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【読書】山女日記 & 残照の頂 / 湊かなえ

湊かなえさんの「山女日記」は、極限状態で死と隣り合わせ、といった山岳小説とはちょっと違っていて、女たちが山に登りながら新しい景色に出会うことで、小さな答えを見出していく物語。

登場人物たちは、何か心に鬱屈を抱えていて、歩きながらその火種が何かを自らに語りかけます。迷い、呪縛、後悔、劣等感、見失った目標、それから過去の恋。いろんな想いを抱えながら、何か変わるかもしれないという期待を込めて、一歩ずつ歩く。登山初心者もいれば、かつて山岳部だった人も登場します。

山に登ることで何かを見つけられそうな気がしたり、実際人生が変わった、ということだって珍しくはない。でもそれって山が誰かのために見つけてくれたわけじゃなくて、見つけたのは自分なんですよね。そこがとてもよく描かれていて、ご都合主義じゃなくて、とても面白かったです。山のチョイスも絶妙。ちなみに出てきた山は、妙高山、火打山、槍ヶ岳、利尻山、白馬岳、金時山、トンガリロ(ニュージーランド)。
白馬岳の女三人登山の話がいちばん好きでした。白馬の雪渓が目に浮かぶ〜。

作者の湊かなえさん自身もハイカーで、どの山もご自身が登ったことのある山だそう。だからこそリアリティもあるし、登場人物と山の難易度にかけ離れた現実はないと思っているのだけど、初心者OL二人組(しかも片方はハイキングシューズでもない)が妙高山と火打山の縦走は可能なのでしょうか?それがめっちゃ気になって仕方ない。あと槍ヶ岳の話で出てきた推定50〜60歳のおばちゃん。旦那さんを見返してやりたい一心で初登山が槍ヶ岳って無謀すぎない?と読む手が若干止まりましたが、湊かなえ先生を信じます。だって何かのインタビューで、本を読んで行ってみたいと思う人がいるかもしれないから、取り上げる山は自分の足で歩くって言ってたし。ちなみにそのおばちゃんはメインキャラクターではないので、槍の肩までしか描かれていなかったけど、その後彼女は槍の上に立ったのでしょうか。気になる〜!

「残照の頂」は2作目ということもあってか、登場する山の難易度がぐんと上がり、後立山連峰、北アルプス表銀座、立山・剱岳、武奈ヶ岳、安達太良山といったラインナップ。登場人物は1作目より愛おしく感じました。やっぱり立山に行ってみたいなあ。立山三山縦走して剱岳を拝みたい。雄山神社にお参りもしたいし、ご祈祷もお願いしたい。
実は去年の秋、立山に行く計画を立てていたのだけど、天候不良で頓挫したのでした。今年こそぜひとも行きたい!

にしてもここでも出てきた初心者おばちゃんの話。65歳のおばちゃんが初登山で五竜岳に登れるんでしょうか?小屋に泊まって星空眺めてたけど、わたしのお母さん(65以下ですが)がいきなり五竜に登れるとは到底思えない……。けど!!おばちゃん、めっちゃ基礎体力ある人かもしれないし、毎日走り込みとかしてるかも!わたしは湊先生を信じます(湊かなえによせる絶大の信頼)。

でもそれらが真実ならば、わたしに登れない山などないじゃないですか。今自信に満ち溢れています。

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