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with コロナと海外旅行 〜机上の空論〜

 誰もが予想していなかった新型コロナウイルスにより未曾有の打撃を受け個人の日常生活にも影響が出ているのは言うまでもない話。第一波のピークは各地で過ぎたものの、いまだ終息の目処は立たず、ニューノーマルという新しい生活様式に戸惑いを隠せないまま予断を許さない日常を過ごしている人がほとんどではないだろうか。
 今回は、そんな”with コロナ”と一部変容していくとされる我々日本人の海外旅行の今後について超個人的見解から考察していきたい。
*〜机上の空論〜とあるように私の願望や興味を込めて書いているので温かい目で読んでいただければと思います。

ベスオブザ海外旅行イヤー

 2019年、日本での海外旅行マーケットは過去最高のパフォーマンスを見せていた。ここ数年、日本の観光はインバウンドが破竹の勢いで成長を遂げており、その下火になっていたアウトバウンドではあるが2019年は政府も目標に掲げていた2000万人を突破したのは記憶に新しい。
 しかしながら、コロナウイルスが猛威を奮い始めた今年の2月以降はその勢いが止まった。各国の出入国制限、それ伴う航空便の運休が相次いだ。緊急事態宣言発令により、国民の不要不急の外出自粛、レストラン等人々が集まるお店を中心に営業規制が敷かれ海外旅行どころか普段の外出もできない状況になった。2020年6月現在、全国での緊急事態宣言の解除されたものの先が見えないトンネルを進むように、少しづつコロナ前の日常を取り戻そうとしている段階だ。そして、緩和と自粛を繰り返しながら人々は慣れていくことを知るのだろう。

ビフォーコロナと海外旅行

これまでの海外旅行トレンドを振り返ることにする。ここ数年、日本人に人気な渡航先ランキングの上位はアメリカ(ハワイ含む)、韓国、中国、台湾、タイの5カ国でほぼ不動である。法務省(JATA: 日本旅行業協会)が出している出国者データを見るとZ世代の出国率は特に目がつく。
ここ数年の出国者数の増加の背景には、気軽に海外へ旅行しやすくなりより身近なものとなった事とネットSNSなどITサービス環境が改善された事があげられる。
 日本各地の空港施設の拡充新規LCC便就航の相次ぐ増加で各国へのアクセスが向上されたことに加え、供給拡大による価格減少など、交通インフラ的要因は大きい。政治的な関係により大きく左右される事があるのは否めないが、韓国や台湾などは特に若い女性から人気は絶大で、近い、安い、うまい、映えの4秒子が揃うデスティネーションと言えるし、サブカルチャーも含めた上手な打ち出し方は多くのファンを虜にしてきた。
 IT環境では、スマートフォンのSIMフリー化により、現地のSIMカードを入れるだけで通信が可能になり、GoogleマップやUber、grab taxiなどのタクシー配車アプリ、通訳翻訳アプリなど今まで現地を旅行する上で不安要素とされていたものが一気に改善された。もちろん、インスタグラムを始めとするSNSへのアクセスも気軽になり現地の人気観光地やお店などをインスタで探したりリアルタイムにその様子を投稿できるようになった。SNSの利用は若い世代を中心に発信・シェアするものからタグ付、リスト化するツールにまでその領域を広げており、SNSで情報収集している人も少なくない。日頃から多くの人々の間で不可欠なツールとも言える。特に、Z世代Y世代はまさにデジタルツール活用世代なので、これを使わない手はない。日本国内でも2019年10月以降の増税で経済産業省が進めたキャッシュレス政策も、少なからず多くの日本人にデジタル化の意識を高めたと信じたい。

これからどうなる海外旅行

 今後withコロナと共に消費者にもたらされる心理的変化と海外旅行トレンドはどのようになるのだろうか。海外旅行ファンの多くはコロナがいち早く収束し、コロナ以前の "通常通りの海外旅行”を切望しているに違いない。もちろん、各国での状況が安定した後に政府が渡航勧告を解除し、航空インフラが戻り始めると、ある一定層は割と早い段階で海外旅行に出かけると予想される。海外渡航は、段階的にビジネス渡航から留学レジャーの順で回復していくと予想されている。しかし、今後の状況にもよるが2019年レベルの規模まで回復するには数年かかるだろう。それくらい今回の打撃は大きく、これまでに我々が経験した様々な経済危機や感染症などからの回復時期を見てもわかるだろう。
 では、それまでの間に我々日本人にどのような変化が訪れるのか。経済への打撃や国外への不安が左右し、海外旅行を控える人の多くは当面の間、国内旅行へシフトされるだろう。日本政府としても国内旅行を推奨するキャンペーンを用意しており、国内での移動が自由になることがまず最初に見られる大きな動きになると予想される。その後、海外旅行が特に近距離の国々から徐々に回復していくと考えられる。

なんとなく旅行者の存在

 目を引く変化としてこれまで何となく海外旅行が好きだった層に大きく影響が出ると私は考えている。なんとなくで海外旅行するのかと疑問があるかもしれないが、それが可能な環境がもうすでに整っている。海外旅行=お金がかかるというイメージは一昔のことで、今や国内旅行をするよりも安く済むケースも少なくないのは周知の事実。国内より安いし、休みと余裕さえあれば海外に行った方が得と思う人もいるのでは。実は、なんとなく消費という行動はマーケティングにおいて購買を支えている大きなレイヤーでもある。*Googleは人が直感で消費行動に出ることをパルス型消費行動と提唱しているが、海外旅行への消費はこれとは若干本質的に異なると考えているため、今回は詳しく触れない。
 なんとなくな人たちの海外旅行に対する考え方はどう変わっていくのか。答えは、明確な理由がないと海外旅行には行かないということだ。経済的・治安的・公衆衛生的な側面が完全に回復しないwithコロナ期は、なんとなく海外旅行層へは響かないし、明確な理由なしに行かなくてもいいという判断をされる。 なんとなく層のほとんどが “行ってもいい”だったのが “今は行かない”というステータスに成り下がるのだ。一度、降格した意識や考え方はなかなか昇格しない。

従来のPRだけでは限界?

 これまで旅行業界は日本人マーケットに対して “女子旅”や “フォトジェニック”などどれも似たコンテンツマーケティングを活用しながらPRをしてきた。時代に乗っ取り、一定の層にはかなり効果的だったと思う。しかし、それも今後飽和していくのではないかと思う。当たり前化し過ぎたからだ。多くの国が実践してきたSNSウェブを活用したマーケティング手法もコモディティ化しすぎた側面は否定しきれない。ヨーロッパでの動きをみるとわかるように、ある種の締め出し(特にGoogleなどプラットフォーム企業に対して)を実行しており、日本政府も今後は個人情報保護法をさらに強化していく動きがみられる。それはSNSウェブに対する人々の考え方そのものに変化をもたらし利用者に影響を与え、これまで以上に人々の目が肥える状況を作りうるのではないか。もちろん今に始まったことではないが、目が肥えた消費者には、意思決定に影響を与える“理由”を明確に提案・提供していかなければ消費行動まで至らない。特に、いまだ多くの人にとって嗜好品である海外旅行は。

+α=newスタイルが鍵を握る

 海外旅行へ導く要素には、これまでの海外旅行スタイル+αが必要不可欠な気がしてならない。その+αとは、海外旅行そのものに対する新しい価値や概念の創造であると私は考える。渡航者の旅行形態をカテゴライズし、旅行スタイルに新しい価値を付与することである。例えば以前からあるものでは、 “バックパッカー”、“女子旅”、 “ブレジャー”、 “ワーケイション”などの旅行スタイル。これらは、旅行にジャンルやセグメントを追加しより対象者を明確化したものであるが、これをターゲティングツールとしてPRしている国も少ないない。
 タイのカオサン通りは、かつてバックパッカーの聖地として世界各国の旅行者を虜にしたし、日本でも深夜特急、猿岩石の電波少年などで一時ブームになった事はY世代以上の方々なら記憶しているはずだ。ビジネスとレジャーを掛け合わせた、ブレジャーやノマドワーカーに人気のワーケイションなどは、昨今のテレワーク需要増で今後も注目され続ける事だろう。

フラッシュパッカーと呼ばれる新参者

"お金をかけないバックパッカーの精神を持つが、ちょっとした楽しみのためには大金を使うバックパッカー"ALC 英辞郎より

 この先の旅行スタイル(セグメント)で提言したいのが、 “フラッシュパッカー”というものである。 あまり聴き慣れない言葉かもしれないが、ALCの英辞郎によると “お金をかけないバックパッカーの精神を持つが、ちょっとした楽しみのためには大金を使うバックパッカー。”と定義付けられている。さらに、ある教育機関の調査によるとフラッシュパッカーの特徴として、デジタルツールを駆使するというものがあるそうだ。スマートフォンやノートPC、デジタルカメラなど電子ツールを駆使しがら旅行することも大切な要素らしい。要は、バックパッカーのような旅行スタイルを好みながらも、旅先でやりたいことにはとことんお金を惜しまず使いデジタルツールを駆使しながらスマートに旅行するといったところ。
 この旅行スタイルはまだ日本でもメジャーになっていないが、よく考えてみると意外に多くの人がこのスタイルに少なからず当てはまりそうな気がする。バックパッカーに憧れながら旅する学生も、ノマドで自由気ままに仕事をする人たちも、週末弾丸で旅行にいく旅好きOLもどこかこのスタイルに当てはまるのではないか。実に今の時代にマッチしているように思える。だからこそ、このある種新しい旅行スタイルを全面に概念として押し出して、新たな海外旅行に対する価値を創造する必要があるのではないか。
 例えば、タイはバックパッカーの聖地からフラッシュパッカーの聖地として価値を全面に出していくと面白いのでは考えている。古今の魅力が融合する東南アジアきってのデスティネーションであり、世界でもハイレベルの美食ITツール導入の俊敏性、バジェットに合わせた広い振り幅の宿泊施設リゾートなどコンテンツは腐るほどあるからだ。コンテンツ勝負で魅力を押し出すのも必要ではあるが、フラッシュパッカー的旅行スタイルを押し出した結果、豊富なコンテンツに行き着いたという迂回ルートでも良いのではないか。フラッシュパッカーをするためにこの国に来た、という旅行スタイルが日常化するものそう遠くない気がするし、それが海外旅行に行くための主な理由になってもおかしくないと思う。

希望的観測

フラッシュパッカーというセグメントが認知されたとしたら、彼らはどのようなPRを好むのか。希望的観測ベースで提案したい。まずは、海外に行くために欠かせないフライト。おそらくフラッシュパッカーは現地で好きなことに惜しまずお金を使うけど、ビジネスクラスでのんびりよりも、安く移動できればそれに越した事はないと考えるだろう。LCCで機内サービスがさほど充実していなくても、持ち前のデジタルツールで機内でも有意義に時間を過ごすはず。
 そこで勝手にコラボしたら面白いと思う組み合わせが、エアアジアのような大規模LCCとNetflixなどのビデオオンデマンドサービス会社(VOD)。2者がタッグを組み、VODに加入すると、LCCから航空券の割引が適用されるなど何かしら新規契約者に特典が与えれる仕組みができるキャンペーンが開始されたら面白そうと個人的に思う。(仮 #機内でネトフリ旅行 キャンペーンとでもしておこう) LCCのほとんどの座席にはスクリーンが設置されておらず映画を観る事はできないという短所をVOD会社の力で補う。LCCはより快適に顧客体験をしてもらいたいものだろうし、VOD会社も契約者を増やし様々な場所でサービスを利用してもらいたいと考えるはず。それが、機内でもいいはずだ。異なる性質を持つ両者がクロスオーバーしてニーズを埋め合う新たな取り組みが始まるとフラッシュパッカー的旅行者を虜にするのではないだろうか。何かしらこのような面白い組み合わせをぜひ今後期待したい。

終わりに

 これまでかなり個人的でかつあまり根拠もないような話をしたが、私自身もみなさんと同じ海外旅行大好き人間である。いつでも好きな時に海外の情報へアクセスできるこの時代だからこそ、ネット上に錯綜する情報を鵜呑みにせずに自ら海外に出てリアルな世界を自分の目で見たいと思っている。海外旅行は人に発見、癒し、出会いなど新しい体験を与えてくれる人生において最高の教材だ。最後に、私の大好きなスナフキンの言葉を。

“僕は自分の目で見たものしか信じない。
けど、この目で見たものはどんなに馬鹿げたものでも信じるよ。”

皆さんにとって素敵な海外旅行ができるその日が来ることを願って。

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