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映画、演劇、書籍(文学)等、文化全般にわたるレビューを書いています。ランダムにマガジンにまとめてみました。
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再掲:松家仁之『火山のふもとで』レビュー〜東日本大震災の後、当て所なく支えを求めていた心を慰撫してくれた佳品。

再掲:松家仁之『火山のふもとで』レビュー〜東日本大震災の後、当て所なく支えを求めていた心を慰撫してくれた佳品。

ある方から、では、お前がいいと思う小説はなにか、所謂古典、文学史的作品ではなく、と問われました。それへのお応えとして松家仁之氏の第一作についてのレビューを再掲します。

松家仁之のデビュー作にして、いきなり名作の誉れをほしいままに高評価された代表作を、故あって10年ぶりに再読かつ精読。きっかけは今秋の軽井沢タリアセン、レーモンド夏の家見学と北軽井沢に保養所を有する跡見学園での講演準備。未だに文庫化

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映画『レジェンド&バタフライ』レビュー

映画『レジェンド&バタフライ』レビュー

東映70周年記念作品とのことで、制作費にもプロモーション費にも贅を尽くしている印象である。今年の大河ドラマを担当する古沢良太が脚本として名を連ね、木村拓哉、綾瀬はるか共演、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督となれば、自ずから関心、前評判は高くなる。実際岐阜城、安土桃山城はセットかと見紛うほどの出来栄えだし、合戦シーンや比叡山焼きなども見応えある仕上がりである。しかしながら誰もが知る歴史の一コマ

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源氏物語 1

源氏物語 1

『1946・文學的考察」で福永武彦が書いた「源氏や西鶴を読むことは、原書でジイドやロオレンスを読むことより一層むずかしい」とのくだりに、はたと思うところあって恩師鈴木日出男先生が校註者のおひとりとして並ぶ小学館『新編日本古典文学全集』ハンディ版『源氏物語』①を巣籠もりGWの一冊とした。
修士課程の2年間、指導教授中西進先生がプリンストン大に招聘された事情により、院生としての研究の最初の手ほどきは日

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源氏物語 2

源氏物語 2

鈴木日出男先生の学恩に浴しつつ『源氏物語』巻4「夕顔」まで読み返したところで、もう一人の源氏の恩師池田勉先生の『源氏物語試論』を学部時期以来45年ぶりに通読。池田先生御退官直前の学部2年の時、先生に顧問をお引き受けいただき同級3人で源氏輪読会を週一回で始めたものの諸事情あって半年しか続かなかったことが今となると悔やまれ、先生からは最後に無理しなくてもいいよと優しくお言葉を頂戴したことが懐かしく胸締

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源氏物語 3、 4

源氏物語 3、 4

源氏物語 3

『源氏物語』通読、「若紫」と「末摘花」2巻は最もお世話になった新潮社の日本古典集成版で。色刷りの傍注がありがたく、さくさく読めます。2021/05/17

源氏物語 4

『源氏物語』第七帖「紅葉賀」は、序盤の最も美しく切ない典雅な一巻。光源氏は18歳。あでやかな舞姿の輝くばかりの美しさは、その若々しさとも相まって観る者に感動ゆえの涙を誘わずにはいられないほどだった、と語り手は伝え

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源氏物語 5

源氏物語 5

『源氏物語』第九帖「葵」は、物語として誠に素晴らしい一巻で、いつ読んでもうっとりさせられる。この春も中止となった今なお続く葵祭(賀茂祭)を背景にした車争い、六条御息所の切ない想いと生霊と化して葵の上を取り殺してしまう怨念、光の葵の上への思い、紫の上の成長と婚姻、禁断の子夕霧の誕生などなど、どこをとっても王朝物語然とした申し分ない品揃えである。原文を典雅な気分でたどりながら、ふと思い立って谷崎、円地

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源氏物語 6

源氏物語 6

『源氏物語』第12帖「須磨」13帖「明石」は序盤の大きな転換点として興味深い所謂「貴種流離譚」。朧月夜との契りが引き金となり政情への懸念から光は須磨へと退く決意をする。今の感覚からすると、とても辺境とは思えない名勝だが、畿内を離れるということはそれほどに深刻だったということを読書体験させられ現代にも通ずる小説的展開となる。荒涼たる海浜であることもあり、おそらくは光にとっての経済基盤たる荘園だったの

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源氏物語 7

源氏物語 7

『源氏物語』第十四帖「澪標」から第二十一帖「少女」までは、京に復帰した光の栄華に向かう足固めとなる物語。このあたりの雰囲気を象徴的に表しているのは第十七帖の「絵会」である。藤壺との不義で産まれた冷泉帝が即位し、光は内大臣となって、明石の君は女子を授かる。六条御息所が出家後、娘を光に託し世を去り、末摘花や空蝉との物語をはさんで冷泉帝に入内した故六条御息所の子の絵画への造詣がクローズアップされることに

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源氏物語 8

源氏物語 8

 寂聴御大が嫌なヤツと評していた玉鬘の美しさとそれを取り巻く光はじめ男たちの思惑が様々に交錯する第22帖から31帖「真木柱」までの所謂「玉鬘十帖」は『源氏物語』第一部を締め括るのに相応しい光源氏の隆盛をもあわせて描く典雅なひとまとまり。
 精緻な心理描写や六条院の季節の移ろひによって物語に奥行きがもたらされ、紫式部の筆の成熟を感じさせる。全体の通奏低音部と捉えるべき春秋優劣論は『万葉集』の額田王の

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源氏物語 9

源氏物語 9

『源氏物語』第34帖からの第二部と括られる巻名のみの『雲隠』までは光源氏の晩年が描かれる重苦しい物語群である。その前半部、光は40の賀を祝され『若菜』上下で、はるかに年少の女三の宮を正室として迎える。理想を具現化させた最愛の紫の上を苦悩させ、朱雀院ばかりでなく紫の上の病や出家志向が物語を暗澹たる雰囲気に染め上げていく。明石女御は後の春宮を出産し、父である明石入道は宿願成就と受けとめ遁世する。女三の

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源氏物語 10

源氏物語 10

『源氏物語』第二部後半の第37帖「横笛」から第41帖「幻」までは、もはや王朝恋愛絵巻という華麗さとは遠くなって心理小説と呼びたくなる展開である。光は50代となり、年若い正室女三の宮の柏木との禁断の子を受け入れ、柏木の死を悼む。わが子夕霧は、かつての自分と同じ過ちの道を進み始め、運命に翻弄された紫の上の苦悩と孤独は深まり、出家を願うも光の許しを得られず悲しみのうちに落命する。光は、かかる現実こそ自ら

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源氏物語 11

源氏物語 11

源氏亡きあとの第3部の「宇治十帖」と愛される子ども世代の物語は、第2部の心理小説風趣きにもまして近現代作品に重なる展開で、誰もが想起する様に、宇治の大君と妹中の君の哀しい顚末は、いつ読んでもジイドの『狭き門』を重ねないではいられない。姉妹の年齢差も人物像も、ここまで相似形となると、グローバルな文学の普遍性ということを感取するばかり。大長編の大団円は、亡き大君の面影を宿す異腹の浮舟と薫のあまりに切な

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源氏物語 12  角田光代訳①

源氏物語 12 角田光代訳①

『源氏物語』2ヶ月にわたる朝読書通読中、何度か谷崎、円地、寂聴三者の訳を読み返し比較参照しながら、2017年秋に上巻が出た角田光代訳も読まなければと思うことが重なり、完結まで購入を控えていた大部の3冊を7月に入って急ぎネット注文し、原文読了後のこの1週間、まずは宇治十帖の下巻から手に取り600頁の大冊を読了した。
原文通読でも記した通り、宇治十帖についてはつねづね近代小説のような印象をもっていて、

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