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法医学まとめ

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法医学 法医中毒学

中毒とは、化学物質による生体機能障害 薬物と毒物薬物 生体の恒常性の維持機構の障害を直す化学物質 または生体にとって異物である細菌やウイルスなどにダメージを与える化学物質 毒物 生体に摂取されると化学的作用により健康を害すまたは死に至る化学物質 特に小動物に対する経口LD50<30mg/kgを毒物              <300mg/kgを劇物 と呼ぶ 中毒の臨床症状神経症状:昏睡、麻痺、振戦 消化器症状:嘔吐、下痢、腹痛 呼吸器症状:呼吸困難、呼吸抑制、咳 眼症

法医学 死亡診断書・死体検案書

死亡を医学的・法律的に証明する書類 死因統計にも使われる 死亡診断書:自ら診療管理下にある患者が、生前診療していた傷病に関連して死亡した場合交付する 死体検案書:診療継続中の患者が生前の傷病以外で死亡した場合、または診療継続中の患者以外の死体を検案したとき死因が判明すれば交付する 関係法規死亡診断書・死体検案書の交付に際し、異常あれば24時間以内に所轄警察署に届けなければならない(医師法21条) 医師法第19条:応召義務において死亡診断書・死体検案書は交付が義務付けら

法医学 遺伝形質による個人識別

指紋万人不同・終生不変であるため個人識別に向いている 胎生5か月頃から形成開始し、出生前に完成する 成長に伴い拡大はするが紋様はかわらない 薬品ややけどで焼いたりはがしても皮膚の再生とともに指紋隆線は復元する 指紋の分類①弓状紋:示指に多い ②蹄状紋:甲種と乙種にわかれる ③渦状紋:母指と薬指に多い ④変体紋:その他 個々人により発現するものとしないものがある 指紋法①十指指紋法 被疑者の身元確認などに使われる 示指、中指、環指、小指、親指の順に指紋価を記入する (示指

法医学 形態による個人識別

年齢推定指標幼児~20歳ごろまで 骨化中心が出現 歯の石灰化、萌出時期が年齢推定に用いられる 成人 頭蓋縫合の閉塞度 恥骨結合面形態変化 咬耗状態 歯髄腔の狭窄 頭蓋の縫合加齢に応じて縫合が消失していく 冠状縫合 40~50代:側頭骨付近消失 60代:プレグマ(中心部)まで消失 70代:ほぼ消失 矢状縫合 30代:ラムダ部消失 40~50代:プレグマ部消失 60代:中央部まで消失 70代:ほぼ消失 ラムダ縫合 40代:乳様突起付近消失 50~60代:ラムダ部付近消失

法医学 個人識別概論2 骨について

白骨脊椎動物の死体が長期間放置され、腐食や風化が進み骨格だけが残された状態 骨は歯に次いで硬いことから長期間残りやすい 白骨化は 夏場では1週間~10日 冬場では数か月 水中では2~5年 土中では7~10年 人体の硬組織 歯(エナメル質、最も硬い) 骨(リン酸カルシウム) 爪(ケラチン) 毛(ケラチン) モース硬度 鉱物に対する硬さの尺度 骨は7→水晶に相当 骨の基本事項①骨が集まって骨格ができる ②骨には硬骨と軟骨がある 軟骨は長期間放置すると溶解して残らない ③

法医学 個人識別 概論

個人識別生体、死体あるいは死体の一部がだれであるかを決定すること 身元不明な人を対象とする 特定プロセス①所持品 免許証、携帯電話、財布など ②身体的特徴 容姿、身長、指紋、歯牙、皮膚色など ③生物学的情報 DNA、血液型、骨など 個人識別に有効な原則①万人不同 同じ形質を持つ人間がいない ②終生(生涯)不変 一生涯変わらない この二つを満たす要素が個人識別には有用 参考)血液型が変わる例 輸血、白血病、感染症など 指紋皮膚隆線 皮膚表面の小稜 汗口があり、生

法医学 歯科所見による個人識別

歯科所見が有用な理由歯牙は人体で最も硬い組織である(モース硬度でエナメル質6~7度、象牙質4~5度) 同じ歯科所見の人間はいない(万人不同) 歯科記録は保存されている・・・日本は特に歯科受診率が世界一といわれている 歯科的個人識別三大資料①デンタルチャート 歯科治療痕や歯牙の有無、特徴所見を所定用紙に記載したもの ②口腔内写真 実際の画像としての記録 ③X線画像 肉眼で観察できない歯根や歯槽骨の状態が確認できる 歯の構成乳歯列:20本 永久歯列:28~32本 永久歯

法医学 血液型

種類 赤血球型抗原:糖鎖→ABO,Lewis        タンパク→Rh,MN 酵素:タンパク→ACP,GPT 白血球:タンパク→HLA 血漿タンパク:タンパク→Gc,Hp 血液型と抗体A型:抗B抗体・・・自然抗体(IgM) B型:抗A抗体・・・自然抗体(IgM) O型:両方 AB型:なし これらには亜型が存在し検査のオモテウラ試験不一致を引き起こすことがある 輸血と血液型ABO式血液型検査 オモテ試験:抗原の有無調べる ウラ試験:抗体の有無調べる 交叉適合試

法医学 内因性急死

内因性急死とは、生前の経過から予測のできない死である 原因疾患は多彩 異状死の中で最も取り扱いが多いが、解剖だけで死因を特定しきるのは難しい 循環器疾患虚血性心疾患 ①冠動脈硬化症・心筋梗塞 虚血性心疾患内では最多 発症後4,5時間経過しないと病巣の証明が難しい ②急性冠症候群 プラークの破綻に伴う血栓形成による心筋虚血性心筋疾患群の総称 ③心筋梗塞の機械的合併 心筋梗塞後3~7日以内に起きる 左心室自由壁破裂→血液が内腔に貯留→心タンポナーデ ④陳旧性心筋梗塞

法医学 異常環境死

凍死(寒冷死)寒冷により体温が低下、血管が収縮、循環不全などにより心不全に陥り死亡すること 低温障害 ①凍瘡:しもやけのこと 0~10度程度 ②凍傷:-5度から組織凍結しだす     Ⅰ度・・・紅斑性凍傷     Ⅱ度・・・水疱性凍傷     Ⅲ度・・・壊死性凍傷 発生要因 ①気候、環境要因:低温環境、風が強い、雨天など ②身体要因:疲労、空腹、睡眠不足など 凍死過程 興奮期 熱産生=熱放散 血管収縮 体温をなんとか維持 虚脱期 熱放散が大幅に上回る 精神・運動能力

法医学 異常環境死~焼死編~

熱傷分類湯傷→熱い液体や蒸気 火炎熱傷→火炎で直接 接触熱傷→高温固体との接触 輻射熱傷→灼熱物体からの輻射熱、日光、光線 化学熱傷→化学物質 熱傷の程度温度の高低、継続期間、作用の方法、個体の抵抗の強弱で決まる Ⅰ度→紅斑性熱傷、表皮熱傷 Ⅱ度→水疱性熱傷、真皮熱傷 Ⅲ度→壊死性熱傷 Ⅳ度→炭化、灰化 熱傷重症度熱傷の範囲 9の法則、Lund&Broederの法則などから算出 熱傷指数 Ⅱ度面積×1/2+Ⅲ度面積 Artzの基準 ①重症 Ⅱ度熱傷30%以上

法医学 周産期障害

母体の障害異常妊娠、異常分娩などは産科学領域なのでここではふれない 妊産婦死亡 妊娠中~産後42日未満の母体死亡 ①妊娠高血圧症候群 ②出血 ③肺塞栓症 新生児死娩出時点で生産か死産だったかで法律上の扱いが異なる 児露出前に殺害→堕胎罪 児露出後に殺害→殺人罪 嬰児殺:分娩中、直後の新生児殺害行為 死産定義 WHO:完全に娩出される前に死亡し、娩出後も呼吸、心拍、臍帯拍動、随意筋の動きなど一切の生活徴候を示さないもの 厚労省:出産後、心拍、随意筋運動、呼吸のい

法医学 溺死・水中死体

溺死の定義気道内に異物である液体を吸引したことによる窒息死 メカニズム窒息:気道内に侵入した液体によりガス交換が阻害され低酸素血症や高CO2血症を引き起こし、呼吸不足になる 電解質異常:液体が肺胞腔から循環系に流入して生じる 経過・症状前駆期:0.5~1分 一回呼吸運動後、呼吸停止 呼吸困難・痙攣期:1~2分 呼吸運動をおこし溺水を吸引 失神期・痙攣期:1~1.5分 意識消失、痙攣 強い呼吸が起こり口腔より泡沫を漏らす 反射消失、瞳孔散大、眼球突出 終末前呼

法医学 窒息

定義生体に不可欠な酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が阻害され、肺呼吸に障害が生じた状態 分類①吸気中の酸素不足:頭に袋をかぶったり ②気道閉塞:異物誤飲など ③頚部圧迫:絞殺など ④呼吸運動障害:中枢神経麻痺など ⑤肺胞ガス交換障害:肺水腫、溺死など 経過と症状第一期:無症状期 第二期:呼吸困難及び痙攣期 第三期:無呼吸期 第四期:終末呼吸期 診断粘膜・漿膜下のいっ血 暗赤色流動性血液:酸素乏しく、プラスミンにより凝固阻害されている 臓器うっ血 頚部圧迫縊頚 頚部に