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添削屋「ミサキさん」の考察|32|『文章の書き方』を読んでみた②

|31|からつづく

本書の章分けについて

ここで、辰濃さんが文章を論じる際の章の分け方をご紹介しておきます。

第一の巻では、文章を書くさいの準備段階というか、材料を仕込むときの心構えといったことを書いてみます。
 広い円
 場(現場)
 無(無心・白紙)
 欲(意欲)
 感覚
の五つの主題を扱います。いちばん上の文字をつないで〈広場無欲感〉の巻とします。
第二の巻は、文章を書くうえで、基本的に大切なことと考えていることです。
 平明
 均衡
 遊び
 具体性
 品格
の五つの主題を扱います。これもいちばん上の文字をつなぎあわせて〈平均遊具品〉の巻としておきましょう。
第三の巻は、実際に文章を書くときの表現上の心構えです。
 整えること
 正確
 新鮮
 選ぶこと
 流れ
という五つの主題を扱います。上の文字をつなぎあわせて〈整正新選流〉の巻とします。
(強調は引用者)

まだ何のことかさっぱり分かりませんね。でも、何かわくわくした気持ちになります。
個人的には、「広い円」「遊び」「新鮮」に心惹かれます。

それでは、さっそく内容に入っていきましょう。

一、〈広場無欲感〉の巻――素材の発見

広い円――書くための準備は

辰濃さんのこの著作は、含蓄のある言葉がいっぱいで、できれば本書そのものを読むことをおすすめします。
ここでは、あくまで私の個人的な勉強ノートとして、私が気になったところを引用し、感想や所感を述べていきます。

広い円」の意味とは、次のように述べられています。

 土の上に直径一メートルの円を描き、その円内で円錐状の穴を掘ります。次に直径五メートルの円を描いて穴を掘ります。どちらがより深く穴を掘ることができるか。いうまでもなく、円が大きければ大きいほど、穴も深くなります。
 ものを書くときは準備が大切です。小さな円を描いたのでは、それだけのもので終わってしまいます。はじめから思い切って広い円を描いて準備をすれば、内容の深いものが生まれます。
 と、言葉でいうのは簡単ですが、土を掘れば石ころもある。木の根っこもある。そういうものと根気よく格闘しなければならない。人はともすれば易きにつきがちです。つい小さな穴ですまそうとする。
 しかし、小さな穴でごまかした文章は、結局はそれだけのものです。……

小さな穴でごまかした文章は、結局はそれだけのものです」との最後の一文が心に刺さります。
 文章はやはり、テクニックだけではいかない。ごまかせない部分があるのだと自分を戒める気持ちになります。
 ふだんから、いろいろなものに目を向け、観察し、自分の頭で誠実に考えること――小説だけに限りませんが、小説においてそれは顕著に表れることのようにも思えます。

|33|につづく

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