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映画、演劇、音楽を中心にエンターテインメント全般についての発信を続けています。   鎌…

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映画、演劇、音楽を中心にエンターテインメント全般についての発信を続けています。   鎌倉ペンクラブ会員

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  • 源氏物語(再掲)

    源氏物語にかかる記事一覧です。再掲になります。

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    映画、演劇、書籍(文学)等、文化全般にわたるレビューを書いています。ランダムにマガジンにまとめてみました。

最近の記事

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再掲:のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて

一部からご要望賜りましたので、再掲させていただきます。 幻冬舎webコンテスト 第二回 エッセイ 優秀作受賞作です。 よろしければご一読ください。 https://www.gentosha-book.com/contest17/

    • 高麗屋、花形勢揃い:七月大歌舞伎『裏表太閤記』レビュー

       七月の歌舞伎座夜の部『裏表太閤記』は、見どころ満載の賑やかで活気溢れる新趣向の歌舞伎狂言である。  元は二世猿翁が猿之助時代に奈河彰輔(脚本)、六世藤間勘十郎)(演出、振付)とともに産み出した現在のスーパー歌舞伎のはしりとも言うべき新作。このたびはオリジナルに手が入り尺を縮めて初演以来43年ぶりの舞台とのこと。  創作新歌舞伎らしく、大滝の場では水流激しく客席にまで水飛沫迸り、猿と呼ばれた秀吉の夢が『西遊記』孫悟空の仕立て。きんとん雲に乗ったが如くに当代幸四郎宙乗りで観客を

      • 祝!横田栄司舞台復帰:文学座『オセロー』レビュー

         現況の演劇界にあって衆目一致、誰疑うことなきシェイクスピア役者、横田栄司の舞台復帰となる『オセロー』が6月29日、新宿紀伊國屋サザンシアターで初日を迎えた。  劇場には、演劇界の大御所はじめ関係者多数駆けつけ、当代随一のタイトルロールの帰還を寿ぎ、かかる時空を共有せんと皆で等しく開幕ベルに耳を澄ました。  舞台は光彩あしらわれた背景幕と空間を象徴するべく開閉自在な四角囲いが設えられるのみ。物語開幕すると、役者は客席も舞台にして劇空間は縦横無尽、誰もがよく知る悲劇が台詞口跡明

        • 観客に楽しむことを求めない映画『関心領域』レビュー

           つらい作品である。ドイツ人一家の日常生活を、基本ロングの固定ポジションで描き続けるだけだから、その単調さに睡魔さえやって来る。しかし、その一家が、アウシュビッツの強制収容所と壁一つ隔てただけのところに住まう所長ルドルフ・ヘスの家族であることを了解した上で受け止める時、きわめて深刻で重い意味を有した映画となる。  歴史的残虐さと隣り合わせに存在した富裕・華美な日常。それを描いた原作、それを踏まえて映画化した本作、その枠組みを構築した時点でこの作品は、唯一無二の独自性を獲得して

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        再掲:のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて

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        • 源氏物語(再掲)
          15本
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          24本

        記事

          蝶花楼桃花の企画力への感嘆と、落語界へのいささかの懸念

           今をときめく蝶花楼桃花が企画した二夜連続女流落語二人会、第二夜、古今亭菊千代との競演を、なかの芸能小劇場で鑑賞。  桃花の師匠、小朝の落語会で何度か聴いた春風亭ぴっかりが、永らく絶えていた蝶花楼の亭号を復活させ桃花を名乗り真打ちになって華やかな話題となって以来個人的には初の高座。小朝直伝の「宗論」と「辰巳の辻占」二席には、なお自家薬籠中の仕上がりとは言えぬ伸びしろを感じさせるものがあった。対して、同夜相席の大先達古今亭菊千代師匠は「鼓が滝」と「お見立て」で、貫禄の高座。もし

          蝶花楼桃花の企画力への感嘆と、落語界へのいささかの懸念

          朝井リョウと岸善幸が問いかけるもの:『正欲』レビュー

           朝井リョウの原作は第34回紫田鍊三郎賞、岸善幸監督が脚本の港岳彦と組んだ映画は昨年の東京国際映画祭最優秀監督賞と観客賞。ともに読み応え、観応えある仕上がりで、未読、未見の方に是非と推奨したい。作品を通してふたりの作家が、われわれに問いかけるテーマは重く、ただ良質なエンターテイメントであるとだけでは片付けられないものがある。  ここのところの世間一般での金科玉条とも言うべき「多様性」の三文字。その前で、個人的には、ただ平伏し、時に萎縮するしかない場へと追い込まれる印象を有する

          朝井リョウと岸善幸が問いかけるもの:『正欲』レビュー

          エマ・ストーンの2度目のオスカー納得。映画『哀れなるものたち』レビュー

           エマ・ストーンが2度目のオスカーを獲得した『哀れなるものたち』をDisney +で配信鑑賞。『聖なる鹿殺し』、『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督らしい、と評してしまえばそれまでだが、ファンタジー・ポルノという印象の仕上がり。原作があって、古いゴシック小説のようだが、あらためて読むまでもないだろう。ネタバレになるが、自分自身の子の脳を移植された母たる主人公が、性的経験を重ねながら成長し、その肉体に追いつき自立心旺盛な女性として自我確立、覚醒して解剖医になると

          エマ・ストーンの2度目のオスカー納得。映画『哀れなるものたち』レビュー

          クリストファー・ノーラン監督らしい仕上がり『オッペンハイマー』レビュー

           オスカー7部門受賞の話題作を劇場鑑賞。3時間の長尺を飽きさせず、緊張感を維持して観せるあたりは、さすが。難解の評判先行ながら、クリストファー・ノーラン監督らしい仕上がり。原爆の父、オッペンハイマーをめぐるドキュメンタリー伝記映画というべき結構。映画らしい映画で、見応え十分だが、深い抒情味や感動はない。観客へのサービスか、冒頭で本作2部構成と丁寧に字幕提示があり、かつ、カラーとモノクロで時間軸の重層構造が鮮明。キチンと受け止めれば、主題も仕掛けも実に分かりやすく、物理や歴史に

          クリストファー・ノーラン監督らしい仕上がり『オッペンハイマー』レビュー

          巍然屹立、山崎ナオコーラ『ミライの源氏物語』レビュー

           大河ドラマ『光る君へ』で紫式部が主役になったことから昨年来、関連本、youtube、百花繚乱の様相である。そうしたなか本年度ドゥマゴ文学賞の栄誉に輝いた山崎ナオコーラの『ミライの源氏物語』は、巍然屹立の感ある出色の一冊である。  いまや世界中、いや、もしかしたら先進国と括られる、ある特定の「世界」中かも知れないが、LGBTQ +、が世界標準となった多様性時代。語弊、批判覚悟で私見一言添えさせて貰えば、多様性を謳いながら、わがまま勝手の独りよがりは決して許容されない、別角度か

          巍然屹立、山崎ナオコーラ『ミライの源氏物語』レビュー

          惜しくも胸に刺さらず:映画『PERFECT DAYS』レビュー

           昨秋の東京国際映画祭(tiff)オープニングを見逃して、そのまま機を逸していたのだが、昨夜の日本アカデミー賞主演男優賞を祝し、米アカデミー賞発表直前の、このタイミングで12月公開ながら今なお劇場公開中の同作を、ようやく鑑賞。周辺の評価高く、満を持しての思いで足を運んだが、個人的には、もうひとつ。深く刺さるものがなかった。  昨年、小津安二郎生誕120周年ということで小津を敬してやまないヴィム・ヴェンダースがtiffの審査委員長を務め、関係イベント多数催されたことから、本作が

          惜しくも胸に刺さらず:映画『PERFECT DAYS』レビュー

          映画『線は、僕を描く』レビュー

           Netflix配信『パレード』からの流れで配信鑑賞。同作のヤクザ役とはうってかわっての誠実・真摯な役柄を体現した横浜流星に感心させられるばかりの和文化作品。『ちはやぶる』で堅実な監督力を見せた小泉徳宏が百人一首から水墨画主題にシフトして、啓発教化的要素をくどくならないよう織り込み和文化の雰囲気たおやかない場面づくりに成功している。エンドロールの意匠は秀逸。  共演陣も安定感に満ちて過不足なく主役を盛り立てている。『パレード』『春に散る』や『流浪の月』、『きみの瞳が問いかけて

          映画『線は、僕を描く』レビュー

          藤井道人監督の抒情のありようが伺える佳品:Netflix配信映画『The Parades』レビュー

           藤井道人が初めて長澤まさみを起用したことで話題のNetflix製作作品を配信鑑賞。決して目新しい設定ではないが、共演陣粒揃いで穏やかに楽しめる。  登場人物ひとりひとりの物語に苛烈な深刻さなく、映画の力を強調して、劇伴も肩肘張らず、終幕に流れる野田洋次郎の歌声に涙腺刺激されるばかり。物語の大団円の技あり妙手が嬉しいカタルシスをもたらしている。  これからの日本映画を牽引するひとりである藤井道人に内在する抒情のありようが伺えるハートウォーミングファンタジー。心地よい仕上がりで

          藤井道人監督の抒情のありようが伺える佳品:Netflix配信映画『The Parades』レビュー

          スペクタルを真っ直ぐに受け止めることのできない悪癖を嘆く:映画『ナポレオン』レビュー

           ホアキン・フェニックス主演で話題だったリドリー・スコットの大作をApple TVで配信鑑賞。見応え十分。中盤の戴冠式は、ルーヴルの名高い歴史画そのもの。衣装、装置、装飾が見事で息をのむばかり。冒頭のマリー・アントワネットの断頭台シーンから長尺2時間半があっという間である。  ナポレオンの生涯や歴史的事実は誰もが知るところであるから、これをどう描く以上に、どこに新味を出すかにならざるを得ない。リドリー・スコットは、悪妻として歴史に刻まれるジョセフィーヌ基軸で全編を描き切った。

          スペクタルを真っ直ぐに受け止めることのできない悪癖を嘆く:映画『ナポレオン』レビュー

          源氏物語は恋のカタログ(再掲)

          マガジンにまとめました。https://note.com/kamakurah/m/m054284542d18

          源氏物語は恋のカタログ(再掲)

          熱量希薄なディストピア小説。芥川賞『東京都同情塔』レビュー

           今期芥川賞を『文藝春秋』三月特別号で読了。ここしばらく、どの受賞作も肌に合わず毎回、不平不満をならべるばかりだったが、本作は興味深く読み遂せた。決定の報を聞いたとき笙野頼子の系統かなとの根拠なき印象を抱き、いくらか期待するところもあって候補作発表時点以降すぐに書店には並んだ同書を手にしかけたほどだった。  本作は、所謂ディストピア小説である。好んで親しむジャンルではないが、近年ではカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を抱きしめるように読んだ。古くはジョージ・オーウェル、

          熱量希薄なディストピア小説。芥川賞『東京都同情塔』レビュー

          上質な佳品『せかいのおきく』レビュー(更新)

           ヨコハマ映画祭に寄せて。  岸井ゆきのとともに黒木華が主演女優賞の栄誉を得た阪本順治監督の意欲作『せかいのおきく』について一言。個人的には作品賞となった『ケイコ目を澄ませて』よりも本作を上位に位置付けたい。  江戸から明治への移行期。西洋文明が一挙に押し寄せてきた時代設定の中、新たな日本語となった「せかい」を見事にキーワードとした脚本が素晴らしい。市井の人々にも新文明が伝播し、色恋の観念そのものを塗り替える。その市井の最下層の若者(寛一郎)とそれまで最上位にあった武家(佐藤

          上質な佳品『せかいのおきく』レビュー(更新)