川島海荷のキャリアが心配だが、新垣結衣は透明すぎる。広瀬すずはラッキガールだが、有村架純は問題がない

毎朝、日本テレビの「ZIP!」を見ている。
ここ1年ほどこの朝の情報番組にお世話になっているのだが、川島海荷のキャリアが気になる。どうしても気になる。
SEA BREEZEのCMでの爽やかなイメージが強い、一方で代表的なドラマや映画が思い当たらない。2008年「ブラッディ・マンデイ」の三浦春馬の妹役、としてのドラマイメージから更新がない。
けれども、何だかとにかく気になる美少女、美女というよりも美少女、得体は知れないけど惹きつけられる。当時はそんな感じだった。

それが今、毎朝お世話になっている。ああ川島海荷ちゃんというのはこういう(いい意味で)普通な子なんだなと思う。平日の朝が来るたびに彼女が大衆化されていく、どんどん身近になっていく。海外情報紹介コーナー「showbiz」にて赤カーペットを歩いていく彼女の後ろ姿はまるでハリウッドらしくはないスタイルだ。逆にそれが好感を持てる。でも、それで良いのか?

俳優、女優には独特の謎めきが必要な気がする。手の届かない世界で別人格を演じる彼ら・彼女らの得体の知れなさが魅力を作っている部分はあるだろう。

あの多少謎めいた爽やか美少女だった川島海荷にはもう戻れない彼女は、これからどんなキャリアを描くのだろう?

謎めいた美少女として、突然現れた女優といえば、今なら小松菜奈だろう。言わずもがな、「渇き」の主演女優として現れた彼女は不可思議な魅惑をまとう、あらゆる人を翻弄する女子高生として最強の存在感を放っていて、とにかくぴったりだった。

新人女優として、強い監督に見初められる運の強さ。そして新人と呼ばれるあのタイミングでなければ、あそこまでの「ぴったり感」は生み出せなかったように思う。当時予告編を見たときの彼女への引き込まれ方と比べると、小松菜奈を知ってしまった今、改めて見る「加奈子」はやっぱり少し見慣れてしまった感じがする。

俳優という職業が、人間を演じるものである限り、どうやっても100%の俳優というものは存在し得ない。どんなに美しく、演技が上手く、人間力があり、非の打ち所のない俳優であっても、合わない役柄というものが必ず出て来る。
そしてタイミング。

その中でどう自分を売っていくか。

川島海荷と対照的に、こちらの想定以上に着実なキャリアを歩んでいるように見えるのが、広瀬すずだ。
あからさまな事務所プッシュで大量のCMに出演していた数年前は、バラエティでの発言の危うさなどが指摘された時期もあり、安っぽい漫画実写モノ映画に立て続けに出演するタイプの女優になるのかと思っていた。ところが「三度目の殺人」にて是枝裕和監督、「怒り」にて李相日監督など、高い評価を常に得る監督からの抜擢が続き、今では演技派女優として紹介されることも少なくない。

対して「安っぽい漫画実写モノ」は完全に土屋太鳳が先陣をきっている。

広瀬すずはハーフと間違われるほどの特徴的な顔立ちをしているのに対し、正統派のアジア美人と言える武井咲の活躍はデビュー当時の期待感に反して伸び悩んだ印象が否めない。

清楚系、正統派の顔立ち、10代の頃からの完成度というと成海璃子とも近い気がする、代表作や印象に残る脇役のイメージがあまりない。

先クールの「黒革の手帖」でようやく新しい可能性を見せてきたように思えたが、結婚と出産を控える次クールでさらにそれをブラッシュアップできるのか、演技力であまり高い評価を聞かない中で今後どんな化け方がありうるのか、気になるところではある。

一方、こちらも先クール「過保護のカホコ」で隙のないカホコらしさを演じきった高畑充希も、この主演で今までと違う存在感を大衆に与えたように思う。主演した朝ドラ「とと姉ちゃん」よりも脇役として登場した「ごちそうさん」での演技と歌唱力が評価されがちな彼女だが、その役柄による変わりぶりはやはり舞台で培った演技力なのかもしれない。筆者が「過保護のカホコ」クール中に見たことによる影響も大きいが、映画「怒り」での数分の出演でも、一瞬の「良さ」をこちらに感じさせる魅力があるように思う。月9「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」での紀穂子役は、実年齢から5つほど上の女性を演じているからか、微妙にしっくりこない感じがどうしても残っているように感じたが、「あっ、今の表情、」という瞬間の魅力を飛び飛びに感じられた。

高畑充希の朝ドラ評判がイマイチだったように、朝ドラ主演女優は本当に一か八かである。

毎日見た結果としてうざいか、可愛いか、もうどちらかである。タチが悪いのは視聴者が見続けることだ。通常の夜ドラマならチャンネルを変えて終了なのであろうが、朝ドラはどれだけ文句を言っても皆チャンネルを変えない。変えないのに文句を言う。毎日見て毎日うざいと言う。それか、可愛いと言う。朝ドラ主演は賭けである。

この賭けにあっさりと勝ち、何事もなかったかのように「普通の女の子」的に振る舞うのが有村架純である。圧倒的昭和アイドル顔として昭和世代を取り込みながら、平成生まれの私から見ても何の遜色もなく可愛い。毎日見た結果、可愛い。素行も良さそう、性格も良さそう。とにもかくにも問題がない。これが逆に気になって仕方がない。

俳優という職業柄、人に見られることへの意識は一般人より明らかに高いはずであるのにも関わらず、有村架純は普通の女の子を崩さない。いまいち欲が見えない。でも仕事が途絶えない。「自然体」というキャラクターと言うには可愛いらしさしか見えてこないから、ジャージすっぴんで餃子とビールですよ、という世に慕われる「自然体」とは違っている。プライベートでも仲が良いと言う高畑充希は彼女のことを「ずっと見ていたいくらい、本当に女の子、何ですよね」と言う。でも嫌味がない。

とはいえ目に付く役柄は「普通の女の子」ばかりで、先ほどの月9「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の主役、杉原音は坂元裕二脚本でなくては成立しえないのではないかと思えるほどに普通である。今クール朝ドラ「ひよっこ」のみね子もまた、とんでもなく普通である。何より田舎くさい。田舎くさい、と言われたときのぷんすかした怒り方も完璧に田舎くさい。

結局は「普通の女の子」という役柄がドラマ・映画で蔓延している上に、そのキャラクターの主人公率が高く、そこにぴったりの女優として現状有村架純が抜きん出ている、ということかも知れない。突飛で非現実的なバリバリキャラクターを求めない時代性がもたらしたものもあるか。

この「普通の女の子」カテゴリに似て非なる形で存在しているのが新垣結衣だと感じている。個人的に、不思議なほどに、新垣結衣に惹かれない。

「普通の女の子」にカテゴライズされるのが有村架純だとしたら、新垣結衣は圧倒的な透明感を常に保っている。どんな色にも毒されず、どんな役にもインスタントに染められながら、圧倒的なルックス人気で世を渡る。その渡り歩ける理由が演技力なのか、ルックスなのかは定かではないが、あまりの染められなさに雪肌精のCMキャラクターとして常に透明感を保っていなければならない、という強固な契約があるのではないかと思えるほどである。

「コード・ブルー」で冷静な判断を次々にこなすクルーリーダーをそつなくこなし、「逃げ恥」で小気味良いセリフをリズムよくジェスチャーと共に読みあげる。これまた問題がない。あまりにも問題がない、そつがない、マイナス要素がない。そして紅白では踊らない。踊れよ。

この透明感に個人的にはどうしても惹き寄せられる魅力を感じられないのだが、皆さんはどうか。やはり可愛いらしさへの憧れが勝つのだろうか。

逆に色が大量に混ぜられてどろっとしたほどの濃さを感じるのが満島ひかり。激論を交わした映像が残っている映画監督との早々の結婚から離婚、その後の熱愛模様などプライベートの色濃さもまた彼女自身の魅力を増しているようにも思えるが、圧倒的な癖の強さと見ているこちら側をぐさっと刺してくる演技力に惹かれる。これが新垣結衣と全く対照的で非常に惹かれる。刺される。

妹を殺害された被害者家族と加害者家族との関係性を描いた「それでも、生きてゆく」では、満島ひかり、瑛太、大竹しのぶの役者としての、一瞬一瞬の感情の粒をつなぎ合わせるように演じる、その演技のきめの細やかさに、文字通り画面から目を背けられない気持ちにさせられた。他の作品に対しては悲しかった、面白かった、切なかった、可愛かった、という「感想」だけが出てくるものだとすれば、作品の感情の動きに完璧に自分を持っていかれる感覚である。

演技力に、もしくは役者に優劣が本当にあるとすれば、この「持っていかれる感覚」をどうやって見る者に持たせるか、ということなのかも知れない。

「満島ひかりさんに会いたい」とTBSドラマ「カルテット」での共演に対する思いを答えたのは吉岡里帆である。今では、京都からの典型的な這い上がりストーリーが散らつくようになったが、その情報以前に「カルテット」では大きなインパクトを残している。

「アリスちゃん」というかなりアンバランスなキャラクターを表現しきった彼女のインパクトはかなり大きかった。登場人物全員の不完全な人間性が作品を通して描かれる中で、最後まで意味合いを明かさないながらも鮮烈なキャラクター「アリス」、というもし私が役者だったら絶対この役が欲しい、と思う「めちゃくちゃいい役」を演じていた。

その演技の丁寧さは先クールの「ごめん、愛してる」でもきちんと発揮されているが、残念ながら作品としての魅力はいまいち、主演でありながらも「カルテット」での活躍は超えられない印象が残ってしまった。これもまた、どう作品に恵まれる俳優になるか、という途方も無い運の話に収束してしまった。

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