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人の探究心の根源を尋ねて : 永遠と抽象の一考察

岡ノ谷一夫教授の仮説によると、人類は今から10万年くらい前に言葉を獲得したとされています。歌から単語を切り出し、文法化した流れは、じつに興味深いです。

言葉の獲得の後、今から4万年前に宗教と美術が生まれたようです。そして1万年前に農耕が始まり、人類は文明を築く準備を数千年かけて積み重ね、5000年から3000年くらい前に、文明がスタートしました。

誰かとの別れ。死別で「もう会えないんだな」と感じることも、「お互い別々の場所に行くから、もう会えないだろうな」という別れもあります。現代と比べる、言葉を獲得した10万年前は、まだ農耕が始まっておらず、食料も医療も十分ではないから、今より寿命は短く、人生は困難だったでしょう。コンビニもスマホも、オートロックで駅まで徒歩3分の物件も存在しませんから。

人口もずっと少なかったですよね。 現代の80億人の人口は、産業革命以後に爆発的に増えた結果です。

別れの他に、「とても幸せだから、この状態がずっと続けばいいのに」という感情も「ずっと」ですよね。また、言葉を獲得する前からあった可能性はあります。言葉を持たない犬や猫も、「離れ難い」「久しぶりに会えてすごく嬉しい(どこ行ってたの!)」という感情を見せてくれるのだから、言葉を獲得する前であっても、我々と理解力は近い(※言葉と文字の獲得に、認知は影響を受けているから、同じではない)遠い遠い祖先も、文字通り言葉にならない思いを抱いたかもしれません。

「もう会えないんだ」という時の「ずっと、あるいはもう二度と」と、 「ずっと続いてほしいと願う時」の「ずっと」を、それは何なのかと考えていけば、抽象度が高まっていき永遠に至るでしょう。いつどのようにして永遠が永遠になったのか証明することは、私には難しいです。でも、間接的な証拠は文化・伝統・思想・歴史・文学の中にあります。

西洋哲学にも多くの知見は有りますが、今回は、日本も文化として継承した、馴染みの深い「永遠」である、東洋思想の「輪廻」の概念を確認しましょう。

輪廻は仏教だけでなく、ヒンドゥー教の前身であるバラモン教(ヴェーダ宗教)に萌芽が見られます。

輪廻または輪廻転生の由来は、卒塔婆に書いてある梵語でお馴染みの、サンスクリット語の「サンサーラ(संसार Saṃsāra)」が起源です。元々「さまようこと、歩き回ること」を意味していました。その後、「生まれ変わること」だけでなく「世界」という意味を持つようになり、「周期的な変化」を暗に含むように変化しました。この由来の変遷は、抽象概念の複雑化、抽象度の高まりの一例かと思います。

輪廻は、人だけでなく動物も含めた命として生まれ変わること。また、インド哲学の根幹であり、限りなく生と死を繰り返す輪廻の生存を苦と見なし、輪廻からの解放を最高の理想としています。


東洋思想は、儒教・仏教・道教が影響を与えあっています。例えば、老荘思想の荘子は道教に影響を与えていますが、「在り方」に関して、中国仏教の禅宗の成立に影響を与えました。そして、認知療法と禅の瞑想を組み合わせて、1970年代に開発されたのが、マインドフルネスです。

Kabat-Zinn was a student of Zen Buddhist teachers such as Philip Kapleau, Thich Nhat Hanh, and Seung Sahn, and a founding member of Cambridge Zen Center.

機械翻訳 : カバット・ジンはフィリップ・カプレオ、ティク・ナット・ハン、スン・サーンといった禅宗の師匠に師事し、ケンブリッジ禅センターの創設メンバーでもあった。

Jon Kabat-Zinn : Wikipedia(英語版)

Wikipedia英語版には、カバット・ジン博士の師匠の名前が明記されています。でも、荘子の名前は無いですよね。Wikipediaの項目を書いた方が、多分ご存知ないのだと思います。「あるがまま」を理解するなら、荘子を読むのは合理的ですから。博士の略歴も紹介しますね。

Kabat-Zinn was born in New York City in 1944 as the oldest of three children to Elvin Kabat, a biomedical scientist, and Sally Kabat, a painter. He graduated from Haverford College in 1964 and went on to earn a Ph.D. in molecular biology in 1971 from MIT, where he studied under Salvador Luria, Nobel Laureate in medicine.

機械翻訳 : カバット・ジンは 1944 年にニューヨーク市で、生物医学科学者のエルビン・カバットと画家のサリー・カバットの間に 3 人兄弟の長男として生まれました。1964年にハヴァフォード・カレッジを卒業し、1971年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で分子生物学の博士号を取得、ノーベル医学賞受賞者のサルバドール・ルリアに師事した。

Jon Kabat-Zinn : Wikipedia(英語版)

いずれにせよ、「永遠」は、触ることも確認することも難しく、文学的な表現を除けば、永遠に始まりはないはずですし、永遠に終わりがあったら永遠と矛盾しますから、 始まることもなければ終わることもないのが永遠です。 このように「抽象度」が極めて高く、具体的に把握することが困難な事柄を考え、探究する傾向こそ、 人間が他の生き物と異なる点だと、私には思えるのです。

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