2022年5月の記事一覧
小詩集・海を意識した時
#海を意識したとき
12才のころだったろうか
僕が内なる変異を感じ
海を意識したとき
その巨大なプリズムの中で
僕は曖昧なシルエットになった
僕は意味をはぎ取られた
軟体動物のように
沈没してゆく睡魔の影になった
ああ生きることはできない
嵐がまきおこる
僕は海岸に打ち上げられていた
それからの流浪
時折海は眠たい水音をよみがえらせる
僕は幾度も変異を経たのかしら
い
現実の愉快な曖昧さ~詩三編
断酒会ではいつも
アルチュウで糖尿病と
自己紹介をする
大酒呑みで糖尿病で死んだ
父と兄の思いでを語る
脳梗塞から片足をえそで喪い
静かな五年の闘病で亡くなった父
いつもベッドに寄り添い
老いを迎えた三毛猫
生への疑念に沈んでいた
私は父のように酒呑みになって
はたちの命をなんとか保った
やがて兄が糖尿病の
あらゆる合併症を併発し
八年の混乱のすえ
死んでいった
幼