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助産師1年目、久しぶりに病棟で泣いた

産婦人科で働き始めて半年以上、病棟で久しぶりに泣いて、過呼吸になった。自分のしたことが申し訳なくて、多分疲れも溜まってて悲しさが増して、悔しくて。でも先輩がたくさんフォローしてくださって、なんとか勤務を終えることができた。

朝、授乳室で突然ひとりの患者さんが赤ちゃんを抱えて泣き出した。
ほんとうに突然だった。
私は駆け寄って話をきこうと、横に座って背を撫でた。
その方は泣きながら、ぽつぽつと、うまく授乳ができなくてつらい、とこぼされた。

マタニティブルーだ、と思った。
お産の後、急激なホルモンの変化など、妊娠してた体から生理的に大きく変わることや
母親になったという環境変化、育児の疲労、睡眠不足などの理由が重なり
一過性に、抑うつ状態になりやすくなる。
涙もろくなり、感情が不安定になり、不安感が増したり、集中力が下がったり、眠れなくなる。
徐々に育児に慣れたり、周りのサポートをうけたり、休息をとり、自分と赤ちゃんのペースがつかめてくるようになりながら、
多くは2週間ほどで戻ると言われている。
ただ、症状が悪化すれば精神病としてきちんと治療が必要になることもある。

涙の流し嗚咽する患者さんをみながら、
この人は何が今辛いのか、どうしたら少しでも楽になれるか、赤ちゃんの安全は守られているか、どんな声かけをしたらいいのか、
いろいろ配慮しなくては、と頭の中に駆け巡った。

その方は泣きじゃくりながら、
授乳が難しい、できない、全然寝れてない、休みたい1人になりたい、とおっしゃったから、

まずは休んでもらいたいと思って、部屋に戻ることを提案し、1人になっても大丈夫か確認して、
また伺いますね、と声をかけた。

その直後、先輩数人に声をかけられた。
「なんで1人で部屋に返しちゃったの?」
「1人になりたいって言われたの?それとも一人になって休みます?ってこちらから誘導したの?」
「一人にさせて大丈夫って判断したの?」

そして
「授乳室の人が大勢のところで話を聞こうとしてたよね?人がいるところで、泣きながら、じっくり思いを話すことができると思う?」
「まずすぐにお部屋に一緒に戻って、ゆっくり話をきかないといけないよ」
「タイミング逃したら、もう想いを話してくれないかもしれない。信頼関係を作れないかもしれない。」
「もう一度部屋に行ってきたほうがいいと思う」
と教えてくださった。

ガン、と頭を殴られた気がした。

急いでその方の元に行くと、一人になりたいから2時間休ませてほしい、とお話され
何かあればいつでもナースコールください、と言うしかできなかった。

勤務のリーダーさん助産師に、その一連の報告をした。
また2時間後に伺って話を聞こうと思います、と説明しながら
先輩に言われたことを頭の中で何度も反芻し、
私はポロポロ涙が出てきてしまった。

私の初期対応が良くなくて、もう患者さんが心を開かなくなって
つらい思いを話してくれなくなったらどうしよう。
それがこれからの育児に影響したらどうしよう、申し訳ない。
私泣いてる患者さんをみて、すごくすごく動揺しちゃった。
先輩から言われような、適切な対応ができなかったことが悔しい、申し訳ない。

リーダーさんは、そんな私をみて
「とりあえず裏に行こう、話しよう」
と休憩室に連れて行ってくださった。

「なにがつらくなったの?」と尋ねられ
、答えようとしているうちに、泣きながら過呼吸になった。
ぜこぜこ、息が上がり、吐けない、吐けないから、吸えない。

うまく息ができないとはこういうことか、と驚いた。
先輩はビニール袋を持ってきてくれて、口に当て、ゆっくり吐くようそばにいてくれた。

私は、全部自分の対応、ケアが悪かったと感じること、
もうその患者さんと関われない、信頼を失ったと思うと悲しいこと
動揺してしまって自分が申し訳ないこと、を
泣きながら話した。

先輩は、きいてくれながら
初めてこんな風にメンタルが変わる人に接するとびっくりするだろうこと、
やれることはやろうとしてたこと、
話をきこうという姿勢はもててたよ、と伝えてくれた。

そうなのかなぁ、と思いつつ
そうだよ、ダメな対応だったよ、と責められないことに、少しずつ安心が芽生えてきた。

仕事に戻れそうかきかれ、なんとか頑張りたい、その患者さんにも向き合っていきたい、と話をすると

リーダーの先輩は
「辛くなって帰るって選択もあるけど、そうじゃないんだね、私も1年生の時自分を責めて自分の中で抱え込むタイプで、頼ることができなかったり、辛いけどとにかくまたやろうって鼓舞するタイプだったから、気持ち少しわかるよ」
「その人に時間割けるように、受け持ち人数少し減らそっか。」
「とりあえずもう少し休んでから戻ってきな。」
と声をかけてくれた。

ありがたかった。
その先輩はとてもできる先輩だったから
そんな風に1年生の時辛いこともあったなんて想像できないです、と嗚咽交じりに伝えると
そんな風に見える?と笑われた。

目をやや腫らしたまま、病棟に戻った。
過呼吸は落ち着いていた。

改めてその患者さんのところにいくと
患者さんはぽつぽつと、何が辛かったのか、どうしてほしいか、どうしていきたいか、話をしてくれた。
休んだことで少し楽になったとも言ってくれた。

その日の勤務もなんとか終えることができた。

看護は、ケアは、難しいと思った。

目に見える体の症状への治療じゃない部分、
患者さんの心に向き合うことは
私たち助産師・看護師の関わり、声かけ、コミュニケーションの影響も大きく

また患者さん本来の性格や個性にもよるところもある。
果たしてこれが正解か、わからないことも多い。
心がどう変わったかなんて、はっきりわからない。
良い方向に変われてたらと思うけど、万事がそうとは限らない。

マタニティブルーの方に、産婦人科分野では関わることも多い。
その人その人に求められることは違うし、私たちの関わり一つが、大切になる場面もあると思う。

今回、直後に対応の方法を教えてくれた先輩の言ってくださったことは、大切で、忘れてはならない関わりのポイントだと思う。
でも、自分が初めて出会って、そのような方へ関わった内容を
何もかも全部間違ってた、と自分を責めすぎなくてもいい、とリーダーの先輩は伝えてくれた。

難しい、正解はない。
正解に向かっていきたいけど、たぶんそのためには経験と
私自身のコミュニケーションや関わりの特徴も知っておかないといけないのかもしれない。

また一つ、経験したと思えばいい。
そして、私を裏に連れて行ってくれてケアしてくれた先輩に感謝して
加えて、アドバイスをくれた先輩にも感謝して
つらかったけど帰らず勤務に戻って、笑顔で患者さんに接することのできた自分を褒めて。

また次からも助産師として働きにいきたいと思う。

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