カニさん、ハワイに行く

ハワイに来た。飛行機ではまったく眠れなかったので、ホテルまでのタクシーでは、とても眠たくなった。
初日のスケジュールは、まず11時頃にホテルでチェックインを済ませる。水着に着替え、2時半からシュノーケリングに向かい、5時頃に終了。6時45分にイリュージョンショーを見物する。8時半に夕食を取って終わりだ。忙しい。

シュノーケリングは、ガイドの人が車で迎えに来た。名前はユウタ。フレンドリーというか、馴れ馴れしい日本人であった。この人の馴れ馴れしさは、日本人同士でのコミュニケーションとしては許容し難いものであった。しかし、姉のウミはテレビのインタビューを受けるアホ女のようで、非常にイキイキとしていた。今までに見たウミの姿の中で、一番イキイキしていた。アンタ、ユウタにホの字だね!?

このシュノーケリング大会は、我らがカニ家一同の他に、何組もの外人さんグループが参加していた。どの方を見ても、日本ではなかなかお目にかかれない体の持ち主ばかりであった。食文化の違いがそうさせたのだろうか。そして、ほぼ全員が刺青を入れていた。そういうファッションができるということは、すばらしいことだと思う。
さて、肝心のシュノーケリングであるが、これはとても楽しかった。たくさんのキレイな魚が間近に泳いでいたし、ウミガメが3頭もいた。船の人が投げたと思われるパンを、私が間近で見ているにもかかわらず必死で食らいつく魚たちの姿は、おもしろかった。もっとおもしろかったのが、ウミガメである。ウミガメはたまに息継ぎをするために海面から顔を出すのだが、私は何度もその様子を、ウミガメの真横で見ることができた。もう、本当の本当に真横である。しかも、かなりの時間をウミガメと並んで泳ぐことができたのだ。正直、ここまで期待していなかった。
と、ここまでは良かったのだが、途中でめちゃくちゃ気持ち悪く、寒くなってきた。それでも私はここが勝負時だと見て、根性で制限時間ギリギリまでシュノーケリングし続けたのである。海から上がったらすぐ回復するだろうと考えたのだ。
しかしながら、海から上がったら、泳いでいたときより爆裂に気持ち悪く、寒くなった。今まで私が経験した寒さランキング1位かもしれない。気持ち悪さランキングは、吐くときが最高潮なので作れませんでした。悪しからず。
海から上がってからしばらくは、寒さが気持ち悪さを上書きするほどの脅威だったため、さほど気持ち悪くはなかった。ところが、寒さがピークを過ぎると、今度は強烈な吐き気に襲われた。

「出ちゃう!出ちゃうよ~!!」

ブピピピッ

おや?おしりのようすが…!

デンデンデンデン…♪と、私はポケモンが進化するときのBGMを頭に思い浮かべながら、おそるおそるおしりの様子を確認した。

テーテーテー、テレレテッテレー♪

おめでとう!おしりはキレイなままだった!!

…何が起きたのかを記さなければならない。これは、ただの屁だったわけではない。そんなことだったら、わざわざ日記に綴る必要がない(たいがいしょうもないけど)。この事件の真相にたどり着くための手がかりは、シュノーケリング中の出来事にある。私が機嫌良くシュノーケリングをしていると、あろうことか父が私の肛門に指を挿入してきたのだ。そう、カンチョーである。「痛いっ」とかではなく、「挿入された!!」と感じた。くやしい。このカンチョーによって、私の肛門には父の指が挿入されただけではなく、海水が注入されたのだ。その海水が、海から上がって吐きそうになっているときに、ブピピピッと排出されたというわけである。カンチョーされて屈辱を味わっただけではなく、ウンチをもらしたのではないかと錯覚させられたのだ。一度で二度マズい思いをさせられた。
ひどく心配したが、このような推理をしながら安堵したおかげで、少し吐き気が紛らわされた。それでもカンチョーしてくれてありがとうなどとは、私は絶対に言わない。ハワイでみんなが笑顔でツアーを楽しんでいる中、ランキング1位の寒さに凍えながら、ウンチをもらした上に、吐くという状況を想像してみてほしい。もしこれが実現したならば、私は悪魔に魂を売って父に制裁を加える。実際は、吐かず・もらさず・凍え死なずという観光旅行三原則を守って船を降りることができた。

このあとはマジック・オブ・ポリネシアというイリュージョンを見に行ってカニなんちゃらという料理を食べて1日を終えた。とにかく慌ただしかった。

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