未琴

noteでどういう形で表現していくかまだ考え中。現代アートとポスト構造主義が好きな体幹…

未琴

noteでどういう形で表現していくかまだ考え中。現代アートとポスト構造主義が好きな体幹フェチ。音楽なら古今東西を問いません。

マガジン

  • 未琴の短編集

    どっか批判的でそのくせ弱い人間が大好きなんです。恋愛、SF、ホラー、コメディ、etc。追加していきます。

  • ノーミュージック、ほぼノーライフ

    音楽のある生活というスタンスで、好きな音楽を紹介する、不親切な音楽エッセイ。

  • 連作短編「つづれおり」

    春夏秋冬、里山の四季がゆっくりと心をほぐしていく物語です。完結。

  • 金沢贔屓

    金沢を歩いて見つけたものや、いいなと思った記事をここに。(準備中)ヘッダーの写真は兼六園にて。

最近の記事

夏越しの祓

「なごしのはらえ」 まだまだ色んなことを知らないのだなあ、知りたいなあと思った。 6月30日はちょうど1年の半分の最終日で、いわば上半期の大みそか。夏越しと言うそうで、これ全国にも残る風習だったんですね。 せっかく教えてもらったのに、あー行きそびれてしまったー だがしかし、と気を取り直しダメ元で夜にとある神社に行ってみる。 小雨の中、誰もいない参道に大きな輪っかが宙吊りになったままだ。 わお、壮観。 夏越しの大祓では、この茅の輪をくぐって穢れを祓うのですね。 大きな輪

    • 夏至の日食みたり 0621

      腫れてよかったー 8年前?の方がくっきり見えた気がする。 あの時は朝だったしね。日照角度の違いかな。 丸い穴から三日月状の光が漏れて、それがみんな同じ形してるとこが、かわいい。 素肌に映ると、光の鱗みたいになるよね。 と、説明しなきゃ、きっとなんのこっちゃな写真。

      • シニフィアンという名の本屋

        待ち合わせはいつも本屋だ。 超ローカル線ならいざ知らず、ソコソコの駅なら大抵近くに本屋がある。 待ち合わせを本屋にすることに、経緯はない。どちらかが遅刻しても立ち読みして過ごせるし、暇つぶしに普段縁のないジャンルにも手を伸ばすチャンス。待ち時間が全然苦にならなくて。 今日は今にも店じまいしそうな名も無い小さな書店にて。ハタキ掃除の気配もなく、実に静かなものだ。 そういえばこの間、横書きの小説があると知って驚いた。携帯小説発信か…。 若者向けのタイトルとフォントを手掛かり

        • NY地下鉄トークン

          『GOOD FOR ONE FARE=一回限り有効』 ニューヨークに行こうと思い立ったのは、夏だった。 体温まで奪い尽くしそうなカフェの空調ににぶるっとする。夏でも寒がり。でもノースリーブ着てしまう。肩とか肘に布がまとわりつく感じがあまり好きじゃない。 ガヤガヤした喧騒は好き。 だけど満員電車は嫌い。 昼時でごった返すこのカフェみたいに、ベタベタしない大勢の中で呼吸するのがちょうど合ってる。 「今から会いに行くんだー」 楽しそうなお喋りのひとつが耳に飛び込んできた。他

        夏越しの祓

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        • 未琴の短編集
          9本
        • ノーミュージック、ほぼノーライフ
          8本
        • 連作短編「つづれおり」
          9本
        • 金沢贔屓
          0本

        記事

          6月の祝日

          「今日は特別な日だ。休めって言ったろ。早く家に帰ってあげなさい」 課長は有り得ないほど優しく肩をたたき、休日出勤した私を門前払いにした。山積みの仕事はすぐそこだというのに、だ。 「新婚さんなんだから」 だから出社してきたのよ、お察ししろ。しかも何、エロい目でその歯の浮くような台詞。 改めて今日という日にゾッとした。 「じゃあ、失礼します。課長も良い休暇を」 「僕? 僕はもう、ほらアレだから。アレはもう。あはは」 新たな祝日6月1日くそくらえ! 国家ぐるみのハラスメン

          6月の祝日

          地球は青い水槽だっ

          一一2年8組。5時間目、数学II。 私たちは予測可能なことに囲まれて、安心しきって生きている。 一一教科担当笠井先生。 曖昧さから子どもを守るために必要なことだって、大人は言う。 でもほんとはどうだか分からない。 「鈴木ヒカリ、黒板の三角関数を前に来て解いて」 一一外は晴れ。 窓の外の真っ青な空を見つめていたせいで瞳孔がすっかり萎んでしまった。 教室は一層暗く、黒板は闇を吸い込むブラックホールだ。 シーンと静まる教室に、チョークの音だけがカツンカツンと響く。 や

          地球は青い水槽だっ

          ジェンダー フロム バークレー

          バークレーと聞いて、ボストンのバークレー音楽院を想像したのだけど、どうやら違うみたい。カリフォルニアのバークレーの出来事。 そこではトランスジェンダーに配慮して、性別を含む単語をNGワードにしちゃおうってアイデアが市議会で可決されたらしくて。 へえ、そうなんだ。 自治体単位で先陣を切るあたりが、意識高い系の西海岸って感じ。 しかし現実的にはスポーツマンとかマンパワーとか、マンもウーマンも慣用句レベルで浸透しちゃってる。メンインブラックは無事なのかしら? と目に飛びこんで

          ジェンダー フロム バークレー

          つづれおり・後日談「ある目映いばかりの陽射しの日に」

          「わざわざいいのに」 「お祝いに来てもらっといて、まともな挨拶も出来ないの? 呆れた。あんたの息子の方がよっぽどしっかりしてる」 口の悪い友人が、やって来た。 わざわざ熨斗なんてつけて、むしろ嫌味に感じる。 「ゆうくん、ちゃんと仕事してる?」 「へえ、心配? だったら会えばいいじゃない?」 偶然にもゆうくんは友人の会社に就職したと聞いた。こっそり見える形で縁が繋がって、本当はすごく嬉しかったのだ。でも友人はこの調子で私に感謝も感激も言わせないのだから全く困る。 「元気

          つづれおり・後日談「ある目映いばかりの陽射しの日に」

          つづれおり・後日談「ある小春日和の日に」

          「ゆっき、チョコもらった? オレ3個」 部屋に来てまで自慢しやがってバーカ、小学生のガキがどうせ義理だろ? 甘やかされて甘い物大好きな弟なんて、チョコ食べ過ぎて虫歯になっちまえ。 と、弟からぶんどったチョコを頬張りながらチェックしているマイピクチャーは、オレ様専用プライベート画像。 まだいたのか、お前は見るな。あっち行け。 父はオレが生まれた頃の写真を実はデータに残していた。悠久に佇む自然を背景にして、赤ん坊のオレは画面の向こう側に確かに生きていた。 父は警察官だ。度

          つづれおり・後日談「ある小春日和の日に」

          つづれおり・後日談「ある晴れた爽やかな日に」

          現代文の授業中だ。教科書には中村草田男の俳句。 こんな欠伸の一つも入れたくなる長閑な季節に、オレの歯は生え始めたんだってな。 先生の上っ面で耳触りのいい解釈を聞き流し、教室のガラス窓の向こうを見遣った。 確かにあそこの小さな公園もこんもりと緑が生い茂るが、 山の中、周囲を鬱蒼と木々に取り囲まれどこにも逃げ場のない田舎……あの日木室さんが語ってくれた情景を、オレは頭に描いた。 記憶の無いページにまた一つ、上書きしとくよ。 「万緑の中や吾子の歯生え初むる」

          つづれおり・後日談「ある晴れた爽やかな日に」

          『Rabbit In Your Headlights』トンネルを歩くホモ・サケル(聖なる人)

          トンネルの中を黙々と歩く一人の男がいる。彼は何かを呟いている。異国の言葉のようでもあり、祈りの一節のようでもあり。ただ男が少しヤバい人間であるには違いない。 トンネル内は車が行き交う。やがて後方から走ってきた一台の車が彼と激突した。 まあその後何度も何度も何度も何度も車に轢かれては立ち上がる男に対して、観ているこっちも痛みが薄れ、滑稽にすら思えてくるのが、作り手の仕掛けなんだろう。 正直初めてこの映像を観たとき、何この男、最強っと笑っていた。 男にしてみれば、轢かれる前の数

          『Rabbit In Your Headlights』トンネルを歩くホモ・サケル(聖なる人)

          6・終章「思春期おやしらず」

          バシュッ、ズドオオオン、ゴッ、ズズズズズズ… 「今日こそ歯医者に行きなさい!」 母さんがまた怒鳴ってる。うっせーな。 読書の秋だろ、オレは同じ14才の主人公が初号機でリフトオフするノイズで小言を掻き消す。 「また漫画? 勉強してないんでしょ!」 なんでそう決めつけんだよ。やる気を上げる為のマンガだぞ。 半年前の歯科健診で「う歯ありまーす」ってフザけたプリントをもらったせいか? そんな不名誉持ってどこに行けるか。プライドってもんがあんだよ、ボケ。 てかさ。正直歯医者っ

          6・終章「思春期おやしらず」

          5・秋「下弦の月、出づるところ」

          「すみません! メールで今送りました!」 「……あー、来ました来ました。良かったです、今回こそ休載かと心配しました」 この頃は、半月に1度の雑誌連載のお仕事も頂けるようになった。 担当の石井さんから電話で催促。この方はメールだけでなく電話でフォローしてくれるので、すごく安心して仕事ができる。 「……ざっくり確認できました。どうもありがとうございます。 さて別件。実はね、木室さん。あなたと直接連絡取りたいって言う人がいて。 1回は悪いけどこっちの判断で門前払いしちゃったんだ

          5・秋「下弦の月、出づるところ」

          4・夏「川天狗のレガシィ」

          それは陰惨な事件と言う他無かったよ。 不具ある者が、人里離れた山奥に生涯閉じ込められる……今さら珍しくもない。元より彼らの存在は無かったものと扱われ、ムラとは隔離されてきたのだから。 なのに檻の中で生かし続けるのは何故? 「生きる価値」とは? 草木が眠る刻、雄叫びが山々に木霊する。 ウォォー… ウォォー… これを妖怪の仕業と片付けてしまうとは愚か者。忘れられた命の価値を乞いもがく声を聞け。 青年は「生きる価値の無いお前らは皆死ね」と狂喜し、檻の住人を次々刺し殺し

          4・夏「川天狗のレガシィ」

          『逃避行』後編 降服の白いマスク

          そしてジョニミッチェルのHejira(逃避行)を最後まで意訳するに至った私は、改めて昼休みの屋上で白いマスクを外した。…… 「希望はある。だけど同時に希望はない。 今の私にはすべてがそんな風に思えてしまう。 大きな移ろいの中の、ほんの一部の出来事しか見てないって、そのくらいは分かってる、でも 太陽の周りを回ってると言ったって、 どうすればそんな壮大な視点に立てるのよ。 いつも誰かに縛られているのに、どうやって? 暖炉から立ち上る煙は、白い旗なんだわ。 愛に縛られた人々が、

          『逃避行』後編 降服の白いマスク

          『逃避行』前編

          テレワーク解除されて出社1週間が過ぎ。 とはいえまだまだ「密です」を避けよとの指示。 ひと気のない屋上でサンドイッチをひとり頬張っていると、後ろから「ピクニック気分かよ」と声がした。 そこで「いえいえHejira(逃避行)です」と答えたら、きっと現実逃避だと思われただろう。 さて天気の良い初夏の休日だ。ジョニミッチェルを聴こう。オープンチューニングのギター音がこんな日によく似合う。聴いてるアルバムはHejira。邦題が逃避行。 この逃避行とは、現実逃避とか夜逃げとかの個人レ

          『逃避行』前編