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エッセイ

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2020年6月の記事一覧

エッセイ【散歩】

エッセイ【散歩】

わたしは自然の空気を大きく吸い込むことが好きだ。
たとえそれに、わたしの心を一瞬で乱す煙草の臭いがかすかに混じっていたとしても、それさえも受け入れられるのだ。

体の固くなった内側が、ところてんを押し出すあの機械のように、吸った息でぐいっと芯まで深く響いて落ちるこの感覚が、わたしを安心させる。

微細な匂いを嗅ぎ分けることができるわたしは、
犬ではない、戌年である。

自然の匂いにも好きな匂いと嫌

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エッセイ【眼科の先】

眼科を出て路面電車を待っている。
電車が来るときには、「電車がきます」という表示と知らせる音楽が流れる。
繰り返されるメロディ。
どこかで聞いたことがある。
後ろにある某コンビニの入店音か。
いや、違う、
「電車がくる」音が、それと同じなのだ。

これでは、電車を待っているのか、某コンビニ店に水を買いに入ったのかどうかがわからない。

どちらが先なのだろう。この路面電車の歴史は古い。少なくとも私の

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エッセイ【朝】

エッセイ【朝】

昨夜から聴こえる優しいあたたかな雨音に夜中から安心していた。
つい夜更かしをしてしまったかな。

朝、いつもの時間に自然と目が覚めた。
目覚ましはあと30分後に鳴る予定だ。
それでも身体は不思議なもので、いつものリズムを取ろうとするのである。
右手が身体に挟まっていて、じんじんと痺れる。
ゆっくりまぶたが落ちた。
二度寝である。

また目が覚めた。
まだカーテンは開けない。
雨の日にしては、少し明

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エッセイ【眼科】

みながみなして、朝早くに予約表を手にする。我先にと、年老いたものの中に数人若者や子供もいたりする。みな目に何かを抱えてやってくる。

私の座っている椅子の後ろには、いつからあるのかわからないが、緑の公衆電話がある。本当にあるのかは知りたくなかったから、直視はしなかった。ではなぜ、直視せずともそれが公衆電話だとわかったか。それは、一人のご婦人がお金を入れて電話をかけていたからである。いや、正確にはそ

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