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菊について聞く、菊の種

 草原の中で菊の花が咲いていた。雑草の中。園芸用の赤い菊の花だ。
 去年もあったのだろうか。草原なんかそんなにじっくり見ないので、去年あったかどうか記憶がない。
 なんでこんなところに菊が生えているのだろう。

 菊はどうして増やすか。
 昔、菊作りをしたときは、菊は挿し木をして育てた。
 菊には多くの種類があるので、親と同じものを作るには挿し木をしてクローンを作る。
 菊は「木」ではないし、伸びてきた若い緑の枝の先っぽを挿すので「挿し芽さしめ」という。
 芽を土に挿しておくと、根が出て芽が伸び、1本の菊に成長する。根が出やすいように成長剤をつけたり土を工夫したりするが、基本的には「土に枝を挿す」ことだ。
 挿し芽は人間の手を借りてするが、自然の植物は「」で増える。菊も本来は種で増えるが、菊は他のキク科の植物の花粉を受粉しやすく、雑種ができやすい。雑種になれば、親とは違った花になってしまう。
 江戸時代に多くの品種改良がなされた菊。種から育てれば、珍しい親の性質が消えてしまう。それもあって挿し芽が主流になっている。挿し芽によって親と同じクローンを作る。

 で、菊の種だ。
 そういえば菊の種を見たことがない。ヒマワリの種やタンポポの種は知っているが、菊の種は知らない(ヒマワリやタンポポもキク科)。
 実際の菊の種は小さすぎて老眼の目では見えないそうだ。

 一般に菊の花びらといわれている、何個もの舌が飛び出しているように見える部分を「舌状花ぜつじょうか」という。花びらの真ん中にある丸い筒のような部分を「筒状花とうじょうか」、あるいはくだのように見えるから「管状花かんじょうか」という。種ができるのは真ん中の「筒状花とうじょうか管状花かんじょうか)」の部分になる。あれも花なのだ。
 同じキク科のヒマワリを考えるとわかりやすい。ヒマワリは花びらの真ん中に種がびっしりついている。花びらの真ん中が多数の種になるということは、実はヒマワリの真ん中部分は小さな花の集まりなのだ。花びらは外側の黄色い部分だけだと思っているが、あれは「舌状花」の部分で、真ん中の部分が「筒状花」になる。
 キク科植物は、小さな花が集まって大きな花に見える植物だ。(タンポポも小さな花が集まっていて、一つ一つの花から種ができ、たくさんの綿毛となる)

 ヒマワリはわかりやすいが、菊の種は見えない。見えないけど実は「筒状花」の下にいっぱい種があるそうだ。


 キクの仲間は、5,500万年前から3,800万年前に生まれ、現在までに地球上のいたるところに広がり、23,000から30,000種類が知られ、被子植物最大の科となっている。
 菊は木ではないといったが、密林の大きな木に、小さな菊のような花が咲くものもある。それもキク科だ。
 我々が普段食べる野菜も、キクの仲間は菊菜きくな春菊しゅんぎく)だけではない。レタスもキクの仲間で、菊のような花を咲かす。フキもキク科。よく庭に植えてあるツワブキの黄色い花はまるで菊の花だ。フキノトウは、小さな菊の花を集めたように咲く。さらにゴボウもキクの仲間で、アザミのような花を咲かす(アザミも当然キク科の植物)。

 キクの仲間は世界中にいっぱいあるが、現在目にする園芸用の「菊」は、中国で生まれたものが日本に伝わった。同じような花はいっぱいあるけど、「菊」は舶来の植物。その名前が「キク」。だから「キク」という言葉は外来語(中国語)になる。


 菊の種は見えないけど、茶色に枯れた花びらの「筒状花」の部分を取り、ほぐしてみると種があるそうだ。目に見えないだろうから、ほぐしたものをそのまま蒔けば芽が出てくるだろう。


 今はまだ菊の花が咲いている。早く花が枯れて茶色にならないかなあ。今年は菊の花の種をさがして、蒔いてみよう。

 菊の花が茶色になるのを楽しみに待っている。
 来年への楽しみができた。


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