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なぜあの人は痩せるのに私は痩せないのか?(後編)~ダイエット効果を上げ、リバウンドリスクを下げる最上の方法~

なぜこの世には、リバウンドを繰り返す人でこんなにも溢れかえっているのか?

前編の記事ではこの疑問に、ダイエットに取り組む姿勢でお答えした。

ざっくり言えば、スピードを出し過ぎないことだ。

しかしそれだけでは、ダイエット-リバウンド関係の謎についてほんの一部しか答えていない。

では、あの人が痩せたと豪語しているのと同じダイエット法を実践しているのに、なぜ私はなかなか成果が得られないのだろう?

なんで私ばかりリバウンドするのか?

現在、この質問にきちんとした説明ができる専門家はどのくらいいるのだろう。

ここでは、ダイエット実践者を困惑させ続けている、『他人は他人、私は私』問題について、これまでに解明されている最新の科学的根拠を基に解説していくつもりである。

インチキ科学|ダイエット法の黒歴史


ところで、○○ダイエットと名が付くダイエット法は、現在のところいったいどのくらい存在するのだろうか?

むかし一時的に流行って、今では記憶の片隅に追いやられたものも合わせるとかなりの数になると予想できる。

しかしそのほとんどのダイエット法が、根拠がない(あるいは薄い)ものと断言して差し支えないだろう。

ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリー。

よく知れたこれら3つですら、信頼できる科学的根拠は一切見出せていない。

(イギリスの3万人以上のベジタリアンとスペクタリアン(魚菜食主義者)を対象に、その食事法がもたらす健康効果を調べたところ、はっきりとした効果は見られなかった。また、大半の研究では、がんの減少と心臓疾患の減少という効果は示しているが、脳卒中などの他の疾患が増加し、総死亡率がほとんど変化していないので差し引きはゼロとなる。/Key,T.J.,Am.j.Clin.Nutr(2009&2014) Cancer in British vegetarians.)
(アメリカのプロテスタント宗派であるセブンスデー・アドベンチスト(多くの信者がヴィーガン)7万人を対象に行われた調査では、ベジタリアンの信者は死亡率が15%低かったが、寿命は約2年長いだけにとどまった。このことは、住んでいる場所、スポーツ好き、酒を飲まない、信仰心の強さなどの食事以外の要素を取り除くことの重要性を示している。/Le,L.T.,Nutrients(27 May 2014) Beyond meatless, the health effect of vegan diets : finding from the Adventist cohorts.)
(研究によると、グルテンフリー食事療法で体重が増えた患者は、体重が減った患者の3倍以上になり、すでに過体重の患者でも結果は同じだった。体重が減った人でも、ほとんどの場合、それはグルテンとは全く関係がなさそうだ。こいったことから、グルテンフリーダイエットで有益と断言できるのは、加工食品を摂らなくなることくらいだろう。/Murray,J.,Am J Clin Nutr(2004) Fffect of a gluten-free diet on gastrointestinal symptoms in celiac desease.)

また、特に悪質なものに分類されて然るべきなのが、その人の個人的な体験談や感想にしか根拠がないメソッドを提唱している、エセ専門家たちだ。

なぜ悪質なのかはこの後説明していくことにする。

さらに言えば、ある食品に含まれる何百種類もある成分のうち1つか2つのみを取り上げ、この食品を食べれば美しくなると広告しているインチキ科学も、大抵は信じ過ぎない方が賢明だろう。

と、挙げていけばキリがない。

だが、ここまでに取り上げたダイエット法で効果を実感したという人を探すのは特に苦労しないはずだ。

一方で、効果を実感“できなかった”人もそれに負けじと多いのではないろうか。

いったいぜんたいどうなっているというのか?

なぜあの人はリバウンドしていないのに、私はやすやすとリバウンドを繰り返すのか?

他人は他人、私は私なダイエット

この答えは、特に強調して書くまでもないくらい当たり前なのだが、“身体は一人ひとり違う”からである。

もっと詳しく言えば、何か物を食べたり食べなかったりした時の体内で行われる反応の仕方が、人それぞれで全く異なるということだ。

これで先ほど説明したエセ専門家が、悪徳である理由がはっきりしただろう。

過去その専門家自身が成功したと実感していたり、効果があったと思っている主観に満ちた健康・美容法は、その本人には効き目があったかもしれないが、同じことが他人にも当てはまる保証などどこにも存在しないではないか!?

このような押し付けがましいエセ専門家によって、一般の人々は路頭に迷う羽目に陥っていると私は考えているのだが。

(こういったことからダイエット法や美容法は宗教的な要素をふんだんに含んでいる)

話しを戻そう。

では、一人ひとりの違いを決定している要因はいったい何なのだろうか?

それがわかれば、“他人は他人、私は私”問題を解決することはできるのだろうか?

太りやすさの原因①|遺伝子

まずこの問いに対して思い浮かぶのが、遺伝の関与だろう。

もちろん体重や体脂肪の分布には、遺伝が関与するのは明らかだ。

しかしこれまで肥満と遺伝子の関連を突き止めようとする膨大な研究が、成果を上げたとは言いがたい。

遺伝子に起因する異常がみられる人は、肥満の人のうちの5%にしか満たない。

(参照:The Evolution of Obesity/Michael L. Power)

これで自分の太りやすさを、両親のせいにすることは難しくなった。

ここで脚光を浴びるのが、“腸内細菌”である。

太りやすさの原因②|腸内環境


2008年ヨーロッパにて、約30億円という巨額資金で立ち上げられた『MetaHIT』という国家プロジェクトがある。

このプロジェクトは、人間の腸にすむ腸内細菌すべての遺伝情報を解析し、人間の疾患における腸内細菌の関与を明らかにしようというプロジェクトだ。

ここでMetaHITが、2013年に発表している研究を紹介しよう。

低カロリー(1200kcal)、高タンパク(35%)ダイエットでは、全ての被験者に一定の効果が見られたが、細菌コミュニティの豊かさや多様性が最も低い被験者は、減量の幅が最も少なかった。

そうした被験者は、ダイエット前の体重にリバウンドするのも1番早かった。

また、腸内細菌の多様性の低いグループは、平均的に肥満度が高く、インスリン値や内臓脂肪の量も高くなっており、さらに脂質値も異常なため、糖尿病や心臓疾患のリスクが高かった。

Le Chatelier,E.,Nature(29 Aug 2013) Richness of human gut microbiome correlates with metabolic markers.

つまり、まとめるとこういうことになる。

ダイエットの効果を高め、同時にリバウンドのリスクを下げたければ、腸内に何兆と棲みつく細菌たちの種類を豊富にすればいいのだ!

あとは彼らが何とかしてくれる。

まとめ~リバウンドしないダイエット法~

しかしこれでは、最初の問題をすり替えただけに思えるかもしれない。

結局、腸内細菌の種類を豊富にする方法も“他人は他人、私は私”だ。

この堂々巡りに気が付いた読者は、かなり鋭い。

だが私は違うと思う。

これまでのダイエット法では、何を改善すれば痩せられるのか?あるいはリバウンドしないのか?

ターゲットとなる指標が一貫していなかった。

(体脂肪の量?内臓脂肪の量?筋肉量?毒素の排出?遺伝子は解析したところで修正することはできないし、いっそのこと占いや前世にでも頼ろうか?)

ではここで、ダイエット効果を増幅し、リバウンドのリスクを下げるために改善を目指すべきターゲットは何か、改めて考えてみてもらいたい。

答えは、“腸内細菌の多様性”である!と、

ついにはっきりしたのである。

そして重要なのは、ダイエットーリバウンドと腸内細菌の関連性は、ごく最近になって理解され始めたばかりなのだ。

だからこれまで迷走してきた人は、ある意味では仕方がない。

これまでのダイエットトレーナーが、いくらカリスマだと世間がもてはやしても、この事実を知らなかったのだから。

ところで、腸内細菌の種類を豊富にするには、いったい何が有効なのだろう?

明日から私たちは何を始めるべきなのか?

これらについては次回の解決編で、説明していくことにしよう。

この記事を書いた神尾健太という人物➤https://wp.me/P9oEaZ-41

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