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大臺 序乃壱

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此のお話は日本が嫌いな日本人へ…。  日本を愚かと思う日本人へ…。  日本が貧しい国であったと思う日本人へ…。  日本人として誇りを持てぬ日本人へ届ける物語。  此れは我等が…
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#時代小説

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 21

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 21

王后が五瀨の国を出て三日が過ぎた頃、巡回中の船が大きな葦船を発見した。此の大きな葦船は八重国に攻め入る様な素振りは見せていなかったが直ぐに五瀨に報告された。此の報告を受け五瀨は警戒を強めた。何せ、元正妻の事があって直ぐの事なのだから当然である。否、其れを見越して船を出していたのだ。
 王后が何も言わず帰ってから五瀨はずっと考えていた。だが、如何にも答えを見出せない。だから、念の為にと巡回させていた

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 20

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 20

 一月が経ち…。三人は何とかア国に帰って来た。ア国に戻った三人を見やり国中の人々は騒ついた。
 国中の人々が騒つくの当然である。出立の時は王后、将軍含め百五十二人いた人が三人しか帰って来ていないのだ。これが戦ならまだしま、王后は娘に会いに行っただけである。しかも其処には王后も将軍もおらず、居るのはただの兵士と侍女である。如何に旅が困難であっても此れは無い。だから、此れはただ事でない事は容易に想像出

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 19

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 19

ソソクサと国を出た王后一行は山に入る前に日が沈んだので平地で一夜を過ごした。王后は日の出より少し前に目を覚まし五瀨の国の方角を見やっていた。五瀨が使いを送って来るだろうと思っていたからだ。だが、其の当ては外れた。
「王后…。もぅ起きておられたので。」
 宇豆毘古(うずびこ)が言った。先に言っておくのだが宇豆毘古(うずびこ)は変えの服を持って来ていたので既に其れを着ている。
「ええ…。」
 と、答え

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 18

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 18

 王后達が住居でナンジャラホイな最中、番兵達は矢張り自分達の事を必死に考えていた。中で何が起こっているのか ? 番兵達は勿論知らない。だから、異様な雰囲気を漂わせ戻って来る王后達を見やっても何も感じとる事は出来なかった。
 侍女達が先に柵の外に出て其の内数人の侍女が百人の兵を呼びに行った。王后は其の後に宇豆毘古(うずびこ)は布に包まれた正妻を担ぎ最後に柵から出ると番兵達を睨め付けた。ビクッと体を震

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 17

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 17

王后が国を出立して十日が過ぎようとした頃。正妻は見事な肉の塊となっていた。眞奈瑛と樹莉奈は毎日ルンルンでやっていたのでツイツイやりすぎてしまったのだ。本来ならもう少し時間を掛けて肉の塊にするのだが、既に正妻の首から下の皮は全て剥がされ、四股は綺麗に無くなっていた。二人が首から上の皮を剥がさなかったのは其れが誰かを分からせる為である。
 だから、其れからの毎日は死なない様に薬草を塗りたくるだけの日々

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 12

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 12

 正妻から新たな提案を受けた五瀨は難色を示していた。其れには幾つかの理由がある。其のもっとも大きな部分は正妻が国の人々に好かれていない事だ。好かれていないと言えばまだ聞こえは良い。実際は驚くほどに嫌われている。其処にこの様な政策を盛り込めば収集がつかなくなる事は明らかである。
「確かに素晴らしい案だ。だが、人は納得しないだろう。既に人は奴婢ありきの生活になれているのだ。此れでは人から奴婢を取り上げ

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走8

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走8

 何とも言えぬ温くベットリとした感触が顔を撫でる。葉流絵は何度か払い除けるが其れはペロペロとひつこく顔を舐めて来る。
「誰じゃ…其方は ?」
 と、葉流絵は意識を取り戻した。そして顔を舐める獣を見やり死んだ振りをした。

 ヤバイ…。
 熊じゃか。

 と、ドキドキし乍葉流絵は必死に死んだ振りをした。熊は葉流絵が死んだ振りをしたので横で気を失っている樹沙桂の顔をペロペロと舐め始めた。樹沙桂も意識を

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走7

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走7

「大神…。」
 気長足姫(おきながたらしひめ)が呼んだ。若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)はビクッと体を震わせ気長足姫(おきながたらしひめ)を見やった。
「王后。王太子は如何した ?」
「婆やが見ておる。其れより大門が破られよる。」
「大門が ?」
「亜樹緒の銅鐸が其れを告げておる。」
「分かった。なら、直ぐに向かおう。」
「じゃが、気をつけねばいけん。既に都は取り囲まれておる。」

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走6

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走6

  亜樹緒はイライラしていた。理由は偵察に行った別子(べつこ)の娘達が戻って来ないからである。”我等は秘密の道を通りよるから二日もあれば行って帰ってこれよる。”と、豪語していたにも関わらず二日目の朝を迎えても帰って来ない。”我等に何か有れば鳩を飛ばしよる”とも言っていたが実際鳩を飛ばされてもどの様に解釈すれば良いのかが分からない。正子(せいこ)の娘は鳩を使わないからだ。だが、其の鳩が飛んで来る様子

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走5

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走5

 厳しい冬が終わりを迎え、春を迎える準備が始まる。心地よい日差しに心を撫でる風が体を癒やしてくれる。何とも自然とは偉大であり、素直であり、唯一の現実であると若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は思う。
 本来なら春の訪れを皆で祝うのだが、残念な事に此の二年はお預けのままである。来年は祝えるのか ? 不安は消えない。
 不安だから必死にもがき争う。

 だが、もう少し…

 もう少し…

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6 敗走4

大壹神楽闇夜 1章 倭 6 敗走4

 殺しても…
 どれだけ殺しても敵の数は減らない。
 寧ろ増えて行っている様に思えた。だが、其れはそう感じているのでは無く実際そうなのだ。未だ城壁の外からは多くの兵士がゾクゾクと城壁を越え侵入して来ている。もしもこれが餓死寸前の状態では無く万全の状態であったのなら神楽達は既に全滅していた事は確かである。
 だが、本来の力を発揮出来ない倭兵秦兵は今の八重軍にとっては恐るに足らぬ存在でしかない。其れで

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大壹神楽闇夜 1章倭 5決戦5

大壹神楽闇夜 1章倭 5決戦5

 翌朝、若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は伊都瀬(いとせ)や神(みかみ)達を集め朝廷を開いた。其の席には別子(べつこ)の長である都馬狸(とばり)と三佳貞(みかさ)の姿もあった。
 夜麻芽(やまめ)は各地に散らばっている夜三子(よみこ)と卑国にいる都馬狸(とばり)に伝言を送っていたのだ。伝言を受け取った都馬狸(とばり)や夜三子(よみこ)達は出来る限りの娘達を集め迂駕耶(うがや)に向かっ

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦4

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦4

 崖を登った倭軍は身を潜め砦を見やる。城壁に立つ八重兵に娘…。中には兵士がウジャウジャとたまっているのが確認出来た。だが、其れよりも多くの兵が砦の逆にあたる門外に陣を張っている。其の数は非常に多く…。数万はいると思えた。
 対する倭軍は両サイドを合わせても四千程である。浜にいる兵を合わせても既に一万弱であろう…。否、無駄にファイトして来る八重兵は厄介である。下手をすれば一万を切っている可能性もあっ

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦3

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦3

 戦場には多くの死体が転がっていた。其の多くは八重兵と娘達である。本来なら其れ以外の死体があってはならなかった。だが、戦場には倭兵の死体も数多く転がっている。高天原(たかまのはら)での戦は言わばゲリラ戦であった。不意をつかれ、罠に掛かり少なからずの倭兵を失った。此の損失は策によるものである。だが、此の戦は違う。ガチンコの殺し合いである。
 なら…。
 倭人が殺される可能性はゼロであっても不思議では

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