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【文楽】源平布引滝

 2023年12月10日(日)、東京都足立区北千住にある「シアター1010(センジュ)」に、文楽を観に行きました。記録を残します。

■12月の文楽について

(1)通常の12月公演

  • 期間:12月4日(月)~12月14日(木)

  • 会場:シアター1010(足立区文化芸術劇場)

  • 演目:源平布引滝げんぺいぬのびきのたき(竹生島遊覧の段、九郎助住家の段)

 プログラムによると、12月公演は、中堅・若手を中心とした座組で、若手技芸員にとっては飛躍の場となるとありました。

(2)文楽鑑賞教室

  • 期間:12月5日(火)~12月14日(木)

  • 会場:同上(文楽公演と同じ)

  • 演目:団子売、解説 文楽の魅力、傾城恋飛脚けいせいこいびきゃく(新口村の段)

 上記演目の内、私は過去に『傾城恋飛脚』を観たことがあったので、今回は、『源平布引滝』だけを観ることにしました。そして今回は、10月末で国立劇場が閉場されてから、東京での初めての主催公演です。公演期間が短めで、基本的に、土日しか行くことの出来ない私は、チケットを取るのが結構大変でした。

 チケット料金について少しだけ記載すると、文楽の本場は大阪です。関東で文楽を見ると、相対的に高いです。需要と供給の問題か、移動費用などコストの問題か、色々考えてしまいます。私は、公演プログラムを購入することが多いタイプなので、合計で、もう少し安価だったらな、と願ったりします。

■シアター1010について

(1)座席の見え方について

 初めて行く劇場だったので、どのあたりの席が良いか迷いました。
 一階席のみの販売で、最後列は21列です。通路を挟んで、前方エリア(8列目まで)と後方エリア(9列目以降)に分かれていました。
 私が購入したのは、前方エリアで、少し舞台を見上げるような感じを受けました。また、前方エリアは床の勾配が緩やかで、あまりありません。しかし、席が交互に設置されているので、前の人の頭はそこまで気にならないかもしれません。
 他方、後方エリアは勾配(段差)があり、前の人の頭も気にならず、後ろの方からも割とよく見えるのではないか、と思いました。

(2)劇場のフロアについて

 劇場が入っている文化施設は、北千住駅からほぼ直通です。しかし、劇場は、10階・11階にあり、エレベーター・エスカレーターで上がるのも混雑し、結構大変でした。早めに到着しておいた方がよいように思います。
 そして、舞台セットなどを持って上がるのも、大変だろうなと思いました。

■作品:源平布引滝について

(1)布引の滝について

 「布引の滝」と呼ばれる滝は全国にあるようですが、本作で登場する滝は、兵庫県神戸市にある滝で、那智の滝(和歌山県)、華厳の滝(栃木県)と並び、「日本三大名瀑」にも数えられます。(写真は、def_lightさん(クロノツカヤさん)の画像を使用させて頂きました。)
 そして、「布引」という言葉は、布地を垂らしたように滝が流れ落ちる様を表した言葉のようです。Wikipediaによると、「平安時代の歌物語『伊勢物語』や歴史物語『栄花物語』をはじめ、古くから宮廷貴族たちが和歌に詠むなど多くの紀行文や詩歌で紹介される文学作品の舞台となっている。」とありました。

 『源平布引滝』は全五段の作品で(今回の上演は三段目)、初段に「布引の滝」が出てくる場面があるようです。

(2)あらすじ(それほどネタバレなし)

 上演された三段目を、一言でいうと、斎藤実盛の「壮年期」の話です。インターネットで、歌舞伎のHPを見ると(歌舞伎でも同演目あり)、三段目は「実盛物語」と記載されていました。

 少しだけ、斎藤実盛について記載します。
 源平合戦の時代、斎藤実盛(1111〜1183)は、もとは源氏に仕えていましたが、源義朝死後、平氏に仕えた武将です。そのため、源氏にも平氏にも恩義を感じる立場にあります。
 その実盛は、加賀国の篠原の戦いで、木曽義仲の武将・手塚光盛(?〜1184)に討たれます。その時既に70歳を超えていましたが、髪を黒く染めて出陣していました。髪を黒く染めていた理由については、武芸を重んじる心や、若者に侮られまいとする心など、色々な受け止め方が出来るように思います。なお、この実盛の末期は、今回の上演場面ではありません。

 今回の三段目では、壮年期の実盛(平家側)と、まだ子どもである太郎吉(後の手塚光盛・源氏側)と出会い、未来での対決を約束する姿が描かれます。そして、太郎吉とその母・小まんの親子の情愛、小まんの源氏に対する忠義心なども描かれました。

(3)感想

 個人的には、とても面白い作品でした。
 私は、相変わらずですが、太夫の語りや三味線の聞かせどころではなく、一番にストーリーを追ってしまうようです。そこまでストーリーも複雑ではなく、心情的にも最後はホロンと来ました。
 能『実盛』では、実盛の末期が描かれますが、この『源平布引滝』三段目では、その前提となる場面を観ることが出来ます。実盛と光盛の出会いなど、過去・現在・未来が繋がっており、おすすめ出来る作品です!

■追記

 大阪から東京に来られる技芸員の皆さんですが、本公演の前後の日程で、個別公演をされるチラシをいくつか見かけました。平日の夕方などで、なかなか行くのが難しいかもしれませんが、聴きたい演目があったら、行ってみたいなと思いました。

 本日は以上です。

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