再婚と卵巣がん【5】
ひと昔前のキロク
【卵巣のう腫→卵巣ガン】
卵巣のう腫・子宮筋腫の腹腔鏡下摘出術を終えて自宅に戻り5日目の夜、私が買い物に出た際に病院から電話があった。
長女が出たのだが、当時飼っていた犬のペータン(本名からだいぶズレた犬のニックネーム)がめっちゃ吠えて、病院の誰が何の用でかけて来たのか分からなかったという。私が不在だったのでまたかけると言っていたので聞き直さなかったと。
ペータン…いつも電話ぐらいでは吠えないのに…。
保険手続きの為に診断書をお願いしていたのでそれが出来たのかなぁ…と思い特に気にせず就寝。
翌日は手術も無事に済んだ事だし…と彼(現在の夫)と役所へ。
私は再婚するとは思っていなかったので子供の名字が変わらなくていい様に元夫の姓を名乗っていた。
長女が結婚するのにあたり、式場の入り口に掲げられる『××家』問題が発生。
元夫の名字で挙げるのもなんだし、入籍していない彼の名字出すのも変だし、私の旧姓ってのも『え?どなた?』ってなるよねぇ…という事で、無駄に入籍を急いだ。
後々、すげー後悔するのだが、ご丁寧に養子縁組までして娘達も現夫の姓を名乗る事になった。
私は母子家庭時代、本当に楽しかったし一人親でもちっとも困らなかったのに、何で再婚したんだか本当に謎。勢いって怖いわ。
長女なんて入籍までのほんの数週間だけ名乗るんだし…。
手続きが面倒だし、そこまでしなくて良かったんだろうか…当時あれこれ起こり過ぎて片っ端から思いつく用事を済ませる様にしていたので深く考えていなかった。
もう全てが後の祭。私がごちゃつくのは結構だが、子供達の戸籍だ何だがごちゃつくのはすごくすごく気が引ける。
まぁ、とにかく良く考えもせずバタバタと手続きを終えた晩に、担当ドクターから電話。
「先日の手術で良く無いモノが出ましたので一度来て頂いてお話ししましょう」と。
あーーーやっちまった!!とすぐに思った。
これアレだね、ガン宣告されるヤツだよね…と。
2日後に行く予定とし、さーてどうしようかと更に頭の中が忙しくなる。
くそぅ…入籍も養子縁組もしなきゃ良かったな、とりあえずマンションのローンは私が死んだら払わなくても良い保険というのが当時はまだあったのでローンはチャラになる。
新婚の長女には悪いが次女にも権利はあるので売って二人で分配するなりしてもらって、それぞれウチの実家周辺で暮らせば妹夫婦も居るし、困ったら相談に乗ってやってくれと頼んでおけば何とかなるかな。
季節は秋。入籍はしたものの次女の高校も私も治療もあるので同居するのは翌春以降の予定だったので、これはもう夫との婚姻届やら養子縁組は白紙に戻した方が良いな、面倒になりそうだし。
再婚予定だったりしたから苗字問題が出ただけで、無かったことにするんだから何の問題も無くなる。母子家庭から嫁に出す方がスマートだよね…。そうだ、そうするか!
養子縁組の解消ってのはすぐに出来るのかな、そもそも婚姻届とかの取り消しが出来るなら全部クリアになる。
勢いで荒波も楽しんで行っちゃおうと思ったがガンとは盲点だったな。これから色々面白くなりそうだったのに…。
長女の出産までは生きられるのかな、次女はまだ高校生、いつか出産する時に私が見てあげられないのは心配だ、次女の夫となる人のお母さんが優しい人ならいいが…姑が意地悪だったら長女なり、私の妹の所に世話になればいいか…。とりあえず遺言的なものは残しておかないとな、通帳とか暗証番号とかメモして…。
と、そこそこ未来まで想像し、うん、最悪なんとかなるだろう…と思い直して夫に電話する。
夫は「まだガンとも言われてないし、そんなに重い状態とも思えないから話しを聞いてから色々考えようよ、一緒に行くから」との事。
あぁ、そう?…そうね。とドクターに会いに行く日を待つ。
私は昔から最悪の事態をかなりリアルに想像し、あらゆる妄想で具体的に策を考えるタイプなのだ。そしてせっかちなのでキャンセルはお早めにと考えるのだが、夫がそういうなら…と。
当日、夫と2人でドクターの待つ部屋へ。
「先日切り取ったモノを調べたところ、ごくごく微量ではありますが、ガン細胞が出ました」
と言う。
選択肢は3つ。
1、今回の手術で悪いモノは全て取れたと過程して、定期的に検査を受ける。
2、今回の手術で名ドクターが残してくれた卵巣を卵管からカット、盲腸、腹水など、開腹手術をして検査し問題無ければ閉じて、経過観察。
3、根治を望むのであれば開腹手術にて卵巣、子宮ごと全摘出。
ちょっと…すごい振り幅のある3択じゃない???
取れたと過程して様子見るのと、卵巣、子宮ごと全摘出じゃあ大違い…。
当時の職場に卵巣の摘出手術をしてから更年期の症状が出てしまい、20代の頃からずっと苦しんで来た…という女子がいて、なるべく臓器は残した方がいいと常々言われていた事もあり、ドクターに更年期の症状がひどく出るのではと尋ねると、治療薬もあるし、個人差もあるのでなんとも…と。
ドクターはここで決めなくていいですよ、後日、どうするか聞かせて下さいねと言うのでその日は帰る事に。
帰りの車で、私はもう孫も生まれる事だし、自分が生む気はさらさらないけど子宮ごと全部取るというのはどうも抵抗がある。中途半端に残さない方が後々安心なのかなとも思うけど…と。
お互い40過ぎなので…いや夫は当時38?か、子供ナシでのんびり人生の終盤を楽しもうって事で一致していたのだが、また手術をすることには消極的。ビビリで痛いことが苦手なヒトなので。
一応私の実家に寄り、ガンだったけど初期だからこのまま経過観察か、一部取るか、全部取るかの3択だと話すと、近所のお姉さんは抗ガン剤治療でとても苦しんでいた。そういう治療の無い方がいいのではと言うので、ごくごく微量のガンという事で抗ガン剤治療までは要らないのではって話しだから、じゃあ開腹手術でせっかく名医が残してくれた卵巣だけど卵巣を卵管から切除、盲腸やら何やら中も検査して頂く事にしようと決める。
その際の簡易検査で何か出れば全部取るだろうけど開けないでただ経過を見ても心配は残るから。
うーむ、しかし血液検査やMRIやガン検診では一切、ガンの数値が出ていなかったのになぁ…検査無駄か!?とも思ったが、本当に初期ガンだったんだろう…と楽観的に受取る事にした。
当時は余りネットの情報が無く、卵巣ガンがサイレントキラー(さして自覚症状も無く進み死に至る可能性があるのでこう呼ぶそう)と言われてるなんで知りもせず、更年期症状は辛いらしい…なんてだけで卵巣も子宮も残したんだから無知って怖いね。
でも未だに生きてるから…。
生きてるどころか後に45歳でまたひとり生むという事が起きたくらいだからあの選択をして良かったということになるのだろうけど。
今度は開腹手術かよ〜、でも前回が腹腔鏡手術で良かったな…と思っていられたんだから呆れるくらいのプラス思考かも。
次回、卵巣ガン開腹手術詳細。
<続く>
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