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【読書】源氏物語・紫の結び2(荻原規子訳)

 2024年1月17日(水)、荻原規子訳『源氏物語・紫の結び2』を読了しました。感想文です。

■本書の範囲

『紫の結び2』では、須磨、明石の流浪から都に返り咲いた光源氏が、栄達を重ねていく様子が描かれます。

本書冒頭の「2巻のはじめに」より。
巻数をアラビア数字に変換。

 荻原規子さんの現代語訳では、"なかしな"の女性との関わりを別立てとしています。そのため、玉鬘たまかずら十帖なども省かれています。本書には、帖でいうと、「澪標みおつくし」「絵合えあわせ」「松風まつかぜ」「薄雲うすぐも」「朝顔あさがお」「少女おとめ」「梅枝うめがえ」「藤裏葉ふじのうらば」、そして、「若菜わかな 上」の前半までが収められていました。
 以下、印象に残った部分を、感想を交えながら記載してみようと思います。

■平安時代の風流

 源氏の君が栄達を重ねていく巻ということもあり、平安時代の文化・風流を感じる部分が多くありました。

(1)和歌

 これは「紫の結び1」から感じていたことです。荻原さんの現代語訳では、和歌は意訳となっていますが、それでも男女間の歌のやり取りに、機転が効いていることを感じました。
 昔、何かの本で読んだか、学校の授業などで聞いたか忘れましたが、私は「紫式部は和歌はそれほど上手くない」と思い込んでいた部分があり、少し意外でした。自分が、和歌をやり取りする立場だったら、こんなに上手く返せないだろうと思うのです。
 また、どんな素材のどんな色の紙に、どのような墨の濃淡で和歌を書くかを想像するのも、面白く思いました。

(2)絵

 「絵合」の帖などに出てきます。冷泉帝の御前で絵合わせを行い、梅壺の左方と弘徽殿の右方が競い合います。テーマを決めてお互いに絵を出し批評し合う姿、一日がかりで夜までかかること、古き絵、新しき絵のそれぞれの面白さなどが描かれ、大変興味深く感じました。
 また、別の帖でしたが、文字を絵画的に変形する「葦手あしで」なども出てくる場面があり、昨年「やまと絵展」などで学んだことが文章として表現されていて、嬉しく感じました。

(3)香

 「梅枝」の帖に出てきます。明石の姫君の入内に合わせ、源氏は姫君にめずらしい薫香を持たせようと、薫物たきもの合せを依頼します。
 私は薫物に全く詳しくないのですが、どのような場所で、どのように調合するかで変わってくるようです。「黒方くろぼう」や「侍従じじゅう」「梅花ばいか」といった名前の薫物があることを私は初めて知りました。今も伝わっているのでしょうか。香りに詳しければもっと楽しめる場面のように思います。
 また、女性たちがそれぞれ薫物を行うのですが、どのような香りを用意するか、他の人と被らないように気をつける点など、それぞれの登場人物の性格が出ているようで、面白く感じました。

(4)管弦楽

 これも『紫の結び1』からですが、源氏の君や頭中将が、管弦の催しをする場面があります。例えば、頭中将は和琴が得意であるように記載されている部分が何箇所かあります。和琴が(他の楽器と比べて)どのような楽器であり、頭中将の人物造形にどのような影響を与えているのか、など想像したりしました。
 また、人物系図に出ている「紅梅」という人物を、私は初め女性かな?と思っていたですが、頭中将の二男(柏木が長男で、その弟)で、催馬楽さいばらなど歌(歌謡)が上手いと記載され、ここもキャラクターが出ているな、と思いました。

■その他

(1)紫の上と明石の君

 紫の上と明石の君の対比というか、立場・役割の違いは、ストーリーの中核をなすようで、大変面白く感じました。
 少しだけ記載すると、「明石の姫君」の実母が「明石の君」で、養母が「紫の上」となります。
そして、「明石の姫君」の入内後は、再び「明石の君」がお世話をすることになります。
 それぞれが立場を考え、譲り合うというか、それぞれの心情も描かれ、紫式部の筆力を感じました。

(2)夕霧と雲居雁

 夕霧ゆうぎり(源氏の君と葵の上の息子)と雲居雁くもいのかり(頭中将の娘)の恋のやり取りのあたりにくると、頁を繰るスピードも上がってくるのを感じました。今後、彼らがどうなるかも楽しみです。

(3)六条院の造営

 「少女」の帖の後半に、四季折々の庭をしつらえた六条院造営の話が出てきます。春夏秋冬それぞれの庭に、源氏の君は女人たちを住まわせます。この辺りは、大和和紀の『あさきゆめみし』を思い出したりしました。同マンガも、途中で挫折したとは言え、文章で読むのを補うのに役立ったように思います。読んでおいて良かったです。
 そして、この六条院への冷泉帝・朱雀院の行幸で、源氏の君の人生は一度頂点を迎えます。

■最後に

 最後に「若菜」に少しだけ入りました。女三の宮が登場し、物語の色調が変わってきます。せっかく辿り着いた「若菜」です。楽しんで読んでいきたいと思います。

 また、今回の冒頭の画像は、ふみっちさんの「朝顔」の写真を使用させて頂きました。ありがとうございます。(朝顔の君という女性も出てきます。)
 
 文章にちょっとポツポツ感があり、まとまりのない部分もありますが、本日は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

<ご参考>
『源氏物語・紫の結び1』の読書感想文です。

『源氏物語・紫の結び3』の感想はこちらです。

<参考文献>
田口榮一監修・執筆『すぐわかる 源氏物語の絵画』も参考にしました。

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