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特定技能ビザと外国人雇用②_20231207

1:「経済財政運営と改革の基本方針」を読む

特定技能制度は画期的な制度ですが、その構造は非常に複雑です。
全体像を理解するために、まずは内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針」について触れたいと思います。

「経済財政運営と改革の基本方針」とは?
経済財政政策に関する基本的な方針を示すとともに、経済、財政、行政、社会などの分野における改革の重要性とその方向性を示すものです。
内閣総理大臣が経済財政諮問会議に諮問し、同会議における審議・答申を経て、閣議決定しています。

内閣府HP

特定技能制度は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)において、「新たな在留資格を創設する」と明言されたことにより創設されたものです。
「経済財政運営と改革の基本方針2018」は、全体で80頁ほどのボリュームで、特定技能制度は、第2章の「力強い経済成長の実現に向けた重点的な取組」の中で「新たな外国人材受け入れ」政策の一環として提唱されました。

中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきている。
このため、設備投資、技術革新、 働き方改革などによる生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進するとともに、 従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある。
このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する
また、外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む。

経済財政運営と改革の基本方針2018 26頁

上記の引用で、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組み」と呼ばれているものが「特定技能制度」(在留資格:特定技能)です。
更に、この基本方針では新たな外国人材の受け入れ制度について、具体的な方向付けも行われています。

新たな外国人材の受入れ
● 中小企業・小規模事業者をはじめとした人手不足の深刻化への対応
● 一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れるため、就労を目的とした新たな在留資格を創設
● 出入国管理及び難民認定法を改正し、 政府の基本方針を定めるとともに、業種別の受入れ方針を策定
● 求める技能水準は受入れ業種ごとに定め、 日本語能力水準も業務上必要な水準を考慮して、 受入れ業種ごとに定める
● 政府の在留管理体制を強化するとともに、 受入れ企業又は登録支援機関(業界団体等)による生活ガイダンス、相談対応、日本語習得支援等を実施
● 在留期間の上限は通算5年とし、家族の帯同は基本的に認めないが、滞在中に高い専門性を有すると認められた者については在留期間の上限が無く、家族帯同を認める在留資格への移行措置を整備する方向

経済財政運営と改革の基本方針2018

上記は要点をまとめたものですが、すでにこの段階で特定技能制度の大枠は設計されていたということが分かります。
従って、まずは「経済財政運営と改革の基本方針2018」に目を通すことで、特定技能制度創設の背景とその全体像を知ることができます。

2:特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針

「経済財政運営と改革の基本方針 2018」(平成30年6月15日閣議決定)を踏まえ、 特定技能の在留資格に係る制度の適正な運用を図るため、入管法第2条の3第1項の規定に基づき、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針が定められました。

(特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針)
第二条の三
 政府は、特定技能の在留資格に係る制度の適正な運用を図るため、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針を定めなければならない。
 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 特定技能の在留資格に係る制度の意義に関する事項
 人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に関する基本的な事項
 前号の産業上の分野において求められる人材に関する基本的な事項
 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する関係行政機関の事務の調整に関する基本的な事項
 前各号に掲げるもののほか、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項
 法務大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
 法務大臣は、前項の規定による閣議の決定があつたときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

入管法第2条の3

3:特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針)

更に、入管法の第2条の4では 、第2条の3第1項の規定に基づき定められた「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」に則り、各分野(12分野)における特定技能制度の運用に関する方針が定められています。

(特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する分野別の方針)
第二条の四
 法務大臣は、基本方針にのつとり、人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野を所管する関係行政機関の長並びに国家公安委員会、外務大臣及び厚生労働大臣(以下この条において「分野所管行政機関の長等」という。)と共同して、当該産業上の分野における特定技能の在留資格に係る制度の適正な運用を図るため、当該産業上の分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針を定めなければならない。
 分野別運用方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 当該分野別運用方針において定める人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野
 前号の産業上の分野における人材の不足の状況(当該産業上の分野において人材が不足している地域の状況を含む。)に関する事項
 第一号の産業上の分野において求められる人材の基準に関する事項
 第一号の産業上の分野における第七条の二第三項及び第四項(これらの規定を同条第五項において準用する場合を含む。)の規定による同条第一項に規定する在留資格認定証明書の交付の停止の措置又は交付の再開の措置に関する事項
 前各号に掲げるもののほか、第一号の産業上の分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項
 法務大臣及び分野所管行政機関の長等は、分野別運用方針を定めようとするときは、あらかじめ、分野所管行政機関の長等以外の関係行政機関の長に協議しなければならない。
 法務大臣及び分野所管行政機関の長等は、分野別運用方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
 前二項の規定は、分野別運用方針の変更について準用する。

入管法2条の4

以上、本稿では「経済財政運営と改革の基本方針2018」と、これにより創設された特定技能制度について、「基本方針」及び「分野別運用方針」について触れました。
次稿では引き続き、特定技能制度の運用に関する法令について解説します。

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