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水源純『五行歌と随筆 トリトメ』紹介

 こんにちは。南野薔子です。
 先日栢瑚の水源純さんが『五行歌と随筆 トリトメ』という本を出しましたので紹介を兼ねて感想など。
 
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 以前「五行歌+文章の魅力」という記事を書いて、純さんが五行歌と文章の組み合わせの作品でアンソロジーに参加していることを紹介したが、ついに、五行歌と随筆、という個人本ができた。文庫サイズで28ページ。控えめな真珠光沢の表紙に、見返り美人のワカケホンセイインコの写真はご子息水源カエデさんによるもの。
 トリトメ、というタイトルはトリトメのない話をしようということであるらしいが、この本のテーマは鳥なので「『鳥』について書き『留め』ておく」ということでもあるような気がする。
 この本も、五行歌と文章のバランス、互いの融合具合が心地いい。タイトルに「随筆」とついているが、まさに筆の随(まにま)に、といった感じで綴られている文章、その中に置かれる五行歌は、ある意味文章に添えられたイラストのような存在感を持っている。言葉で描かれた絵というような。
 鳥のことを五行歌と文章で綴りながら、そこに生活の中の変化やご子息の成長なども浮き彫りにされている、そのやわらかでたしかな筆致は純さんならではの持ち味だなあとあらためて思う。
 私も、ある程度の年齢になってから見かける鳥が気になったり、名前を知ったりすることが増えたので、内容的にああ、わかるなあ、と思いながら読んだ。そういえば、若い頃、東京に住んでいた今は亡き叔母と春に代々木公園を散歩したことがあり、その時桜の花をえらい勢いでちぎっては投げちぎっては投げしている緑色のインコたちがいて、二人で呆れて見ていたのだが、あれは多分ワカケホンセイインコだったのだろう。あと、私の家の徒歩圏内にも、運が良ければカワセミを見られる場所がいくつかあるのだが、なんだかんだで最近はそういうところを回れてないな、また歩きたいな、と思ったりした。
 「読むバードウォッチング」とも云える本だなあとも感じた。
 
 特に好きな歌を二首だけ。
 
 両翼を
 透かして
 真上をゆく
 空から生まれたような
 みずいろの白鷺
 
 あの鋭角は
 ツバメのもの
 曇天の中空に
 残像の
 タトゥー
 
 よろしければぜひ。
 一冊400円で販売中です。栢瑚のサイトのContact(トップページ下の方)や栢瑚のTwitterから注文できますし、いくつかイベントでも販売予定です(もう終わりましたが5月の文学フリマ東京にも出していました)。次の販売予定イベントは7月の「そこの路地入ったとこ文庫」さんです。どうぞよろしくお願いいたします。


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