マガジンのカバー画像

文章・言葉について

50
言葉、文章についてのつぶやきです。
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

添削屋「ミサキさん」の考察|39|『文章の書き方』を読んでみた⑨

添削屋「ミサキさん」の考察|39|『文章の書き方』を読んでみた⑨

|38|からつづく

無心――先入観の恐ろしさこの章も面白いのですが、ジャーナリズム論といった方がよい箇所なので、ここでは割愛します。

意欲――胸からあふれるものを【山田太一の言葉】

一見大学生の特権(?)のように読めて鼻白む方もいるかもしれませんが、これは大学の新入生にむけての言葉です。言われていることは、何も学生に限ったことではありません。ちなみに、この文章が書かれた1990年代中盤ならま

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|38|『文章の書き方』を読んでみた⑧

添削屋「ミサキさん」の考察|38|『文章の書き方』を読んでみた⑧

|37|からつづく

【女優・沢村貞子の文章】

まずはどんな文章なのかを見てみましょう。皆さんは、どんなふうに感じますか?

辰濃さんが注目しているのは以下のことです。

私にとっては極めて有用な面白いヒントでした。
文章であれ、エッセイであれ、おそらく意識しないと、「考えた」「思った」「感じた」「○○に見えた」という述語が多くなるのではないでしょうか。
自分(あるいは一人称の主人公)を主語にす

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|37|『文章の書き方』を読んでみた⑦

添削屋「ミサキさん」の考察|37|『文章の書き方』を読んでみた⑦

|36|からつづく

東野圭吾『容疑者Xの献身』冒頭部分

これはテキストに載っているわけではないのですが、ぜひご紹介したく、引用させていただきます。ひとつの文章のお手本だと思っています。(なお、長いので抜粋です。)

 主人公「石神」の目を通していますが、作家の観察眼に驚きます。しかも、この冒頭部分が物語の伏線にもなっているのですから。
 また、こういった叙述は、文章がうまくないと単に退屈な描写

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|36|『文章の書き方』を読んでみた⑥

添削屋「ミサキさん」の考察|36|『文章の書き方』を読んでみた⑥

|35|からつづく

現場――見て、見て、見る非常に興味深いお話だと思います。新聞記者のお話ですが、小説など文章を書く者には大いに参考になるのではないでしょうか。
面白いので、他の例も続いて引用しますね。

小説においてこういう「観察」は命ともいえると思います。文字通り、命を吹き込むのです。
それを実感した例、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』の冒頭数ページを、次にご紹介したいと思います。

|37

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|35|『文章の書き方』を読んでみた⑤

添削屋「ミサキさん」の考察|35|『文章の書き方』を読んでみた⑤

|34|からつづく

※このエッセイでは、辰濃さんが紹介されている例を全部ご紹介することはしません。私自身が気になったところだけです。
ですので、ご興味のある方はぜひ本書を入手して全部読むことをおすすめします。

トルーマン・カポーティ『冷血』

カポーティというと、オードリー・ヘップバーンの主演で映画になった『ティファニーで朝食を』が有名ですが、他面、残虐な一家皆殺し事件を追ったノンフィクション

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|34|『文章の書き方』を読んでみた④

添削屋「ミサキさん」の考察|34|『文章の書き方』を読んでみた④

|33|からつづく

向田邦子の「広い円」

作家の向田邦子は、小学四、五年のころ、夏目漱石の『坊ちゃん』『三四郎』『吾輩は猫である』を読んだそうです。

向田邦子の文章はとにかく上手です。エッセイスト、脚本家、作家として多岐に活動されましたが、やはりエッセイにその醍醐味は示されているでしょう。
そういった文章の「才」は、幼少のころからの貪るような読書で培われたことをうかがわせます。
幼い頃と言わ

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|33|『文章の書き方』を読んでみた③

添削屋「ミサキさん」の考察|33|『文章の書き方』を読んでみた③

|32|からつづく

広い円――書くための準備は池波正太郎の「食べ物」の文章

「広い円」の例がいくつか述べられていくのですが、まずは作家の池波正太郎の文章です。
彼は、欠かさず「食べもの日記」をつけていたそうです。
その”成果”が以下の文章です。

個人的な話になりますが、私は食べることもお料理もあまり好きではありません。で、どうしてもおいしそうな料理や食べ物の描写は苦手です。
でも、たとえば、

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|32|『文章の書き方』を読んでみた②

添削屋「ミサキさん」の考察|32|『文章の書き方』を読んでみた②

|31|からつづく

本書の章分けについてここで、辰濃さんが文章を論じる際の章の分け方をご紹介しておきます。

まだ何のことかさっぱり分かりませんね。でも、何かわくわくした気持ちになります。
個人的には、「広い円」「遊び」「新鮮」に心惹かれます。

それでは、さっそく内容に入っていきましょう。

一、〈広場無欲感〉の巻――素材の発見広い円――書くための準備は

辰濃さんのこの著作は、含蓄のある言葉

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|31|『文章の書き方』を読んでみた①

添削屋「ミサキさん」の考察|31|『文章の書き方』を読んでみた①

添削屋「ミサキさん」の考察、第2弾は、朝日新聞社記者を長く勤められ、「天声人語」も執筆されていた辰濃和男さんの『文章の書き方』(岩波新書・1994年)をテキストにして勉強していきます。

Profile
ジャーナリスト。1930~2017。
東京商科大学(一橋大学)卒業、朝日新聞社入社、ニューヨーク特派員、社会部次長、編集委員、編集局顧問を務め、1975~1988年「天声人語」を担当。93年同社退

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|30|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉚ 最終回

添削屋「ミサキさん」の考察|30|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉚ 最終回

|29|からつづく

過去形と現在形を織り交ぜて書く効果

では、例文をあげてみます。

東野圭吾さんの傑作『幻夜』。終盤のクライマックスに向かうシーンの記述です。過去形を基調とした中に、ところどころ現在形を入れて、読みやすいですね。落ち着いた感じで場の雰囲気を伝えています。

恩田陸さんのデビュー作『六番目の小夜子』の一節です。無理なく過去形と現在形が織り交ぜられていて読みやすいですね。

話題

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|29|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉙

添削屋「ミサキさん」の考察|29|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉙

|28|からつづく

第40位 過去形と現在形を混ぜると文章がいきいきする◇過去形と現在形をまぜる2つの効果

(1)文章にリズムができる

 過去形と現在形をうまく交ぜることで、文章にとって大切なリズムをつくることができます。

 作家の三島由紀夫の言葉。
「私はまた途中で文章を読みかえして、過去形の多いところをいくつか現在形になおすことがあります。これは日本語の特権で、現在形のテンスを過去形の

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|28|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉘

添削屋「ミサキさん」の考察|28|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉘

|27|からつづく

第26位 同じ言葉の重複を避ける
[Point]
☑同じ言葉は省略するか、言い換える

⇒私の意見としては、「悪い例」のように同じ言葉を繰り返しだすことはあまりないかと思いますが(自然に省略している)、最後の「クルマ」を「良い例」のように「1台」と言い換えるような一工夫は案外書きなれていないとでてこないのではないかと思います。こういう言い換えができると、ぐんとスマートな文章に

もっとみる
添削屋「ミサキさん」の考察|27|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉗

添削屋「ミサキさん」の考察|27|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉗

|26|からつづく

3⃣「……が」を使っていいのは「逆接」のときだけ

「が」も注意が必要な助詞です。覚えておきたい「が」の用法は3つあります。

◉格助詞 おもに名詞について文節同士の関係をあらわすもの
◉接続助詞 前後の文をつなぐもの

 文章のプロの多くが、接続助詞の「が」を警戒しています。「が」は前後のつながりのない文でもくっつけてしまうからです。
 接続助詞の「が」には、上記のように「

もっとみる
【note安心創作勉強会】「文章の間違いや誤解を防ぐ校閲の基本」のまとめ

【note安心創作勉強会】「文章の間違いや誤解を防ぐ校閲の基本」のまとめ

2021年12月8日に行われた【note安心創作勉強会】「文章の間違いや誤解を防ぐ校閲の基本」は、「添削業」をしている私にとっても、とても参考になる興味深い内容でした。

自分自身の復習と内容のご紹介を兼ねてまとめてみました。

講師のみなさん◉LINE校閲チームの中村陽介さん、伊藤貴彬さん、澤田恵理さん
対象サービスは、LINE NEWS livedoor NEWS BLOGOS LIVE

もっとみる