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米国こぼれ話:一人13万円の助成金


時々閑話休題的に、アメリカ生活にまつわる話もしていこうと思います。

今日は話題になった、米国政府による現金給付の話です。3月27日に新型コロナウイルス対策としての救済法案の一環として発動されましたが、2週間たった今週、ようやく実際の給付に入ります。

個人・世帯への支援は、収入に応じて成人に1,200ドル、未成人(17歳以下)に500ドル。日本円だと年収約810万円以下なら1人一律13万円、子供には5万4千円。

細かい減額調整ははしょりますが、要は高収入の層は助成金ゼロということです。ただし共働きでそれぞれ年収810万円以下なら26万円、夫婦合算ベースの年収が1620万円でも26万円、子供が2人いたら36万8千円。なかなかの額ですよね。

ただしアメリカの都市生活は、日本よりも実感としての物価が高いので、これでも苦しい家庭は多い気がします。

しかも今回は緊急であるため、職を失っていなくても一律給付金がもらえます。仕事があって、高所得ではない世帯は正直ラッキーといったところでしょう。それも、2018年か2019年度の、直近の確定申告額で決まりますから、今年は高所得になる予定だけれども、たまたま去年や一昨年が貧乏だった人達はさらにラッキーです。

その現金給付なのですが、現金が手渡されるわけではもちろんありません。2008年の不況時にも経済刺激策として現金給付が行われましたが、当時は小切手の郵送でした。アメリカは日本に比べて小切手の使用がごく一般的で、口座開設すれば誰でも自分の小切手を持っている状態です。

自分宛てに切られた小切手は、銀行やATMにもっていって自分の口座に入金することで換金されます。最近はクレジットカードやオンライン上のやり取りが増えたものの、いまだに個人レベルでの支払いや受取りに日常的に使われています。

さて今回ですが、やはりオンライン化が普及してきただけあって、大多数の給付金は、2019年度または2018年度確定申告の時に使った自分の銀行口座に直接入金されます。小切手郵送は確定申告をしていない人用か、確定申告時の銀行口座が使用不可になっている場合など、です。

政府側からすると、銀行口座入金の方が手間がかからないためか、現金給付の第一弾グループは、直接入金組約8000万人だそうです。その後、第二弾、第三弾、と小切手郵送組や、あわてて後から銀行口座を指定した人たちなどに給付されるとか。

アメリカは日本に比べてオンライン支払が日常的ということもありますが、郵送の誤送や遅延、また盗難が多い国でもあります。なので送る方も受け取る方も、銀行口座入金の方が助かります。対人ビジネスを行う労働者や個人事業主、3月半ばから減益や失業の一途をたどっていますので、今回の現金給付は十分ではなくても、首を長くして待っていたところだと思います。

何しろ、州ごとに別途給付される失業手当は、通常2週間前後で給付されるのに、今回は一ヶ月たっても給付どころか、システムパンクで失業登録もままならない状況ですから。まあ、最近は小切手も銀行やATMに行かずとも、携帯の銀行アプリでオンライン入金ができます。すごく便利ですし、外出による感染リスクを減らすことができます。

少し突っ込んだ話になりますが、私が住む街では、医療や食料・生活用品店といった生命の維持に必須のビジネス以外で、対面のやりとりを必要としない業務は休業を一ヶ月ほど命じられています。私の働くクリニックも休業中です。東洋医学の診療所は医療カテゴリーに入るのですが、東洋医学の治療を行うということで、規制上「生命の維持に必須」に入らないとみなされます。

というのも、東洋医学の治療が医療として認められるには、州法の定義において、緊急を要する重篤な疾病の診療は行わないことが条件だからです。たとえば心臓疾患がある人の高血圧や体力増強の治療はできますが、心臓発作が始まった方への治療はできません。がん治療中の副作用やストレス緩和のサポートはできても、がん治療自体は行えない、とかそういうことです。

漢方の治療はなにかと煩雑なこともあり、アメリカでは鍼灸・漢方の同時治療が可能にもかかわらず、鍼灸師として鍼灸オンリーの治療を行う東洋医学士は多いです。個人事業主がほとんどですから、鍼灸治療が行えなければいやおうなしに収入が途絶えてしまいます。

しかし鍼灸治療は一定期間個室に滞在する必要があるため、新型コロナウイルスの性質を考えると、背に腹は代えられない、といったところです。休業を行政に命じられる前から、自主的に休業する治療院もあったほどです。

鍼灸治療に限らず、新型コロナによって業務や生活に多大な影響を受けた人々は、減収や失業に驚いている暇もなく、まずは自宅待機で感染リスクを極力なくし、今後どうすべきかに考えをめぐらせているのが現状だと思います。

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