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創作 SF風。

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記憶のような妄想のような SF系創作小説です。 ちょっと薄目で見る、くらいで あまり凝視しないでください……照れるから。
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ソラノカナタ アナタノカケラ         〜episode.3.0  エヴレスト・ゾングル

ソラノカナタ アナタノカケラ 〜episode.3.0 エヴレスト・ゾングル


【episode.3.0 エヴレスト・ゾングル】

男は幾度も 女の記憶を"洗った"。

幾度も 幾度も。

女は逆らうことなくそれに従った。

…………だが

洗っても洗っても

なぜか、

女は 飼い慣らされているはずが いつの間にか

ごく自然に こころが離れて行くのだ。

従順に 男のことだけを見ているはずが

いつの間にか 男を見る目が 白むのだ。

男にはそれが 不愉快

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ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.2.2

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.2.2

episode.2.2

【決意】

風が頬を撫でた。

目の前に広がる 水面を見て
彼女は しばし現状を把握できないでいた。
そよ風が心地よかった。

空………なのか、水面ではない空間は藍色で
光源はないのに 暗くはなかった。

どこまでも広がるその空間は。

[あぁ、ここは わたしの、こころの庭

誰にも 冒すことのできない場所]

ここへ来る前に何をしていたのか

何があったのか……考え

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Orionのぬくもり    episode.XXX

Orionのぬくもり episode.XXX

Orionが呼んでいる……

……………夜空を見上げる。

あなたは いまも

わたしを 呼ぶのですか

黄金から赤銅、灰黒へと変わる瞳で
あの 少し憂いた眼差しで
いまも いるのでしょうか………

わたしの はねを隠して

わたしに 名前をつけた

(あなただけが呼ぶ名を)



赤い海でも あなたはわたしを捕まえた

腕を掴む 大きな手のぬくもりを

わたしは今でも覚えています

わたしは

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ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.2

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.2

episode.2

【LYRAにて〜aureola〜】

LYRAの住人の多くは女性体の姿を好んだ。
豊かに波打つ金髪と 金色の瞳が、近ごろのLYRA人の流行りであった。
言語もあるが 歌を好み、微笑みを絶やさない。
LYRAほど穏やかな星はほかにはないだろう。
奉仕と慈愛の精神が強く
どんな者であろうと 傷ついていれば手当をし
求めるものがいれば与えた。

長くLYRAに生きるアゥレオラは

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ソラノカナタ アナタノカケラ episode.1

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.1

episode.1【略奪】

奪うのではない。
欲しいから手に入れる、それだけだ。

…………と、
"彼ら"は━━━━━オリオンの彼らは言った。
決して、その星の民すべてが"そう"ではないとしても
高い知性、科学力、強い好奇心、身体能力をもつ彼らは………彼らの一部は
『求める』ことに対して貪欲であった。

もちろん、科学力を 他の星や 様々な問題への解決策へと尽力を惜しまない者もいたが
他の追随を

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ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.0.2

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.0.2

episode.0.2

【MONOLOGUE】

覚えておこう

きみの肌はてのひらに
きみのぬくみはこの血の中に
きみの瞳は この世界のあらゆるものの色に

きみの笑い声は 細胞に響かせて

朝焼けの雲は きみの髪の色

刻み込め刻み込め刻み込めおれのすべてに 彼女のすべてを刻み込め

かならず この手に取り戻すために

近ごろ
いままで以上におれに触れ おれを見つめる意味は
わかってい

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ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.0.1

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.0.1

episode.0.1

【このせかい 〜手記より〜】

わたしが忘れてしまう前に
いくつかここへ記しておきます。
わたしが"いま""そこ"にいない以上、たしかめようのないこともあります。
ただの読み物として読んでください。
忘れてしまってもかまいません。

まずはじめに
あなたが探している『誰か』にはきっと会えます。この手記をあなたが読んだことが
その布石となります。
物心ついた頃か

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ソラノカナタ  アナタノカケラ episode.0

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.0



【episode.0】

なにから

お話しましょうか。

はじめに覚えているのは………

虹のかかる滝のそば
ミルク色の日差し
原っぱの木陰
わたしの膝でまどろむあなた

わたしは
あなたの 銀色がかった虹色の
前髪が目にかからぬようにそっと指で除けた

あなたは眠りから醒め
サファイア色の瞳がわたしを探してこちらを見た

「夢を見ていたよ………」
少し潤んだ瞳であなたが言う。
わたしの腰に

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