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「クイズ PとAって何?」 と 考えるということ

 「PとAって何ですか?」というクイズを生徒たちに出題すると、数学の問題ときとは違って、様々な反応が返ってきます。
即答してくる解答で一番多いのが「PTA」ですが、もちろん不正解です。
 このように思いついたことをすぐに発言してトライ&エラーで考えたり、友だちと意見を出し合ったり、一人で黙々と考えたりして、懸命に思考を巡らせて答えを探求します。
 普段の数学の授業でもこれぐらい積極的に考えることができれば、学力が向上するはずと思い、このクイズをきっかけに「考えるということ」を考えたことがありました(日本語って難しいですね…)

3つのパターン

「PとAって何ですか?」というクイズを考えるとき、大きく分けると次の3つの思考パターンになります。

【Xパターン】
 この問題、解き方・考え方、解答を知っているので、その記憶をもとに
 解答を導き出す 

【Yパターン】
 この問題は初見だが、今まで経験しているクイズやその解き方・考え方を
 参考にして類推する

 例えば
 ・PやAは何かの英語の頭文字かもしれない
 ・アルファベットと日本語が違うので、言語をそろえるために
  英語に変換する、または、日本語に変換する
 ・過去に「TかAって何ですか?」という類似問題を考えたことがあるの
  で、同じ手法が使えないか検討する
 などを、頭の中で試行錯誤していると思われます。

〈「PTA」と解答するまでの思考の流れ〉 

 「P」と「A」はアルファベット、「と」は日本語だから言語が違う
               ↓
  言語をそろえるために、「と」をローマ字変換し、「TO」とする
               ↓
 「PTOA」では意味が通じないので、
  Tだけ取り出して「PTA」という解答に至る

※言語化すると上記のようになりますが、おそらくほとんどがそこまで
 意識せず「PTA」という解答に、たどりついていると思われます。

【Zパターン】
 初見の問題で、かつ、他のクイズにも取り組んだ経験がほとんどない状
 態、情報「0」から解答を導き出す

 つまり

Xは知識・経験で、
Yは知識・経験とそれらを活用しようとする思考で、
Zは独自の発想力・思考力・創造力で、

このクイズを解答することになります。
しかし、Zのように全く何も知らないという人は情報社会の今の世の中を考えるとかなり稀有な存在であり、また、この状態で解答を導き出せる人はごくわずか才能のある者しかいないように思われます。
大半の人がYパターンに属しており、それまでの経験や知識の量に思考が左右されるため、解答に到達できる人もいれば、そうでない人もいるという
かなり幅の広い層になります(私もYパターンで解答しました)。
 ここで、Y、Zパターンの人が「考える」という作業を頭の中でしていることはわかりますが、問題を知っていたXパターンの人は考えていない、思考していないことになるのでしょうか。答えは「No」です。
Xパターンの人が過去に「PとAって何ですか?」というクイズを初めて考えたときは、Yパターンで答えを類推したはずです。そして、その経験が知識として蓄積され、2度目に出題されたときに類推の考え方をショートカットしているだけとみなせば、Xパターンの人も思考を行っているといえます。
むしろ逆に、最も早く解答にたどりつけるXパターンの思考理想的だと思いませんか?「豊富な知識が思考を加速させる」というのは、クイズ番組に出演している東大生を見れば、一目瞭然です。

 実際の話、解答するために脳内でX、Y、Zどのパターンで思考しても、その脳内のアプローチは周りの人から見えないため、結果的に正解するのであれば、どのパターンで思考しても構わないはずです。
また今、Yパターンの思考をした人も別の機会に同じクイズに遭遇したら、
「以前に考えたクイズだから知っている」
というXパターンの状態になりますので、遅かれ早かれです。
むしろ、問題にしなければならないのは正解にたどりつけないことであって、思考のパターンや方法ではありません。

考えるということ

 このクイズの考察から、考えるということ

知識や経験による記憶
      と
「その知識を活用する技能(スキル)

で行われているということです。
 つまり、「知識や経験」を多様化し、それらを活用する方法も「知識」として蓄積した上で「技能」を磨けば、考える力の向上が期待できるということです。

 例えば、数学において、このような角度を求める図形問題の場合

 補助線を1本ひけば、簡単に求めることができます。しかし、初見の生徒にとって、考える道具が何もなければ、中学の頃の私のように手も足も出ない状態になってしまうでしょう。
そこで、このような問題に対応するために

「知識」
として
 補助線の種類(三角形をつくる、平行線をひく、延長線をひくなど)と
 その意味や目的を記憶し、

「技能」として
 補助線のひき方、活用法をいろんな種類の問題で試行することで
 身につけていけば、

 類似問題や初見の問題もこの「知識」「技能」を利用して考えることができます。
「考えなさい」と伝えたり、「考える」時間を授業に設定したりするだけではなく、生徒たちが自ら「考える」ことができる素地を育成することが教育者にとって重要視すべきことでしょう。

 ちなみに「PとAって何ですか?」の解答は、
「と」をローマ字変換ではなく、英語の「and」に変換して、
「P and A」→「PANDA」→「パンダ」となります。
言語の変換という考え方(知識)を類似問題で経験していなければ、私の頭脳では1ミリも発想できないという自信があります。そう考えると「0」から「1」を生み出せる人は偉大です。

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