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累計4億円調達したシリーズAのスタートアップやってたけど破産したヨ

こんにちは、教育系のスタートアップでCTOをしていたヒガシ(@suica_versa)と申します。

表題の通り、私は約6年前から教育機関向けのシステム開発を行うスタートアップでCTOとして働いていましたが、7/10付けで破産開始決定が申し渡されました。

破産に伴い、取引先をはじめ関係各所には大変なご迷惑をおかけしていることを経営メンバーの一人として、謝罪いたします。

このnoteでは、なぜ破産に至ったのか?破産の手続きってどういう内容?破産するとどうなる?という、スタートアップではなかなか語られない点について同じ轍を踏まないよう共有いたします。

ただし、まだ本件については進行中ですので、ある程度内容は省いている点をご容赦ください。

【免責】
当記事は私が所属していたDoorkel社の正式な文章ではございません。内容については時系列含め不正確なものも多々ございますので、あくまで1社員の視点から見た倒産記として御覧ください。

破産の原因

原因は実は下記だけではないし、他の経営メンバーから見ると異論も出ると思われるので代表的なものをピックアップした。

破産の原因1: 過剰な事業投資

会社の事業については、おおまかに自社サービス(SaaS事業)と、BPO事業、受託開発事業の3つを動かしていた。

BPO事業については実質今年からスタートしており、収支はトントン。受託開発事業は利益が出ていたが、創業当初から進めているSaaS事業については業績がかなり悪かった。

今振り返ると、所謂PMFしていない状態でシリーズAを迎えたと思う。資金調達に動いていたメンバーは否定すると思うが、私がかつてCSの責任者も兼任で進めていたのもあり顧客の意見については割と過去聞いてきたが、継続理由もプロダクトの世界観というよりは単機能目当てであったり、弊社のサポート担当との人間関係が大きかった。

それもあり新規営業は上手くいかず、顧客数も純減していた。

一方、倒産に至った今年こそ該当プロダクトがこれ以上成長しないと判断していたが、直前までは営業プロセスが悪いんじゃないかとか、CSの利用促進が上手くできてないのが原因だ、等プロダクトではなく仕事の品質(又は担当者)を責めていて、投資を締める意思決定ができていなかった。

破産の原因2: バックオフィス整備を怠っていた

本来は倒産が見え隠れしたタイミングから、組織規模を縮小したり、オフィスを縮小移転したりと対応を打つべきだった。

一方、我が社はバックオフィス、というか経理・財務の体制がかなり粗雑で、正直どのコストを絞れるのかの意思決定がし辛い状況にあった。

そのため、今振り返りるとキャッシュの先行きが危険水域に達している時期に人を新規採用していたり、オフィスの移転をしていたりとかなりチグハグな経営になっていた。

結局、倒産せざるを得ないことがわかったのも破産申立の直前になり、サービス提供先には突然のサービス終了で大変ご迷惑をおかけしたし、取引先にもいきなりの契約解除と倒産となりご迷惑をおかけしてしまった。

経営が立ち行かなくなってから破産をするまでに行ったこと

正直起きている状況=キャッシュがこれ以上回らないことに対して判断の自信もなかったため、まずは株主や知り合いの起業家などに相談した。

相談の結果、誰がどうみても倒産前夜状態になっているとのことで、早急に従業員の解雇、フリーランス含む各取引先の継続契約できないことを通知していった。

M&Aや引き継ぎ先の選定

スタッフの解雇などで事業もデリバリーできなくなるため、事業を引き継いで続けていただける会社を探した。当初は売却の方向で探していたが、残り期間が1ヶ月程度しかないこともあり難航し、結果的には事業譲渡ではなくすべての事業をサービス終了し、新規契約先として知り合いの会社を紹介することになった(契約の切り替え)。

また、特に正社員については解雇後の再就職のために知り合いの会社に頼み込んで再雇用していただいた。

諸事情あり社長が動けなかったり、他に動ける経営メンバーもいなかった関係で、破産手続きを進める傍らで引き継ぎ先を探したり、再雇用先を見つけてくるあたりの業務含め、殆どの業務を私一人でやらざるを得なかったのが大変だった。

更に、SaaS事業についてはシステムが孕む運用コストやバグ等のリスクもあり引き継ぎすらできなかった。そのため急遽サービス終了&前受金を預かっている顧客は返金について案内できない状態が続き、総合窓口として私が全部受けていた。毎日ひっきりなしにクレーム電話&返金について方針も確定できていないため案内もろくにできず、迷惑をかけているのに責任を果たせないという地獄のような状態が続き(今も続いている)かなり精神的にキていた。

ストレスで手の平の皮が全部剥けてしまったり、顔面けいれんが止まらなかったり、体中が痒くなったり、寝れなかったり睡眠も中途覚醒してしまったりと、色々とヤバそうな症状がでていた。

弁護士の選定

また、並行して倒産に強い弁護士を探す。

顧問弁護士もいたが、倒産・破産に関してはあまり詳しくないとのことで別の弁護士を紹介していただいた。また、知り合いづてでスタートアップの破産経験もある方も見つけ、最終的にそちらに依頼した。

ちなみに依頼金額は数百万円台。かつ、予納金という破産手続きのために支払うお金も支払いが必要で、破産というのにかなり出費が大きかった。

そこからは会社の財務状況を伝えたり、生きている各取引の契約書の内容をチェックしていただき破産の是非などを確認したり、提供中のサービスや前受金などの返金方針などについて相談を進めていった。

最終的に弁護士と契約をして、約1ヶ月経たない程度で破産申立にいたった。

破産という選択

そもそも、破産の選択肢が出るのは債権の支払いがそれ以上できないためである。その際、選択肢はざっくり2つあり、

  1. 任意整理
    債権者と協議して支払い時期を調整したり、債権額自体を圧縮していただく等で債権の支払いを対処していくこと。会社を残すこともできる。

  2. 破産
    裁判所に破産申立をして、債権を帳消しにしてもらう。会社も消滅する。

から選ぶことになる。

なんとなく聞いたことがあると思う。

ちなみに、今回の事象が起きたときに知り合いの起業家に意見を聞いたり、体験談を聞いたが殆どが1にあたる方法で対処していた。

複数の起業家が負債を抱えた法人を持ったまま新たな挑戦をしていたり、負債を債権の圧縮(減らす)ことで返しきった方が殆どだった。

実際、後でわかることだが破産の意思決定をした段階から、金銭の支払いについては自由に行うことができない。

破産は「債権者平等の原則」があり、すべての債権者は平等に扱われるべきであるから、例えばお金が動かせるからといって知り合いなどに優先して払ってから破産、というわけにはいかない。

今回も、破産をすることで取引先・前受金を頂いているお客様への返金が破産手続き後になる=最低でも半年・かつ全額返金されないことが確定してしまう。

また、フリーランスとして働いていて、殆ど正社員とかわらないような人たちにも報酬を払えないまま今日を迎えている。

破産の選択肢が出た際に、特にこの支払いを帳消しにしてしまう、という点について自分としてはかなり避けたかったが、諸事情あり破産の選択肢を取ることになった。

当然、働いたのに報酬が払われずに生活に影響がでている元スタッフも多く、本当に申し訳ない。

破産後に起きていること(進行中)

破産申立後、一週間で破産開始決定が出た。破産開始決定後は社長含む会社の人は意思決定権を持たず、基本的には破産管財人がすべて=財産処分の方針を決めていく。

実は私はCTOといいつつも取締役でもなくイチ従業員に過ぎない。ただ、創業当初から所属していたことと、しゃしゃり出る性格から破産関連の手続きをイニシアティブ取って進めていたため、破産開始決定が出たあとも庶務を担当している。

本来は従業員の解雇時に同時に解雇されるはずで、実際自分で自分の解雇通知書も発行していた。

今は破産管財人からの指示を随時受けつつ、主に契約関係についてわかる情報を提供したり、指示外ではあるが過去の契約上留意するべきこと等を情報共有するなどを進めている。

また、オフィスの退去のために物品の処分に関してもサポートしている。

スタートアップに入った人の話で本当のゼロイチから働いてることを表すために「最初の仕事は自分のイスを組み立てるところでした〜」という表現をすることがあるが、まさか「自分のイスを組み立てて、最後会社を畳むところまでやってました〜」と言うことになるとは思わなかった。

最後に

取り急ぎ、直近起きていることをかいつまんで説明した。実際起きている&話したほうが良いことの1割にも満たない内容ではあるが、スタートアップが倒産するというのはこういうことである。

顧客の課題解決をするための組織がスタートアップなのに、結局顧客が一番困るタイミングでのサービス停止になってしまったり、、支払いができないまま終わってしまうことで損害を与えてしまうことになってしまったりと、、関係各所にご迷惑をおかけしており大変申し訳ございません。

今後、私自身は破産手続きが落ち着くとともに無職になる予定です。
是非投げ銭してね。
(写真は報酬を支払えなかったフリーランスの皆さんから頂いたお手紙)



2024-07-23 15:55 追記
誤解を生む表現があったため修正しました。(自発的に

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