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【読書】アンジュと頭獅王

 2024年8月14日(水)、吉田修一さんの小説『アンジュと頭獅王』を読み終わりました。
 本作は、フォローさせて頂いている三太さんの紹介記事から読んだものです。三太さんの記事はこちら(↓)です。

 三太さんの記事にもあるように、本作は、説経節「山椒大夫」をもとに、吉田修一さんが、オリジナルストーリーを加筆した作品です。
 以下、感想と説経節についてのメモを少し記載します。

■感想

(1)文章のリズム感

 説経節がベースとなっているせいか、リズム感(「節」)がある文章でした。小学館のHPにも、「文字を追うごとに、思わず声に出して読みたくなる圧巻の言葉とリズムにあふれている。」とあります。

 ただ、そのリズム感からか、アンジュと頭獅王の姉弟が、山椒太夫の下で、苦役を強いられたり、拷問を受けたりする場面で、私は、思い詰めるような感じで読む部分もありました。
 後半、頭獅王が山椒太夫の下から落ち延びた後は、割とスラスラ読むことが出来ましたが、全体として、重く響く部分も多かったです。

 「あらいたわしや」という出だしや、「のうのう」という語りかけなども、リズムにのるきっかけを作っているようでした。
 一文くらい例として出せれば良かったのですが、「これだ!」と決められなかったので、本稿では控えます。

(2)現代に生きる私から見て

 読みながら、そして読んだ後で、我が国の憲法にも規定されている「身体の自由」や「職業選択の自由」に思いが及びました。
 人買いに買われ、苦役を強いられ、不当な拷問を受けるなど、日本にも横行していた時代があったことが読み取れます。また、現代でも「法」が整備されていない国もあります。
 また、出自や命令によって仕事が決まるのではなく、(実際の人の移動は別として)「職業選択の自由」が保障されていることの有り難さを感じました。

 アンジュや頭獅王の境遇と比較し、現代の日本に生きることに、ほっとする場面があったのも事実です。その安心感や安全感を実感しつつ、どのように前に進んでいけばよいのか、考えさせられます。

■説経節について

 「説経節」とは何か気になったので、今回は、インターネット検索でなく、図書館で日本史や文学の辞典を引いて、調べてみました。その中の2つを記載します。

(説経節とは)語物かたりもの。説経浄瑠璃、説経ともいう。鎌倉末から室町初期に仏教界の節付ふしづけ説教(節談ふしだん説教)から派生した民間芸能。もともと説経(説教)とは、経典や教義を説いて民衆を教化する行為をさすが、それを実践する説経師(説教者)たちが、言葉に節をつけて話芸風に口演したために芸能化していった。〈以下省略〉

日本歴史大事典(小学館)より

(説経節とは)説経浄瑠璃・設経とも。中世末〜近世初期に盛行した語り物芸能、またその演者。神仏の人間時代の苦難の物語である、いわゆる本地譚形式で語られるが、そのなかに世俗の病気、恋、肉親愛、嫉妬、物欲などの悲喜・美醜を素朴に描く。登場する人々も、領主階層から最下層民までさまざま。語りは、詞のくり返しと節によってリズムがとられる。「苅萱かるかや」「しんとく丸」「さんせう太夫」「小栗判官」などが代表作。

日本史広辞典(山川出版社)より

 その他にも、代表作を5つ取り上げて「五経説」といったり(組合せは時代によっていくつかあるようです)、義太夫節の出現により衰退したといった記述もありました。
 後の人形浄瑠璃や歌舞伎の題材に大きな影響を与えたというのは面白いです。

 冒頭の画像は「地蔵」で検索し、チコさんの画像を使用させて頂きました。ありがとうございました。本日は以上です。

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