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untitled-53
20世紀の中にいくつか置き忘れた小さな爆発が
いま生活しながら立ち止まっているうつろな両手に届けられた
触れたものすべてから形を奪って通りすぎてゆく大きな力は
白い手のひらの上にポトリ
小さく落ちて冷たくなった
過去だとか歴史だとか都合のいい堅い服を着せられて
いつの間にか机の上の置きもののようになってしまったけど
それでも輝きはまぶしすぎて
瞳を傷つけることがある
untitled-52
失われた冬の夜に
降るような直線と曲線の中で
潰し終えた言葉をトランクに押し込みながら
刃こぼれした農具を手に
呆けた宝探しは一旦終了
最後の一瞬が焼き付いた路上に
狭くて居心地の悪い
タイル貼りの庭園を背にして
たくさんの本を拾ってきた
あの遠い惑星を振り返る
untitled-52
逃げ出せない悲しみの中で
脱け出せない沈黙の中で
服に落ちた銀の雨を払い
駅までの15分を歩く
ボールペンのインク
残り少ない影の色
語ろうとすれば抜け落ちて
胸にしまったままでおいた方が
いくらかましだと思うのです
砂漠は遠い海のはてで
何十年も口をつぐんでいるのです
untitled-50
水の上にこぼれた
光と花びら
降りつづく激しい
夜の雨
自転車で走りぬける
いつまでも続くような
まばたきがこだまする
夜と同じ色の世界に
ビニール傘に描かれた
ビーズのギラギラ
境い目が消えていく
夜と雨
数えても25番目の
どこでもあり得ない場所
自転車で走りぬける
盗んだ光を胸にしまって