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VOL.12【売れないクリニック 】 --- どうして「売れない」のだろう?---

最近「売れないから見て欲しい」という声がよくかかるようになってきた。診断に伺う時に、私が「おおまか」に問診するポイントは、以下の6つのポイントだ。

1)流行(トレンド)に乗っているか?
 
2)ユーザーが購入する価値があると判断できるか? 「価格<価値」
 
3)競合より勝っているポイントが明確か?
 
4)競合商品と並べて見劣りしないか?
 
5)商品の長所が瞬時に伝わるデザインになっているか?
 
6)ユーザーが嫌がるポイントを削除し切っているか?

 
ものすごく端的に言うと「この6つのポイント」を全てクリアしていれば 売れない理由がない。ただし、まず「商品」がそうであるか? 次に「その商品を扱う店舗(カタログ)」がそうであるか? 、そして「その商品を販売担当するセールスマン」がそうであるか?
 
つまり「商品で6つ」+「店舗(カタログ)で6つ」+「セールスマンで6つ」=合計「18のポイント」をチェックしていく。この18のポイントが全てクリアしていて「売れない」ということは、ほぼナイといい切って良い。ただし、全てクリアしているところは 少ない。
 
なら、ほとんどないか? というと、そうじゃない。「ほぼ、全てのポイントをクリアしているところ」は「大企業」だろうと「個人経営」だろうと「一人勝ちしている」ということだ。つまり「売れないポイントがないところ」=「売れる」という話になる。
 
1年ほど前に、ある食品メーカーからお呼びがかかり「往診」にうかがった。商品を拝見するなり「競合商品」と並べて、完全に「見劣りする」出来栄えだった。「どうして、競合のように、ズバリこの商品の良さを表現しないのですか?」と質問してみた。
 
すると「競合のメーカーの表現は誇大広告です。当社は、あんな誇大表現はやりません」と、小学校の校長先生の訓話のような「道徳的に正しい答」が返ってきた。確かに正しい。しかし、これでは「戦」には勝てない。ビジネスは「プロスポーツ」と同じだ。
 
法律を破らないというルールの中で「フェイク」や「フェイント」を使ってでも、競合相手に勝つ。そうやって「シェア」を多く獲得しなければ「売る」という「ゲーム」で勝つことは出来ない。ビジネスは、正しい間違いではなく「勝つ負ける」の勝負ごとだ。
 
1年前に問診にうかがって問診した「誇大表現を避けた校長先生の訓話のごとき哲学でできあがった商品」は、今では市場から消えてなくなってしまった。

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半年ほど前に、コロナ禍でテイクアウト販売を始めたが、うまくいかないというローカルな飲食チェーンの知り合いから「なんとかしてやって欲しい」というご紹介をうけ「問診」のお呼びがかかった。私は急遽「往診」に足を運んだ。
 
商品を見ると「なんとも 見すぼらしい 食品スーパーの 惣菜売場に並ぶ、安いお弁当」のような状態のものが、いくつも並んでいた。それなのに料理長は胸をはって「当社のテイクアウト商品のは、どこにも負けません」とおっしゃる。
 
その後で「内部告発者」が、私にそっと次のようなことを教えてくれた。「料理長の話をに受けないでください。じつはテイクアウト商品の中に髪の毛が入っていたり、安そうな商品を高く売っていると言われたりして、私は、その度に謝罪に走り回っているのです」
 
料理長は「悪い情報」は聞き流し、見てみぬフリをして「いい情報」だけを誇らしげに発していたようだった。「売れない診断」は、医者による病人の診断によく似ている。これは「医術の考え方」と同じだ。
 
「病気の状態」から「普通の状態」になる。「普通の状態」になっている人が「元気」になる。「元気」になったら「病気」には、かかりにくくなる。しかし「病気」から、一気に「元気」になることはない。病気ならば、病気から、まず「普通の状態」にする必要がある。
 
「売れない商品」「売れない店舗(カタログ)」「売れないセールスマン」それぞれ「売れない」のであれば、そこに「病気」がある。そして「売れる商品」「売れる店舗(カタログ)」「売れるセールスマン」を全て揃えることが「元気になる=売れるようになる」ということだ。
 
「売れない商品」「売れない店舗(カタログ)」「売れないセールスマン」のどれかが1つでも存在していたら、そこには「病気」があるし、病気があるのなら、病因が必ずある。病気の原因をハッキリさせなければ病気を治すことは絶対にできない。
 
私は、こういうった「商品」「店舗(カタログ)」「セールスマン」の売れない原因を「不買動機」と名付けることにした。不買動機を見つけ、それを改善すれば、業績が改善されることは当然だからだ。
 
しかしながら、これまでの時代「商品」「店舗(カタログ)」「セールスマン」の「病気を治そう」という【発想】は極めて乏しい状態にあった。最も多くの場合に間違ってしまいやすいこと。それは「順番」だ。
 
まず「売れなきゃおかしい商品」を用意する。そして「売れなきゃおかしい店舗(カタログ)」を用意する。この2つを使って「売れるセールスマン」が売れば「売れる」というのが定石だ。ところが、この順番を間違ってしまう人が多い。
 
「売れる商品がない」・・・ ならば、誰が何をしても売れない。「売れる商品はあるが、売れる店舗(カタログ)がない」・・・ ならば、どれほど腕の良いセールスマンがセールスしても売れない
 
この順番を守らず「売れない商品」を「売れる店舗(カタログ)ナシ」で、売ってこない うちの「セールスマン」はダメな人間ばかりだ・・・ などと言い出す「ダメな経営陣」も非常に多いのが現実。まず「売れる商品ありき」なのだ。
 
こんな話をしているが、人間、だれしも病院に行ったりするのは不愉快なものだ。病院が繁盛したりしないのが世のため人のためだと思う。しかし、病人が増えてしまうと、クリニックは、やむなく繁盛してしまうものなのだ。


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