マガジンのカバー画像

スタートアップファイナンス

238
スタートアップのファイナンスやIPOに関するnoteをまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

【スタートアップ資金調達・基本編】CFOが考えるべき資金調達戦略

「はぐくみ企業年金」を中心に企業年金・退職金制度の導入・設計をサポートする株式会社ベター・プレイスは、2023年6月にシリーズB 1stラウンドとして3.8億円、2023年12月にはシリーズB延長ラウンドとして2.3億円の資金調達を行いました。シリーズB合計で6.1億円の資金調達になりました。 シリーズBの資金調達では、全国の中小企業で働く人たちにあまねく「はぐくみ企業年金」を普及・拡大していくことによって企業年金制度の恩恵を届けていくための仲間づくりに主眼を置いた結果、地

【長文】NEWTがシードラウンドで23億円を調達したデック資料とオペレーションを公開してみる

最近、noteをあまり書かなくなってしまった。社内でも毎月色々なことを発信しているからして、日々ネタがないわけでも、学びがないわけでもなく、単に自分が怠けている。ということが言えそうです。メンバーみんなはいつも必死に書いてくれているのに、自分だけ書かないなんてのは絶対によくないので頑張って書いてみます。(エンジニアブログはここから) 2-3月は、ただひたすら来期経営戦略を悶々と考える時期。そんな折、創業の時に使ったファイナンスデックはもしかするとスタートアップの皆さまにちょ

予実管理

予実管理はなぜ大事か予算(事業計画)とは現在の事業理解を反映したものである。予算は、売上の発生メカニズムやコストの発生メカニズムをモデル化する。モデルの中には変数(パラメータ)があり、基本的にはこの変数を達成していれば、予算が自動的に達成されるという前提で作られる。つまり予算は、その時点での事業の理解そのものを表している。 予算と実績が合わないということは、事業の理解が浅いということである。何かしら前提としていることが間違っている、見落としていることがある、わかっていないこ

メルカリ 小泉さんからのエグい学び

ありがたいことに年末にメルカリの小泉さんとランチをご一緒させてもらいました。 CTO(@yutadayo)が作成した過去の失敗スライドに、リプライをいただいのがきっかけだったのですが、長らく競合事業(現ラクマ)をやっていたこともあり、きちんとお話ししたことがなく、とても学びが深かったので、ご本人に許可をいただいて、メモした内容と学びをシェアさせていただきます。 なんでメルカリに?噂ではフリルにも入社してもらえる可能性もあったとか?2007年よりミクシィに入社し、2012年

【ミチビク】シリーズA 総額3.5億の資金調達を実施、DXの空白地帯を切り開く

資金調達の概要ミチビクは、グローバル・ブレインをリードインベスターとして、アニマルスピリッツおよび既存投資家であるDIMENSIONから総額3.5億円の資金調達を実施しました。 今回の調達により、過去の資金調達も含めた累計資金調達額は5.5億円(デットを含む)となります。 ありがたいことに、日経新聞にも掲載いただきました。 そもそもミチビクって?という方も多いと思うので、簡単にご紹介すると、 「経営を、あるべき姿に導く。」をミッションに、これまでDXの空白地帯だったコーポ

アメリカのトップティアVCの概要|世界を発展させる会社を支えてきた存在の中身

そもそもVCとは ベンチャーキャピタル(以下VC)とは、リスクが高い初期段階の企業に投資し、その成長を支援することで利益を得る投資会社のことを指す。VCの収益モデルは、LP(投資家)から出資してもらったお金を元手に投資先企業の株式を購入(出資)し、その企業が成長して株価が上がった後に、高い価格で株式を売却することから成り立っている。このプロセスを「Exit(イグジット)」と呼びます。Exitには、企業の上場(IPO)や他社による買収(M&A)が含まれる。     VCのビジ

1円行使価額のストックオプション発行できる?

⑴ はじめにスタートアップ公認会計士の中辻です。 この度は記事をお読み頂きましてありがとうございます。 なお、noteだけでなく、X(旧Twitter)でも情報発信を積極的に行っていますので、フォロー頂けますと幸いです。アカウントは👉@Naka_CPAです。 さて、本題の方に入らせて頂きます。 昨年の発表によって、理論上は行使価額1円のストックオプションの発行が可能になりました。なお、ストックオプションの税務上および会計上の取り扱いに関して、ご興味ある場合は以下の記事を

新規上場企業がデットファイナンスを利用している比率は?/2023年新規上場企業のデットファイナンス考察

「目論見書分析note」とは 目論見書分析noteは、起業家、スタートアップで働く方、スタートアップ企業の成長背景に興味がある方を主な読者として、noteを書いています。 「IPO企業は、どんな業績変化をだとってきたのか」 「過去の資本政策でどう工夫をしてきたのか」 など スタートアップ企業に関わる方・興味がある方に、ヒントになる情報を提供させて頂くことを目的としております。 ※記事の内容については個人的な感想となることを理解の上で読んでもらえるとありがたいです。 今

コロナ禍の旅行系スタートアップに何が起きていたのかをケーススタディ風に書き残しておこうと思う

少し前のことですが、2023年7月、ボーダー株式会社は、約1.2億円の資金調達を発表しました。 はじめに会社のことを紹介すると、ボーダー株式会社は、出張管理システム(BTM)という事業領域に属し、法人に対して出張の手配と管理を一体的に提供するサービスを展開しています。 https://border.co.jp/ 前回のラウンドは2020年1月でした。事業も順調に伸びており、調達も完了、ここから一気に伸ばすぞというタイミングで新型コロナウイルス感染拡大が始まりました。その後

上場して1年、どうだった?IPOのメリット/デメリット 〜noteのIPO連載最終回

noteが上場したのは、今からちょうど1年前の2022年12月21日。 これまで「スタートアップ冬の時代のIPO」と題してnoteの上場準備メンバーでIPOに関する連載をやってきましたが、今回が最終回。テーマは、「上場して1年、どうだった?IPOのメリット/デメリットは?」です。 この記事は、IRアドベントカレンダー 2023 にも参加しています。 まず、一般的に言われる上場のメリット、デメリットとして、以下のようなことが挙げられます。 上場のメリット: 上場のデメ

スタートアップがPEファンドを担いだファイナンスを実行した話

HRBrainでCFOをしている井出です。 先日プレスリリースでもご案内しましたが、欧州系のPEファンドであるEQTがHRBrainに資本参画することとなりました。日本の未上場スタートアップに外資系PEファンドが投資する事例は今までもありましたが、過半数まで取得するケースはかなりレア(もしかすると初めて?)であるという認識です。私たちは、今後5~10年スパンで成し遂げたいことから逆算して、従来の常識にとらわれない発想で考え尽くした結果、こういった座組となりました。 2021

TOKYO PRO Market市場に上場するまでとこれからのうんたらかんたら

 2023年11月29日、株式会社AlbaLinkは東証TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)市場に上場することができました。正直なところ、このタイミングでの資金調達もありませんし、株式の流動性もほとんどない市場なのでこれといって重要な意味を持たないという風説もありますが、1つの区切りにはなったのかなと思います。  と言うのと、自分達がまずこのTPM市場にあがると意思決定をした時に、あまり生の情報が探し切れませんでしたので、今後この市場を目指す方にも向けて

成長戦略としてのスタートアップM&Aに関する考察_2023/12時点

10Xが運営するpodcast、10X.fmの「山田の部屋」という企画にて、直近二回に渡り、NYC在住しながら、複数の日本のスタートアップ企業のM&A・ファイナンス面の支援を行っている佐々木さんをゲストにお迎えし、前編・後編の2回で今後の日本におけるスタートアップM&Aの展望について議論させて頂きました。 このpodcastでの対話を通じて、スタートアップにおけるM&A(スタートアップが買う側・売る側双方の場合があります)は、今後のスタートアップエコシステムの進化において確

IPOにおけるプライシングとオファリング

これまでnoteのIPO連載では、上場審査の論点となりやすい内部管理体制や経理体制の構築、事業計画策定などについて触れてきました。それらの審査上重要な項目を一つ一つクリアして、いよいよ上場を2〜3ヶ月後に控えたとき、上場に向けての最後のハードルと言ってもいいのがプライシングとオファリングについてです。 IPOにおける、プライシングとオファリングとは?まず、オファリングとはなんでしょうか。IPOは、Initial Public Offering(新規公開株式)の略なので、オフ