、通路脇へとチューブがぶら下がっていた。私はすかさず近寄り、そこに記号がないか確かめた。「FAM23-01926/2023.6.5」とあった。また、並んで設置されているチューブには、「6/3 23-01756③」「6/3 23-01756④」とあり、振り返ると通路反対側のドラッグストアの前にも「6/3 23-01756①」と付与された対策があったのでうれしさが込み上げてきた。おそらく同じ日に設置されつつも、区別するために①②③④などと枝番が付与されたのであろう。

副都心線へと至る装飾の施された通路にも、天井から多数の漏水対策の管が延びる/2023.6.6、池袋駅

 これを見た瞬間であったか、あるいは撮影した写真を後で整理してメモを書いていたときであったか、この記号がその日、新宿三丁目駅~永田町駅で観察した「FAM23」の時系列と一貫性のあるものだと確かめられたことは、私に歓喜の声を上げさせた。

四谷三丁目 2023.5.12/FAM23-01118
四ツ谷駅 2023.5.19/FAM23-01328
四ツ谷駅 2023.6.2/FAM23-01685
新宿三丁目 2023.6.2/FAM23-01709
池袋駅(副都心線) 2023.6.3/23-01756 ①③④ ← NEW
新宿御苑駅 2023.6.4/FAM23-01772
池袋駅(副都心線) 2023.6.5/FAM23-01926 ← NEW

 そればかりか、これが東京メトロ管内で統一されたグローバルな番号であるかもしれないことに興奮すら覚えた。過去に銀座駅だったか、東京駅だったかで、工区の名称ようなものが記されているのを見掛けたこともある。だから番号は地区やエリアごと、あるいは路線ごとに分かれているものだろうと勝手に思っていたが、どうもそうではなさそうだ。もう一度過去の写真を確認してみなければならないと思った。ただ内心、多少の時系列の乱れがあってもそれはそれで面白いとも思った。何かしらそこに複数の人の関わりが感じられるからだ。だが、少なくともここから言えることは、こうした漏水対策が東京メトロの内部できちんと一元的に管理されているということだ。
 となると、どこかに漏水対策の管理用の台帳があるはずである。まさか番号を口伝えで管理しているはずがない。それは果たして紙の台帳なのか、それともこのご時世、Excelか。ひょっとしたら、Macで動くNumbersかもしれない。どこに保管されているのだろうか。6月初旬の段階で1926箇所。これはとても一人で作りきれる数ではない。急場しのぎで駅の職員が対策することがあるかもしれないが、その数や規模や品質から考えて、専門のチームが中心を担っていることは間違いない。ではその専門のチームとは1つなのか、それとも複数のチームがあるのか。その数はわからないが、チームのメンバーの間で共有される台帳が存在するはずだ。
 そこで私は唐突に思ったのである。私もこの台帳を作ってみたい。と同時に、こうも思った。いったいなぜ? おそらく、東京メトロが保有する本物の台帳を見ることは叶わない。それでも、足を使って現場を回り、その台帳の一部を手元に復元することは可能である。台帳はどのような形をしているだろうか。FAM23の番号に、漏水対策を設置した日付、駅名、設置場所(ホームの位置、改札内/外、天井・壁など)の項目もあるだろう。設置したチームや担当者名もあるにちがいない。場合によっては使用した資材(ビニールチューブ、シート、ペットボトルなど)や漏水状況もあるかもしれない。単に設置して終わりではなく、検査や承認した日付や監督者名もあるのではないか。あっという間に想像は膨らんでいく。だが、どうして私は管理台帳を自分でも作りたいのだろう。むろん、はたから見たら、奇妙であることもよく承知している。
 そのとき、ふと思い出したのが、ポール・エルデシュという数学者のことである。小川洋子の『博士の愛した数式』に出てくる、記憶が80分しかもたない老数学者のモデルになった人だ。何も所有せず、トランク一つで世界を旅しながら、行く先々の数学者と共同研究をし、亡くなるまで驚くほどの数の論文を発表したという。彼は天上にはすべての数学の定理の証明が収められた「THE BOOK」があり、定理を見つけエレガントな証明を与えることは、「THE BOOK」の一部をこの地上に復元することなのだと信じていた。すべての定理を発見し、証明し尽くすことはできない。それでも、「THE BOOK」に少しでも近づこうとして、この復元を生涯繰り返したのだ。
 まさか、そのことと自分の地下鉄の漏水対策の管理台帳を復元する趣味とも言えぬ趣味を比べる気はさらさらない。ただ、こうして、何かを自分の手で部分的にせよ復元していくことで、ようやく感じられる手ざわりがある。それは数学において正しいと証明されている命題の証明を自分でもたどって確かめることに似ている。あるいはまさにそこにある風景を、手元の紙に描き写すこととも通じるものかもしれない。正しさだけを考えるなら、私があらためて証明などしなくても、すでに保証されている。けれどそれでは私にとってその正しさが自然でないのだ。あらためて正しさが明らかにされる道筋をたどってこそ、はじめてその命題が存在し、成立することが照らし出され、正しさが自分のものになる。はじめてその定理がしっかりと存在し、成立することが照らし出される。それは風景も同じだ。そして、というと強引かもしれないが、地下鉄の漏水対策の管理台帳の復元もやはりそうなのである。
 それで思い出したのが、地下鉄の漏水対策観察の先駆者である美術家の毛利悠子さんのことだ。「モレモレ東京」と名付けられた現場の収集は、やがてチューブやバケツなどの材料を用いたインスタレーション制作へと向かった。その経緯自体を直接伺ったことはないのだが、そこにもやはり自分で実現してみること、再現してみることの重要性というものがあるのではないか。
 別に地下鉄の漏水対策を見て回ること、その管理台帳を手元で復元すること、復元したものに何か意味を見出す必要などないのだが、こうして何かを自分の手でやってみるということの重要さに思いをはせているうちに、もっともっと見て回ろうという気持ちがさらに自分の中から湧き出してくるのを感じたのだった。

 ここで、自由自在に東京メトロの構内を見て回るのになくてはならない一日乗車券の話もしておきたい。各種の一日乗車券が発売されているが、最初の入場から24時間東京メトロ管内の各駅で乗り降り自由である「東京メトロ24時間券」は大人600円だ。これは初乗り区間を4回乗れば元が取れてしまうことになる。
 今、地下鉄の漏水対策を観察して回る私ほど、この一日乗車券の恩恵を受けている者はいないのではないか。何しろ、あちこちの駅でのべつまくなしに改札を出たり入ったりする。改札に入ったかと思ったら、向こう側に見えているもう一つの改札を出る。そもそもSUICAで、改札を入場した者が、また同じ駅の改札を出られるものだろうか。この一日乗車券は本当にその点便利である。東京メトロの構内を常設/仮設様々な無数のインスタレーションの置かれた美術館だと思えば、これほど見どころのあるものはそうそうない。上野にある東京都美術館の観覧料(一般)が2,000円前後するのと比べてみても、大変お得であることがわかるだろう。

 6月8日、用事があって荻窪に行った。最近はJRではなく、新宿三丁目で乗り換えて、もっぱら丸ノ内線を使うようになった。少し時間が掛かるが、乗り換えも便利だし、大抵座っていけるからだ。そして、改札を出たところで、出来たばかりの巨大な、そして即興的な漏水対策に遭遇したのである。ビニールシートが頭上に広がり、そこに人がぶつからぬようにシートの底に虎テープが貼ってある。前々日に結構な降雨があった。その雨水が染みこんできているのか、改札前の天井をかなり広く透明のビニールシートが袋状に覆っていた。

改札前の漏水対策が大がかりかつ即興的で面白い/2023.6.8、荻窪駅

 ここで私は思ったのである。ホームや改札の中よりも、改札の外の方がこうした大がかりな、即興的な漏水対策がある可能性が高いのではないか。ホームや改札内はおそらく安全上の理由もあってよく管理されているが、改札の外や出口の辺りは、漏水しやすさもあるのかもしれないが、根本的な修繕をしておらず即興的な漏水対策が突然生まれる余地があるのかもしれない。それは、2月に編集者の天野さんと都心の地下をまわったときにも感じたことだった(第1回参照)。有楽町駅から銀座駅へと続く地下を歩いていると、ホームやコンコースよりも、出口付近に多い印象を受けた。別に、出口から直接雨水が入ってきているわけではない。しかし、ビルと地下道の境目であったり、何かしらの管理の境界である場所に、面白いものが多かった。魚は骨の際がうまいとか、野菜は皮のところに栄養があるとか、そういったことと似たようなことなのだろうか。必ずしも熟練した仕事ではないように見え、急場しのぎでやったという感じがする。ホームや改札内の漏水対策チーム以外の作業者によるものだろうか。むろん、後ろ側を見たとしても、寺の天井裏の柱のように、棟梁の名前は記されていない。

出口付近の漏水対策/2023.2.10、有楽町駅

 今あらためて写真を振り返ってみて、銀座のビルとの境界付近にあった漏水対策にはMSF/FAMなどの管理番号が付いていないことに気づく。これはつまり東京メトロによって管理されていない、したがって管理台帳にも記載されていない野良の漏水対策だったのではあるまいか(東京メトロの正式な案内表示のシステムから逸脱した、駅員などが独自に作ったサインを「野良サイン」と名付けて収集している方がおり、これに倣って私も「野良の漏水対策」と呼んでみた)。

 9月17日、丸ノ内線のフィールドワークの続きに出かけた。6月から随分と日数が経ってしまった。まずは四ツ谷駅で前回見掛けた対策のその後を見に行った。あの時、ホームの天井に設置されたばかりだった対策は、管理番号は変わっていなかったが、作り直されていた。天井から吊り下げられていた樋がもっと天井側に張り付くように補強されていた。その向こうに新しい漏水対策も増設されていた。ここでも管理台帳の姿が気になった。漏水対策が番号はそのままに更新されることがある。となると、管理台帳にはきっと最終更新日や、更新内容、それを施行した者を記録する項目があるだろう。同じ行の右側に追記していくようになっているのか、あるいは元の行はグレーで網がけしてしまい、新しい行を挿入するのか。

ホーム上の改良された漏水対策。受けるバケツはそのままに/2023.9.17、四ツ谷駅
同上

 次に国会議事堂前駅へ向かった。ホームの天井の蛍光灯を挟むようにして二筋の樋が固定され、さらにその辺りの天井を透明のビニールシートが覆っていた。二つの樋とビニールシートからそれぞれチューブが出ており、それらが途中で束ねられて、壁を伝って床へとガイドされた先には、受けるものはなかった。管理番号は「FAM23-05036/2023.9.8」「9/4 MSF23-04864」である。どちらかが二筋の樋で、どちらかがビニールシートなのだろう。そのことはきっと管理台帳を見ればわかるはずだ。

蛍光灯を挟み、覆うようにして漏水対策があった/2023.9.17、国会議事堂前駅
同上

 反対側のホームでも天井の蛍光灯の脇から受ける漏水対策があり、こちらはしめ縄のように、天井から吊されていた。空調の周囲は結露しやすいためか、漏水対策がこれまで散見されたが、蛍光灯の脇という位置もどうやら漏水対策がよくあるような印象を受ける。蛍光灯の脇はなぜ漏水しやすいのか。これはちょっと理由が見当たらないが、明らかに多い。

 国会議事堂駅は溜池山王駅と一体となっていて、駅構内がやたらと広く、すべてのホームや改札、出口をくまなく回るのも一苦労である。だがくたびれはじめた私は、永田町方面改札口から南北線ホームへ降りる階段の降り口の柱に無数の管理番号を発見して、うれしくなってしまった。うれしくなって元気が出た。何しろ、チューブは一本にまとめられているが、管理番号が7つも貼ってあったのだ。

南北線の改札からホームへの階段の降り口の柱に無数の管理番号/2023.9.17、溜池山王駅

FAM23-03454/2023.7.23
FAM23-03666/2023.7.30
FAM23-03666②/2023.8.25
23.9/1 MSF 23-04773 階段上シート樋
9/1 MSF 23-04780
FAM23-04803/2023.9.2
5/30 MSF23-01625⑬

 頭上を見上げると、天井の角に透明のビニールシートとそこから這い出すチューブがあった。これとY字のコネクターで合流するもう一本のチューブは柱の裏側から来ていて、ちょうど階段を上り切ったところの天井に多数の漏水対策が設置されていた。白いパネルで作られた樋が2本、さらに天井の蛍光灯の周囲を透明のビニールシート(中に、白い突っ張り棒が入っている。風圧で動かないようにする仕掛けか?)とその中心から出る白いパネル製の樋がある。これらから出たチューブが壁にある複数のY字のコネクターで一本にまとめられて、柱の裏側へと流れていた。どの漏水に対する対策がどの対策のチューブと合流していくのか。管理台帳には、その親子/兄弟関係がきっと記録されているだろう。

天井を覆うシートに突っ張り棒のようなもの/2023.9.17、溜池山王駅
途中途中でY字のコネクターが使われている/2023.9.17、溜池山王駅

 ホーム上にもいくつも漏水対策があった。南北線はかなり新しい設備で、足下から天井までをガラスで覆われているのだが、天井には漏水対策があった。新しいかどうかはあまり関係がないものなのかもしれない。
 溜池交差点方面改札を出たところで興味を惹いたのはこれだ。

きっとここにはついさっきまで漏水対策があったのだなと思わせる/2023.9.17、溜池山王駅

 おそらくついさっきまでここに、天井から漏水対策のチューブが吊されていたのだろう。チューブは見当たらないが、それを吊していたらしい白いテープがぶら下がっていた。壁には漏水を伝わせるチューブをガイドする白いパネルの樋が残っていたが、そこに貼られていたはずの管理番号を記入したテープはすでに取り去られていた。おそらく管理台帳には漏水対策のステータスを記す項目があり、この対策はすでに「取り外し済」などと記入されているのではないだろうか。

 出口へと向かうと、数々の漏水対策が残っていた。常設化されているのか、金属製の樋が階段脇の天井を這っていて、その下流が白いパネルで出来た仮設の漏水対策で受けられていた。
 改札の中に入り、通路を歩いて行くと、そこにはつい今しがた、取り外されたとおぼしきチューブとペットボトルとバケツ、そして「漏水注意」と貼り紙のあるパイロンが通路の脇に置かれていた。取り外されたチューブはくるくるとまとめられてバケツの中に片付けてあった。点滴が終わったあとのようだった。壁にはまだ、管理番号「FAM23-04825/2023.9.3」とあった。設置されたのが9月3日で、漏水が枯れたのか、2週間ほど経ったこの日、9月17日ごろに取り外されたらしい。たしかに、漏水対策は取り外されている。しかし、もし急いで見に行けば、管理台帳にはまだこの漏水対策のステータスは、設置中のまま残っていたかもしれない。

取り外された漏水対策がバケツに/2023.9.17、溜池山王駅

 あるいはまた赤坂方面改札の前にあった柱には、もはや漏水対策はないのだが、足下には管理番号「9/8 MSF23-05013」だけがあった。その柱を囲むようにして、床には虎テープが貼られ、漏水注意のパイロンとテープで領域が囲まれていた。

改札前の柱には漏水対策は何もないが、管理番号だけが貼られていた/2023.9.17、溜池山王駅
柱を囲むようにして、漏水注意の表示があった/2023.9.17、溜池山王駅

 漏水、あるいは漏水対策にはあわいがある。漏水が、あるいは漏水対策が現れる瞬間と取り外される瞬間。そして、その前後には、漏水はあるが対策がない時間があり、対策はあるがもう漏水していない時間がある。その時間はまるで海水と淡水が混じり合う汽水のような時間であり、そこにもまた面白さがあるような気がする。

 今日はこの辺りでと改札を出て、目の前のスターバックスコーヒーへと向かうと、壁を覆う大きなビニールシートが目に入った。気になって近づいてみると、東京メトロとビルのちょうど境目に、むしろその境目だからこそ、水が漏れ出していた。ここには管理番号がなかった。つまり、これは管理台帳には載っていないということになるはずだ。

改札前のスターバックス前にある地下広場。ビルとの境界に大規模な対策。しかし、ここには管理番号がなかった/2023.9.17、溜池山王駅

 私は思ったのだ。これほど大がかりなものだけれど、東京メトロには管理されていない。東京の地下にも一元的に管理されていない漏水対策がある。それはホームやコンコースではなく、施設の周縁に、あるいはメトロとビルの管理の境目にある。そうだ、改札の外やビルとの境界を観ていこうと思った。さらに、東京がよく管理されているのならば、東京ではなく、地方の漏水対策を観に行こうとも思った。そこにはまだ見たことのないような野良の漏水対策があるに違いない。

(おまけ)

 前回、漏斗を使用した対策は東京メトロ管内では見たことがないと書いたが、実はあった。漏斗が取り外されていて、型番までわかってしまった!
 品番316-07 販売元はアサヒペン、サイズ(φ900mm x 1240(L)mm)。

東京メトロの漏水対策でも漏斗が使用されているのを発見/2023.9.17、溜池山王駅
同上

(つづく)

連載趣旨
数年前、駅でたまたま目にした地下鉄の漏水対策に心を奪われた著者。この光景は、どのように私たちの前に現れるのか。なぜこの光景に、ここまで心惹かれてしまうのか。実際に歩きながらその理由わけを考える、友田とんによる極私的なフィールドワーク連載。

注記:写真はすべて著者が撮影したものです。鉄道の安全運行の妨げや利用者の通行の迷惑にならないよう、細心の注意を払っておこなっています。利用者の写り込みにも極力気を付けていますが、漏水対策の全体像を記録するためにどうしても避けられない場合は、ぼかしを入れました。

著者:友田とん(ともだ・とん)
作家・編集者。ナンセンスな問いを立て日常や文学に可笑しさを見つける文章を書く。 代わりに読む人代表。京都府出身、博士(理学)。2018年に刊行した自主制作書籍『『百年の孤独』を代わりに読む』を全国を行商して本屋さんへ営業したのをきっかけに、ひとり出版社・代わりに読む人を立ち上げ、独立。自著『パリの ガイドブックで東京の町を闊歩する1・2』のほか、『うろん紀行』(わかしょ文庫 著)、『アドルムコ会全史』(佐川恭一 著)、文芸雑誌『代わりに読む人0 創刊準備号』を編集・刊行。 著書に『ナンセンスな問い』(エイチアンドエスカンパニー刊)、『ふたりのアフタースクール ZINEを作って届けて、楽しく巻き込む』(共著・太田 靖久、双子のライオン堂刊)。敬愛する作家は、ガルシア=マルケス、後藤明生。

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