歓怒(かんど)

神戸からの風、どこまで吹いていくのだろう。 歓怒の文字は「歓喜」「怒り」「喜怒哀楽」を…

歓怒(かんど)

神戸からの風、どこまで吹いていくのだろう。 歓怒の文字は「歓喜」「怒り」「喜怒哀楽」を示し、「かんど」は漢字では「神戸」とも書ける。「感動」とも書ける。よろしくお願いします。

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孔子縞于時藍染②~江戸の町の山東京伝の黄表紙

 道徳が行き渡った江戸の町。そんなことは、人間の世であるわけないだろうが、ありえないことをSF的にあれやこれやとカタログ的に描いた作品、山東京伝作画の黄表紙「孔子縞于時藍染」(寛政元年・1789刊)上中下三巻の現代語訳二回目の紹介。    中巻 六 「楚国には、もって宝とせず、ただ善をもって宝とす」(楚の国には特に宝というものはないが、あるとすれば善人がいるということだ) という言葉を守り、だんだん世の中での金銀をいみ嫌い、中にも知恵のある男、考えて、 「『焼き味噌を焼

    • 孔子縞于時藍染①~道徳だらけの山東京伝の黄表紙

       格子模様の染め物が流行るという意味に、孔子の教え、儒学を引き継いだ朱子学が、幕府の学問としてあったが、その教えが、寛政の改革(1787~1793)とともにますます広がっていくという意味のタイトルで、当時の世の中を茶化して描く。寛政の改革では、学問や武芸が奨励され、倹約が奨励された。  派手な模様のファッションが禁止されたので、格子模様のいろいろなデザインが流行のファッションとなる。孔子の「論語」はよく読まれており、教えをアレンジした道徳、心学も流行していた。そんな時代に、道

      • アトラス彗星は見られなかったけれど、宇宙の神秘はたくさん見てきた人生だった

         2023年に中国の紫金山天文台で発見されたアトラス彗星は、2024年10月に肉眼で観察できるとニュースで言っていたが、空を見上げても見えない。明るく見えていた宵の明星、金星さえ、しばらく曇り空の連続で見ていない。アトラス彗星は金星の横で流れているはずなのに。別に大雨になったわけではないが、それだけ天気の悪い日がずっと続いていた。これも私の運命だろうか。    彗星といえば、しっかり見えたほうき星があった。  1997年のヘールホップ彗星は、長い尾を引きながら低い空に浮かび、

        • 新たしく新しい秋の風景

           秋の七草の一つにハギがある。漢字でも「萩」、秋の草(くさかんむり)と書く。なのに最近は、「おお、ハギだ」と思って見ても、ヌスビトハギだらけになっている。  ヌスビトハギはくっつきむしのひとつで、できた豆は人にくっついて運ばれる。急に増えてきたなと思い、調べると、ヌスビトハギだと思っていたのは、日本に昔からあるものではなく、今、増えているのは、外来の、アレチノヌスビトハギ(北アメリカ原産、タイトル画像)だそうな。  ヌスビトは盗人で、こそっとくっつくくっつきむしのことだが、在

        孔子縞于時藍染②~江戸の町の山東京伝の黄表紙

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          京伝憂世之酔醒③~江戸の町で夢を追っても……

           仙術を授けられた京伝の物語。夢がかなわぬ世の中だから、せめて草双紙(とうじの絵本)の世界で夢をかなえていく物語。  「京伝憂世之酔醒」は、山東京伝作、兎角亭亀毛画の黄表紙(1790刊)。全三巻の三回目、最終回の現代語訳。   家に女性がほしいといえば、三人の美女があらわれた京伝は……。   下巻 十二  京伝は大人げなく、十代の振り袖に決めると、あとの二人は、たちまち消えてなくなる。さてさて、仙術は重宝なるものなり。  それより、その振り袖と昼夜交わり暮らし、今夜は

          京伝憂世之酔醒③~江戸の町で夢を追っても……

          京伝憂世之酔醒②~次々願いがかなう不思議な世界

           こんなことがしたい、あんなことができたらいいなと夢見る大人の夢をかなえる江戸の絵本作品。  「京伝憂世之酔醒」は、山東京伝作、兎角亭亀毛画の黄表紙(1790刊)。全三巻の二巻目の現代語訳の紹介。   仙術を身につけた京伝は、女郎遊びをしたいと深川にやってくる。   中巻 六  ほどなく深川へ着き、新尾花屋へ行き、有名な遊女を呼び遊びければ、日頃の思いを晴らす。ちと座敷がさみしく思い、またまた、「なったりなったり」と手を打つと、たちまち太鼓持ち、流行の芸者がやってくる

          京伝憂世之酔醒②~次々願いがかなう不思議な世界

          京伝憂世之酔醒①~こんなことあんなことできたらいいな

           あんなことがしたい、こんなことがしたいと思うのは子どもだけでなく、大人も同じ。ありえないことを夢見るのは誰でもできるうさばらしかもしれない。  「京伝憂世之酔醒」は、山東京伝作、兎角亭亀毛画の黄表紙、寛政二年(1790)刊行、全三巻。  挿絵の兎角亭亀毛は、詳細がわからないが、うさぎにツノがあり(兎角)、カメに毛が生える(亀毛)「兎角亀毛」は、ありえないことのたとえに使われる。ちょうど「黒白水鏡」(寛政元年・1789刊)の挿絵で、北尾政演として過料をうけた後なので、京伝(1

          京伝憂世之酔醒①~こんなことあんなことできたらいいな

          秋野愛之交歓

           秋の涼しき風も感じられる昼、アゲハチョウが飛んでいた。あれ、変な飛び方だ。これはひょっとして。  枝に止ったのを追いかけると、予想どおり交尾していた。  チョウの交尾を見るのは久しぶりだ。  あれあれ、二匹の大きさが違う。これ、ほんとに同じ仲間のオスとメス?  まあ、いいか。同性同士でも愛が認められる時代だ。  なんにしても、秋の涼しい空気の中で、愛を交歓しているチョウがいた。  自然を見ると、いろんな発見がある。  以前、こんな記事も書いていた。

          莫切自根金生木③~噴煙ならぬ金の降る町

           浅間山が噴火し(1783)、異常気象により天明の大飢饉(1782~1788)が起きた江戸時代。不安な現実を忘れさせるかのように、金金金を主題とした物語。  黄表紙、「莫切自根金生木」(唐来参和作、1785刊)三巻の現代語訳の三回目、最終回。  金を減らそうとする萬々の奮闘やいかに。   下巻 十五  金を減らすには、普通のやり方ではできまいと、知恵をめぐらし、三保の松原の松を掘らせて、江戸まで運ばせると、よもや金もなくなりそうなものと、まず人を集め入札をする。 萬々「

          莫切自根金生木③~噴煙ならぬ金の降る町

          莫切自根金生木②~金だ金金、この世は金だ

           金だ金だと叫ぶのは、現代社会だけでなく、江戸時代からはじまったこと。  絵と文が一体となった黄表紙、唐来参和作「莫切自根金生木」(1785刊)三巻の現代語訳二回目。  金があるのがいやになり、金を減らそうとする萬々はどうするか。   中巻 七  今年は飢饉もなく、世の中もおだやかなので、たくさん米を買いだめして、米の値段が下がったら売り払い、損をしよう、と思い付き、手代たちに言いつけ、諸国の米を買いだめする。 手代「常陸や磐城の安い米を一両五升で買いました」 萬々「そ

          莫切自根金生木②~金だ金金、この世は金だ

          莫切自根金生木①~上から読んでも下から読んでも

           黄表紙、「莫切自根金生木」は、「きるなのねからかねのなるき」と、上から読んでも下から読んでも、いやいや、この文は横書きだから、左から読んでも右から読んでも「きるなのねからかねのなるき」と同じになる。「竹やぶ焼けた」(たけやぶやけた)も左から読んでも右から読んでも「たけやぶやけた」。こういう文を「回文」という。  回文をタイトルとした「莫切自根金生木」は、唐来参和作、千代女画で、天明五年(1785)に蔦屋重三郎から刊行されている。  全三巻の作品を三回に分けて現代語訳する。

          莫切自根金生木①~上から読んでも下から読んでも

          獅子に勝つ蚊

           国会議員のゲトウは、目立つ存在ではなかった。選挙区では、さすがに顔を知られていただろうが、全国的には、顔を知っている人は少ないだろう。その彼が一躍有名になったのは、ある政界の闇をマスコミに告発してからだ。  本人は、正義のためだと言っているが、実はマスコミのインタビューを受けたときに、今まで地方局のテレビにしか出たことがなかったのに、急に全国区の、多くの人が見るテレビだと思うとたちまち緊張し、ついついポロリと闇の一部をしゃべってしまった。そうすると海千山千のマスコミは、次々

          親敵討腹鼓②~「カチカチ山」の後日譚

           皆の知っている昔話を、茶化して表現した物語。  「親敵討腹鼓」(安永6・1777刊)、朋誠堂喜三二作、恋川春町画の上下二冊の黄表紙下巻の現代語訳。  婆を殺したたぬきを殺したうさぎは、たぬきの息子から、親の敵とねらわれる。婆の息子の軽右衛門は、主人のために、頭の黒いうさぎの生き肝をさがすが、頭の黒いうさぎが婆の敵討ちをしてくれたことを知り、うさぎをねらうたぬきと争う。ここまでが上巻。  さて下巻では、どうなることやら。   下巻 九  軽右衛門が、たぬきと争うのを聞

          親敵討腹鼓②~「カチカチ山」の後日譚

          親敵討腹鼓①~「カチカチ山」の後日譚

           日本各地に伝わる昔話は、それぞれの地域によって、同じ話でも違って伝わっている。  例えば「桃太郎」は、大きな桃がどんぶらこと流れて来るだけでなく、こんな話もある。神仏からさずけられた桃を食べた老夫婦が若返り、夜の営みをせっせとした結果、桃太郎が生まれた。こっちのほうが現実的だろう。  そんなふうにいろんな話があった中で、木版印刷の技術が発展し、本が出版されるようになると、昔話も「御伽草子」として大量に出版されるようになった。江戸時代には、すでにそうしてできた昔話によって、人

          親敵討腹鼓①~「カチカチ山」の後日譚

          やっと咲いたぞ夜の白いカラスウリ

           夏の終わりには、白い花がたくさん咲く。  夏にはカラフルな花がいっぱいあるけど、なぜか白い花に惹かれる。よけいなものをけずった、シンプルな白い花が好きだ。  白い花の中で、毎年楽しみにしているのが、夜に花開くカラスウリだ。とはいうものの、このあたりに咲いているのは、赤い実になるカラスウリではなく、実が緑から黄色になるキカラスウリ。  その花を楽しみにしているが、今年はカラスウリが見られない。例年咲いている場所へ行ってもない。毎年なかなか見つからないけど、ちょっと遅すぎ

          やっと咲いたぞ夜の白いカラスウリ

          悪七変目景清②~山東京伝の黄表紙

           平家の武将、藤原景清が、源頼朝の命をねらうという、当時の人々がよく知っている物語を、なんと景清の「目玉」が、頼朝をねらうという奇想天外な話とした、山東京伝作画の黄表紙「悪七変目景清」(天明6・1786刊)下巻の現代語訳。  景清の目玉を捜索するあれこれを描いて下巻へ続く。   下巻 七  今月は、重忠(畠山)が当番なので、景清の目も、重忠となれば、ちと目の上のこぶなので、ひとまずは目をやつして、いやいや、身をやつして、計画を練らんと、目医者はさまざまある中で、赤坂の

          悪七変目景清②~山東京伝の黄表紙