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文章・言葉について

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言葉、文章についてのつぶやきです。
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添削屋「ミサキさん」の考察|47|『文章の書き方』を読んでみた⑰

添削屋「ミサキさん」の考察|47|『文章の書き方』を読んでみた⑰

|46|からつづく

――漢字の割合について

 「字面というのは大切です。」と辰濃さんは言います。

 さて、この網のかかった文章の漢字率は27%だそうです。

 漢字とひらがなの割合やひらがな表記にしたほうがよい漢字の話はよく言われることなので、これだけにしておきますが、字面、同時に文章のリズムにも関係してくるポイントです。

――カタカナ言葉について

 これは、この本が書かれた90年代前半

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添削屋「ミサキさん」の考察|46|『文章の書き方』を読んでみた⑯

添削屋「ミサキさん」の考察|46|『文章の書き方』を読んでみた⑯

|45|からつづく

「品格――ものごとを見つめるゆとり」については割愛します。

三、〈整正新選流〉の巻―表現の工夫―整える――気をつけたい六つのこと

――文の長さについて 
 書き出しから句点(。)までがあまりにも長い文は、読みにくいものです。文の長さはどのくらいが適当なのか。これは一概には決められませんし、決めるべきものでも多少長めでも読みやすい文があるし、短くても難解な文があります。

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添削屋「ミサキさん」の考察|45|『文章の書き方』を読んでみた⑮

添削屋「ミサキさん」の考察|45|『文章の書き方』を読んでみた⑮

|44|からつづく

具体的な事実を積み重ねる文章の例文はいくつか紹介されているのですが、ここではもうひとつ、物理学者・朝永振一郎の文章を引用しておきます。
絵巻物「鳥獣戯画」についての文章です。

読んでいて思ったのですが、ある絵画をとことん描写するというのは文章を書くとてもよい訓練になりそうですよね。ゆっくり味わい、想像を巡らせながら。そこから物語ができるかもしれない。
やってみたい気がします

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添削屋「ミサキさん」の考察|44|『文章の書き方』を読んでみた⑭

添削屋「ミサキさん」の考察|44|『文章の書き方』を読んでみた⑭

|43|からつづく

二、〈平均遊具品〉の巻――文章の基本――この章では、「平明(1)――わかりやすさの秘密」「平明(2)――読む人の側に立つ」「均衡(1)――文章の後ろ姿」「均衡(2)――社会の後ろ姿」「遊び――異質なものとの出あい」については割愛いたします。ご興味のある方は、辰濃さんの本をお読みください。

具体性――細部へのこだわりを

「新聞の記事では『具体的な事実』が命です。」

自分は

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添削屋「ミサキさん」の考察|43|『文章の書き方』を読んでみた⑬

添削屋「ミサキさん」の考察|43|『文章の書き方』を読んでみた⑬

|42|からつづく

――味覚について

角田房子『味に想う』より。

 食べたくなる文章ですね 笑。でも、味覚そのものを言い表す描写はないですね。
 次に紹介されている甘糟幸子さんの文章は、その点もっと踏みこんでいると思います。

さて、私のほうから例文を。
お料理や味覚の描写の名手といえば、この人ではないでしょうか。
柚木麻子『BUTTER』より。

味覚・食べ物の描写のこのある種の執拗さ、す

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添削屋「ミサキさん」の考察|42|『文章の書き方』を読んでみた⑫

添削屋「ミサキさん」の考察|42|『文章の書き方』を読んでみた⑫

|41|からつづく

――触る感覚について

石川淳『焼跡のイエス』より。

「この作品では、主人公と少年の間に言葉の交流はいっさいありません。あるのは肉体のぶつかりあいだけです。人間同士の会話はなく、あるのは原初のぶつかりあいです。……読者を『もうたくさんだ』という思いにさせておいて、ふいに、作者は書くのです。その手首が『おもひのほか肌理(きめ)がこまかで』『なめらかな皮膚の感触であつた』と。」

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添削屋「ミサキさん」の考察|41|『文章の書き方』を読んでみた⑪

添削屋「ミサキさん」の考察|41|『文章の書き方』を読んでみた⑪

|40|からつづく

――匂いの表現について

香りの研究家、中村祥二氏(資生堂香料研究部長『香りの世界をのぞいてみよう』)における、匂いの分類。

「例」にあるキンモクセイの香りの描写はすごいですね。もし自分が同じことをやろうとしても、どう表現したらよいのかはた、ととまどってしまいます。

「描写は(視覚だけでなく)五感でやること」とはよく言われますが、この五感を働かせてとらえるというのはけっこ

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添削屋「ミサキさん」の考察|40|『文章の書き方』を読んでみた⑩

添削屋「ミサキさん」の考察|40|『文章の書き方』を読んでみた⑩

39|からつづく

感覚――感じたことの表現法

「この章で考えたいことは二つあります。一つは、感覚を磨くということであり、もう一つは感覚の表現を磨くということです。感じたことをどう表現するかということです。」

――視覚について。

「自分が見た色を表現するのはやさしいようで、なかなか難しい。」
たとえば沖縄の海。

たとえば実際に小説やエッセイを書く場合には、このような美しい色・風雅な色ばかり

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添削屋「ミサキさん」の考察|39|『文章の書き方』を読んでみた⑨

添削屋「ミサキさん」の考察|39|『文章の書き方』を読んでみた⑨

|38|からつづく

無心――先入観の恐ろしさこの章も面白いのですが、ジャーナリズム論といった方がよい箇所なので、ここでは割愛します。

意欲――胸からあふれるものを【山田太一の言葉】

一見大学生の特権(?)のように読めて鼻白む方もいるかもしれませんが、これは大学の新入生にむけての言葉です。言われていることは、何も学生に限ったことではありません。ちなみに、この文章が書かれた1990年代中盤ならま

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添削屋「ミサキさん」の考察|38|『文章の書き方』を読んでみた⑧

添削屋「ミサキさん」の考察|38|『文章の書き方』を読んでみた⑧

|37|からつづく

【女優・沢村貞子の文章】

まずはどんな文章なのかを見てみましょう。皆さんは、どんなふうに感じますか?

辰濃さんが注目しているのは以下のことです。

私にとっては極めて有用な面白いヒントでした。
文章であれ、エッセイであれ、おそらく意識しないと、「考えた」「思った」「感じた」「○○に見えた」という述語が多くなるのではないでしょうか。
自分(あるいは一人称の主人公)を主語にす

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添削屋「ミサキさん」の考察|37|『文章の書き方』を読んでみた⑦

添削屋「ミサキさん」の考察|37|『文章の書き方』を読んでみた⑦

|36|からつづく

東野圭吾『容疑者Xの献身』冒頭部分

これはテキストに載っているわけではないのですが、ぜひご紹介したく、引用させていただきます。ひとつの文章のお手本だと思っています。(なお、長いので抜粋です。)

 主人公「石神」の目を通していますが、作家の観察眼に驚きます。しかも、この冒頭部分が物語の伏線にもなっているのですから。
 また、こういった叙述は、文章がうまくないと単に退屈な描写

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添削屋「ミサキさん」の考察|36|『文章の書き方』を読んでみた⑥

添削屋「ミサキさん」の考察|36|『文章の書き方』を読んでみた⑥

|35|からつづく

現場――見て、見て、見る非常に興味深いお話だと思います。新聞記者のお話ですが、小説など文章を書く者には大いに参考になるのではないでしょうか。
面白いので、他の例も続いて引用しますね。

小説においてこういう「観察」は命ともいえると思います。文字通り、命を吹き込むのです。
それを実感した例、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』の冒頭数ページを、次にご紹介したいと思います。

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添削屋「ミサキさん」の考察|35|『文章の書き方』を読んでみた⑤

添削屋「ミサキさん」の考察|35|『文章の書き方』を読んでみた⑤

|34|からつづく

※このエッセイでは、辰濃さんが紹介されている例を全部ご紹介することはしません。私自身が気になったところだけです。
ですので、ご興味のある方はぜひ本書を入手して全部読むことをおすすめします。

トルーマン・カポーティ『冷血』

カポーティというと、オードリー・ヘップバーンの主演で映画になった『ティファニーで朝食を』が有名ですが、他面、残虐な一家皆殺し事件を追ったノンフィクション

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添削屋「ミサキさん」の考察|34|『文章の書き方』を読んでみた④

添削屋「ミサキさん」の考察|34|『文章の書き方』を読んでみた④

|33|からつづく

向田邦子の「広い円」

作家の向田邦子は、小学四、五年のころ、夏目漱石の『坊ちゃん』『三四郎』『吾輩は猫である』を読んだそうです。

向田邦子の文章はとにかく上手です。エッセイスト、脚本家、作家として多岐に活動されましたが、やはりエッセイにその醍醐味は示されているでしょう。
そういった文章の「才」は、幼少のころからの貪るような読書で培われたことをうかがわせます。
幼い頃と言わ

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