見出し画像

ボイスドラマシナリオ:「お姉ちゃん、連れてって」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。

今回は今年の夏に出したボイスドラマシリーズ「カナモノ堂 這イ寄リシ者」の第一弾、emiさん主演の「お姉ちゃん、連れてって」のシナリオです。

楽しんで頂けると幸いです。

※コチラを聴きながら楽しむことも出来ます。
 是非、合わせてお楽しみください


【お姉ちゃん、連れてって】

作:カナモノユウキ


〔登場人物〕
・京橋エミリ ※「」の方
・謎の子供 ※『』の方


時刻は深夜1時近い夜道、フラフラと疲れた足取りで帰るエミリ。その顔つきは暗く、生気が抜けている様だった。


「はぁ、疲れたぁ~。もう終電逃すかと思った…。部長の仕事持って来るタイミング…。アレ絶対ワザとだよなぁ…、嫌がらせ…もう2年近く立つし…。毎月ろくな休みも無いし…。はぁ…早く転職先見つけないと…体壊れちゃうよ…。」

街灯の下、子供が急に現れる。不気味に照らされた表情は無垢な印象で、逆に不気味に感じる。

『お姉ちゃん大丈夫?』
「ん?…アナタ、こんな時間にどうしたの?」
『お姉ちゃん大丈夫?』
「う、うん…大丈夫だよ。アナタは、こんな時間にどうしたの?お父さんとお母さんは?」
『良かった!あのね!連れてって!』
「ん?ど、どこに?」
『お姉ちゃん、連れてって!』
「いや、だから…どこに?」
『連れてって!』
「ごめん、よく分からないけど…連れて行けないから。夜遅いから、早くお家帰りな?ね?」
『連れてって!』
「…ごめん、お姉さん忙しいから…行くね。」
『置いてくの?ねぇ、置いてくの?』
「ご、ごめんね。じゃあね…。」

エミリは恐怖を感じ、その場を速足で後にする。

「何だったんだろあの子…。変な子だったなぁ…。」

しばらく歩き続けた先、足音も気配もない中で、突然先ほど会話した子供が目の前に現れた。

『ずるい!お姉ちゃんだけズルい!』
「え?なんで?」
『連れてって!アタシも連れてって!』
「何を言ってるの?お姉さんはこれから家に帰るの!あんまり聞き分けないと、お姉さん怒るよ!」
『連れてって!アタシも連れてって!』
「私は家に帰るだけなの!じゃあね!!」
『アタシも連れてけ!!』
「いやぁ!!」

子供とは思えない気持ちの悪い声に言い知れない恐怖を感じ、エミリは溜まらず走り出す。

「ハァ…ハァ…なんなのホントに…。アレ?…ここ、どこ?…。」

無我夢中で走り続け、見知らぬ交差点の真ん中で立ち止まる。そこへ光が猛スピードで突っ込んで来る。

「え?」

トラックとエミリの衝突音が鈍く響く。直後、頭蓋が砕ける音が聞こえ、血だまりが彼女の死を明確にした。

音もなく先ほどの子供が現れて、エミリだったものを見下ろして残念そうに呟いた。


『あーあ……逝っちゃった。』

―おしまい―


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

音で作るものを文書で発表は、何だかドキドキするのですが。
意外と文字で読むと怖くないと言う友人の意見を鵜呑みにして発表してみました。

emiさんへの当て書きをしたんですが、結構分かりやすい子供と大人の間で起こる不気味な話だったので、シンプルな怖さになったのかなとニヤニヤしながら書き終えたのをよく覚えています。

明日の作品もこの【カナモノ堂 這イ寄リシ者】から、「ざきノたいるさん」主演の作品を公開いたします。

では次も楽しんで頂けることを祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


《作品利用について》

・もしもこちらの作品を読んで「朗読したい」「使いたい」
 そう思っていただける方が居ましたら喜んで「どうぞ」と言います。
 ただ〝お願いごと〟が3つほどございます。

  1. ご使用の際はメール又はコメントなどでお知らせください。
    ※事前報告、お願いいたします。

  2. 配信アプリなどで利用の際は【#カナモノさん】とタグをつけて頂きますようお願いいたします。

  3. 自作での発信とするのはおやめ下さい。

尚、一人称や日付の変更などは構いません。
内容変更の際はメールでのご相談お願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?