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草笛双伍 捕り物控え一

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時は江戸。火付け盗賊改め方、鬼平こと長谷川平蔵のもと、2本の長大な十手を手に、元<風魔忍者>の岡っ引き、草笛双伍が活躍する、勧善懲悪痛快アクション時代小説です。
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#ドラマ

草笛双伍 捕り物控え一 鬼平暗殺3

草笛双伍 捕り物控え一 鬼平暗殺3

清水門外の役宅が見えてきた。天空には三日月が昇っている。

そのわずかな月光の中、双伍は地に降りた。

なぜなら、清水門外の役宅に通じる道は、民家からは遠く離れている。

双伍は物音も立てず、闇に溶け込んで走った。

清水門外の役宅の壁は、10尺を優に超えていた。

だが、<風魔>の双伍にとって、なんら傷害ではなかった。

壁を蹴るように、駆け上がる。そのまま敷地内に着地した。

そこは屋敷という

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草笛双伍 捕り物控え一 鬼平暗殺4

草笛双伍 捕り物控え一 鬼平暗殺4

「さっさと 斬れ」

双伍は返事の変わりに、そう答えた。

しかし沈黙が流れるだけだ。

双伍は顔を上げると、驚いたことに

長谷川平蔵は刀を鞘に収め、布団の上にあぐらをかいている。

「久栄、行灯に灯りを点してくれ」

のんびりした口調で言う。

奥の部屋から久栄が出てきて、行灯を点した。

ほんのりと暖かい灯りが座敷を照らした。

「忍びが名を名乗れないことぐらい知っている。

 その上であえ

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草笛双伍 捕り物控え一 鬼平暗殺5

草笛双伍 捕り物控え一 鬼平暗殺5

長谷川平蔵は八丁堀の官舎に常駐している

与力同心はもとより、非番の者も緊急招集して、

三ノ輪の廃屋へと向かった。総勢20余名。

同行する双伍を見て、怪訝な顔をしている者も

いたが、長谷川平蔵は、「ただの新入りだ」とだけ

答えた。

一刻ほどしてたどり着いた三の輪の廃屋は、

今にも崩れそうな様相だった。柱は曲がり、屋根は歪んでいる。

長谷川平蔵以下、部下たちは一気に屋敷になだれ込んだ。

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草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来1

草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来1

江戸城の東にある人形町は、火炎に包まれていた。

紙物問屋、備前屋が火元と見られた。

備前屋の周囲、八棟の屋敷が町火消したちによって、

取り壊されている。

備前屋の周りには、おびただしい数の人だかりができ、

町火消したちの怒号が鳴り響いた。

周囲の八棟の中で焼け出され、生き残った者は

全身煤だらけで、地面にへたり込み、

汗と涙で人相さえも判別できない。

それでもなお、備前屋は黒煙を

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草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来2

草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来2

「何?<風魔>の仕業だと?」

清水門外の役宅の裏戸の縁側。

そこには長谷川平蔵と双伍の姿しかない。

長谷川平蔵は双伍の言葉に驚いて、キセルを口から離した。

「その見立ての根拠は何なんだ?双伍」

「へい、それは殺された仏につけられた傷でござんす」

「あの、<几>という傷のことだな?」

「あの<几>という文字は、<風魔>の紋なんでさぁ」

そこで平蔵は思案深げに、双伍に訊いた

「すると

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草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来3

草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来3

3日後の夜、丑三つを過ぎた頃、

火付盗賊改方の与力同心の詰める官舎の

程近く、日本橋にある反物問屋、大越屋から火が出た。

半鐘が打ち鳴られ、闇夜をその轟音が引き裂いた。

町火消しが総動員されて、火消しに当たる。

町見回りをしていた、明智左門筆頭与力、

佐々木音蔵同心、川田一郎同心らも駆けつける。

だが同心たちには、火がおさまらぬ限り、

何も出来ない。ただ、燃え盛る大越屋を

見上げ

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草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来4

草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来4

八丁堀の与力同心の官舎には、

20名ほどの与力同心が集められていた。

勿論、長谷川平蔵の姿もある。

その左腕には血に滲んだ包帯が巻かれている。

表戸の土間には、双伍の姿もあった。

だが、与力同心の面々は、それも沈痛な面持ちを浮かべていた。

それもそのはず、どんな大盗賊も怖れる

火付盗賊改方の官舎が襲われたのだ。

それも下っ引きは皆殺し、そして駿河右京同心は

重傷を負い、町医玄田元

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草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来5

草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来5

数日後、丑の刻を越えた頃、江戸の町にいくつもの炎が上がった。

山下御門の近く、金物問屋伊勢屋、江戸橋の油問屋大貫屋、そして

深川の米問屋五穀屋。

一夜にして火付けされたのだ。

八丁堀の与力同心たちは、方々に散って事に当たった。

町火消しだけでは手に負えなく、大名火消しまで駆り出された。

その上、恐るべきことが起きた。

現場に赴いた火消し達に<風魔>の忍びが襲い掛かったのだ。

各所に

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草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来6

草笛双伍 捕り物控え一 風魔襲来6

突進してくる双伍をかわし、幻也は飛んだ。

腰の太刀を抜いて、空から斬りつける。

幻也の太刀は、江戸の大火の炎の光を浴びて

黄金色にきらめいた。

双伍は幻也の太刀を、十手で弾いたが、その威力に腕が痺れる。

背後に回った幻也は、砂塵を撒きながら

間髪を入れずに斬りつけてくる。凄まじい連撃だ。

さすがの双伍も防戦に、引くしかなかった。

幻也の姿が視界から消える。

砂を巻き上げて、さらに

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草笛双伍 捕り物控え一 余談

草笛双伍 捕り物控え一 余談

<天魔衆>は各地に散らばり、盗賊として

暴れていると、長谷川平蔵以下、与力同心は

風の噂できいた。勿論、双伍の耳にも入っている。

妖刀<鬼神丸>で辻斬りに身を落とした

加藤祥三郎は双伍の十手で、両手首を砕かれ、

二度と刀の持てない体になった。

その上、加藤家は、次男の罪により、

当分の間は江戸城への立ち入りを禁じられた。

仇討ちで両親を亡くしたお紺は、

大店である反物問屋、方月屋

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