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添削屋「ミサキさん」の考察|29|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた㉙

|28|からつづく

第40位 過去形と現在形を混ぜると文章がいきいきする

◇過去形と現在形をまぜる2つの効果

(1)文章にリズムができる

 過去形と現在形をうまく交ぜることで、文章にとって大切なリズムをつくることができます。

 作家の三島由紀夫の言葉。
私はまた途中で文章を読みかえして、過去形の多いところをいくつか現在形になおすことがあります。これは日本語の特権で、現在形のテンスを過去形の連続の間にいきなりはめることで、文章のリズムが自由に変えられるのであります。」(『文章読本』/中央公論新社)

テンス:時制のこと。

⇒「日本語の特権」とは言いえて妙! 本当にそう思います。外国の言葉で文章をまともに書いたことはないので分かりませんが、日本語はある種融通の利くリズムに向いた言語かもしれませんね。私も文章を書くとき、過去形と現在形に悩みつつも、どう組み合わせるのかに醍醐味を感じるところもあります。

✖悪い例
 昨日まで新潟の魚沼地方にいた。友人と会い、毎日コシヒカリの新米を食べた。新米はうまかった。1粒の梅干しと焼き鮭で、2膳おかわりをした。来年も新米の時期に訪れたいと思った
〇良い例
 昨日まで新潟の魚沼地方にいた。友人と会い、毎日コシヒカリの新米を食べる。新米はうまい。1粒の梅干しと焼き鮭で、2膳おかわりをする。来年も新米の時期に訪れたい

(2)ライブ感が生まれる
 
過去形で書くと終わった出来事に感じますが、現在形を使うと今そこで行われている印象になります。

 朝日新聞のベテラン校閲者の前田安正さんも「過去形のなかにうまく現在形を使うと、ライブ感が出てくる」(『マジ文章書けないんだけど』/大和書房)と書いています。

例文
 晩秋の公園に散歩に出かけた。風がそよぐと枯れ葉が舞う。それを追いかけていた小さな子が転んだ。泣きながらも自分で立ち上がる。見ていた大人たちから安堵のため息がもれた

次回は、例文をご紹介して、このエッセイは最終回となります。

|30|につづく


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