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「コンプライアンス」部署とは

コンプライアンスとは、「(要求・命令などに)応じること、応諾、追従、人の願いなどをすぐ受けいれること、迎合性、人のよさ、親切」という意味である。「法令遵守」なんて言葉では全く無い。
また、ビジネスにおけるコンプライアンス(ビジネスコンプライアンス)は、一応「regulatory compliance」を訳す方が正確だそうで、そうであった場合でも「規制追従」であり、こちらもまた「法令遵守」ではない。

そんな日本語としては曖昧な「コンプライアンス」を担う部署の目的について考える。(以後、「コンプライアンス」を「規則遵守」だとして一応扱う。楽なので。「規則」には様々な意味があることは留意している。)

「コンプライアンス」を担う部署の目的

そもそも「規則を守るのは当然である」という考えに則るのであれば、「規則遵守」など指導する必要はない。
しかし、規則を守れ/らない者もいる。そのリスクマネジメントが「コンプライアンス」の意味、つまり「規則を守れ/らない者とその者が起こしうる事象(=リスク)に対してのマネジメント」こそが、コンプライアンス部署の仕事である。

まず、これを理解していないコンプライアンス部署が多い。

下記しか実行していないコンプライアンス部署ばかりではないだろうか。
・規則を伝えること
・規則を破った事例を伝えること

確かに、これを伝えることによって、聞いた側の判断が改まることもあり、マネジメントの一部ではある。
しかし、一番大事なのは、実行させることである。それがマネジメントの本質である。


大企業で多くありがちではあるが、部署の仕事として何かを伝えれば、仕事が完了していると思うものも多いと思うが、マネジメントの本質はそこではない。実行させるまでがマネジメントだ。

そうなった時、コンプライアンス部署では何をするべきか。
最近多くの会社で「コンプライアンス」として挙がっているであろう、具体例2例で考えてみる。

・ SNSでの発信による炎上を避けるためのマネジメント
・ LINEの利用を控えさせるマネジメント(情報管理の観点から)

・ SNSでの発信による炎上を避けるためのマネジメント

 まず一番多くありがちなのか「発信をするな」と言うことである。マネジメントとして最悪である。
 そもそも権利を害していること。
 加えて、マネジメントになっていないからである。
 SNSでの発信には様々なモチベーションがあり、個々人の中で、その発信のモチベーションの大きさが、炎上が起こるリスクの大きさ(これは既に指導されていたとしても。)を上回ることが往々にしてあり、世の中の SNS の炎上の大半の原因がここにあると思われる。そうなった時に、 伝えることだけではマネジメントとして不十分である。
 倫理観を養うしかない。

・ LINE(などメッセージ関連アプリ・サービス)の利用を控えさせるマネジメント(情報管理の観点から)

 この場合の多くも「 LINE を使うな」ということしかしていないコンプライアンス部署も多い。

 明らかに使用してはならない業界があるのは理解している。
 しかし、今や、メールよりも電話よりも普及しているのが LINE であり、そのコミュニケーションなしに 日本社会の通常のコミュニケーションが成り立たない。
 そうなった時に、 最も優れたマネジメントをするのであれば、 LINE 以上に使いやすいツールを提供することが、適切である。しかし、そんなことが難しかった場合(ほとんどの場合が難しいだろう)、どのように LINE を使わないでもらうか、適切なマネジメントを検討するのが仕事である。(思考停止して「禁止する」ことを伝えるのが仕事ではない)
 「会社におけるリスクを説明する」(しかし正直 LINE の便利さはそのリスクをも上回る)、「大体の方法を検討すること」( LINE であればビジネス契約もある)、「劣化版代替ツールで妥協してもらう」(ちゃんと申し訳なく伝えること)…



 二つの例を見てもらったが、ともに 会社の仕事のマネジメントについてまともに考えていないことに起因する「思考停止」が、まともなコンプライアンス指導につながっていないように思える。

 そうなるともはや、コンプライアンスの話ではなく、会社のガバナンス・マネジメントの問題が大きくなってくる。

ただしかし、企業のコンプライアンス部署はその会社の最も重要な位置にいると認識し直し(左遷部署である可能性も高いが)、会社全体のマネジメントを変えるくらいの心意気でコンプライアンスを指導するべきだと考えている。
(それもできないで、コンプライアンス指導してるんじゃねぇ。)

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