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西原理恵子さんと娘の件

(以下、敬称略)

漫画家、西原理恵子と、その娘のあいだの確執が、1カ月ほど前に話題になった。

西原は娘をいじめており、「描かないで」と求めたことまで漫画で描いていた。

それを告発する娘のブログがネットで流通したことで、有名育児漫画「毎日かあさん」の裏側が暴かれた形だ。


子育てや主婦の日常を描いた漫画「毎日かあさん」の作者・西原理恵子氏(57)の娘がブログで幼少期から体験してきたことや、母である西原氏との関係を赤裸々につづり、話題となっている。(中略)

娘のブログには、「12歳の時に『ブスだから』という理由で整形させられた」「兄との格差が激しく、資金援助もなしに家から放り出された」など衝撃的なエピソードが並んでおり、SNSやネットを見ても衝撃を受けている人が多いことがわかる。
(日刊ゲンダイ 2022年6月14日)


西原はベストマザー賞も受賞している。これが芸能タレントだったら、週刊誌やワイドショーを巻き込んだ大騒ぎになったかもしれない。

しかし、西原は、文春とも新潮とも、講談社とも小学館とも、新聞社とも付き合いがある。「作家タブー」が働いて、ネットメディアや夕刊紙以外、マスコミは取り上げなかった。

取り上げたメディアも、実録エッセイの難しさ、みたいな無難なテーマに逃げて、問題の核心に触れたとは言えない。

そして1カ月以上たち、この話題そのものが、ネットでも忘れられた感がある。


私がこの話題をこれまで取り上げなかったのは、娘さんに自殺未遂歴があるといった情報もあり、デリケートな問題だと思ったからだ。

娘さんは成人して、舞台俳優をしているそうだが、まだ一般人同様だろう。有名人のように話題にするのもどうかと思った。

しかし、話題の熱も冷めたようだから、私が思っていたことを、ここにコソッと書いておこう。


私は、娘のブログが問題になる以前から、西原理恵子の娘さんのことが気になっていた。心配していた。

それはそうだろう。思春期の女の子の、多感な時期に、母親が男にくるって家を空けていたのである。

男とはもちろん高須克弥で、マスコミの大スポンサーである彼の名前も、「タブー」に守られてあまり出なかった。

西原は、高須とのラブラブな関係を、漫画に描き、ネットで顕示し、ことあるごとに世間に見せびらかした。

それを、10代の娘さんは、どう思って見ているのだろう、と私はずっと気になっていたのだ。


娘さんは、西原の元夫、鴨志田穣さんの子供だ。

私は漫画の「毎日かあさん」も、アニメの「毎日かあさん」も見ていたが、鴨志田さんと娘さんの絆の強さを感じていた。

アニメ「毎日かあさん」は、平成のサザエさんを目指すあまり、「消毒」しすぎて失敗していた。それでも、鴨志田さんをモデルとする「カモちゃん」と、彼が溺愛する娘との愛らしい関係が、唯一の見どころになっていた。いわゆる「パパっ子」だ。

それは、漫画やアニメだけの話ではないと思う。それが証拠に、娘さんは現在「鴨志田」姓を名乗っているらしい。

ある記事によれば、SNSで「お父さんに会いたい」と繰り返し発信していた。


さらに悪いことに、西原は、高須との関係が深まるにつれて、鴨志田穣さんの悪口を言い始めた。

me too運動に悪ノリしたのか、YouTubeで元夫からのDVを告発していたのを、私も偶然見た。

いやな感じがしたものだ。鴨志田とは離婚したのだから、それはいろいろあったのだろう。その一端は映画などでも描かれていた。

しかし、鴨志田さんは亡くなっていて、もう何を言われても反論できない。そして、その子供たちは多感な時期なのだ。今さら言わなくてもいいことだし、何を考えているのだろうと思った。

映画「毎日かあさん」の題材となった、がんで余命わずかな鴨志田と一時的によりを戻したことも、「高須先生」がそう助言したから、という話になった。

子供たちからすれば、父親との最良の思い出も、高須とのロマンスで上書きされて台無しにされた感じではなかったか。

そして、西原の鴨志田への恨みが、娘さんに投影されて、イジメにつながった可能性もなくはないだろう。


しかも、子供たちからすれば、マスコミ含めた大人たちは、みな「大作家」西原の味方なのだった。

高須とのロマンスをはやし立て、子供たち、とりわけ娘さんの思いは顧みられない。娘さんから見れば、大人はみな、敵に見えて、孤独を深めただろう。

娘さんだけでなく、鴨志田家の人から見れば、ひどい成り行きに思えたはずだ。

鴨志田穣はライターであり、関係のあった編集者もいたはずだ。しかし、亡くなった後、彼を弁護する者はいない。西原に意見する古株編集者もいたが、彼女に遠ざけられたという話も聞いた。結果、周囲はみな西原のやることなすことに拍手する取り巻きだけになる。

私は鴨志田の書くものも好きだったので、これはアンフェアだし、気の毒だと思っていた。

娘さんも、鴨志田家の人たちも、そう思っていたはずだが、周囲に味方がいなかった。


西原理恵子は、そのとき付き合っている男を、「けなしながら褒める」ツンデレ手法で有名にし、男を上げさせる。そういう「芸風」だ。付き合っている、というのが、いわゆる男女関係とは限らないが。

麻雀漫画時代は、ゲッツ板谷や山崎一夫を有名にした。

「恨みシュラン」では、神足裕司を輝かせた。

宮崎学と付き合っていたこともある。

かつては鴨志田穣ともそういう関係だった。業界では、西原が彼を小説家デビューさせ、直木賞を狙うようハッパをかけている、という噂があった。

彼の死後、講談社の文芸編集者の指導によって出来た、彼の習作集のようなものが出ていたから、その噂は事実だったのではないか。

自分のパートナーを支えて持ち上げる、彼女の「情の深さ」は、彼女の美点でもあっただろう。しかし、鴨志田にとっては、それは重荷ではなかったか、と当時思ったものだ。

ロマン優光が、西原は結局、自分のイメージをよくするために周囲をキャラクター化する、と書いていたが、そういう一面がある。

仮に鴨志田のDVが事実だとして、その「重荷」がDVを正当化するものでもない。だが、彼女がパートナーといつも依存的な関係になり、「深情け」が圧力ともなるのは事実であるように思われる。


鴨志田と別れた後、高須克弥が彼女のパートナーとなった。

私の知る限り、高須はマスコミ業界で評判が悪い。大スポンサーだから、誰も表立って悪口は言わないが。

1つには、高須が、「自分にとって得になる人物」と「得にならない人物」を峻別し、明らかに態度を変えるからだ。

「高須マネー」に近づいてくる奴らは迷惑だ、と高須は言うが、「高須マネー」を吊り下げて人を誘っているのは彼自身だ。うっかり近づいて痛い目に会った人から話を聞いたことがある。

それは、中小企業の経営者としては、当然の態度かもしれない。鷹揚に見せて、細かいことにうるさい。だから高須を特別に悪人とは思わないが、札束で頬を張られたような経験をした者は、その恨みを一生忘れないものである。

愛知のリコール偽造事件で、仮に高須本人が直接命令していなくても、責任があると私が感じるのは、彼の普段のやり方を聞いているからだ。

高須を取り巻く広告マン含めた部下たちは、最終的にボスが気持ちよくなるように振る舞うことを求められる。周りは、ボスを不機嫌にさせぬよう、言わずともボスの意思を読んで、先回りして行動するようになる。成功したら褒められるが、失敗してもボスの責任にならない。そういう「文化」が作られるのである。


西原が漫画に描いた高須の姿は、その「いい部分」だけである。実際に、「付き合って得になる」西原には、そういう部分しか見せなかったのかもしれない。

そして、西原はここでも、才能を最大限発揮した。

それまで「うさん臭い成金」イメージだった高須は、西原の漫画で愛すべきキャラクターとなり、西原のマスコミ内のコネも効いて、ただのネトウヨが、しだいに「国士」として、保守論壇のご意見番的な存在にまで「出世」する。

そこには、鴨志田に直木賞を取らせようとしたのと同じ、パートナーをよく見せようとする西原の「内助の功」があった。

高須は、自分の名誉欲のために西原を利用したところもあったかもしれないが、西原の期待に必死に応えようとしているようにも感じた。

最盛期には高須は、安倍元首相や吉村大阪知事ともSNSでやり取りして親密なところを見せていた。西原・高須コンビは、マスコミ権力だけでなく、政治権力も掌握したかのようだった。ますます無敵に見えるこの「バカップル」の背後では、娘さんがひとり放り出されて泣いていた。

しかし、それで高須本人も調子に乗ったのだろう、「知事リコール」主催者に祭り上げられたために、墓穴を掘った形になった。

その高須は、いよいよガンで危ないのだろうか。安倍晋三追悼でも、当然出てきて不思議ではないはずだが、名前を見ない。

私は西原と高須の関係は、80年代「バブル」サブカルチャーの悪い部分だけを煮詰めたようなものに見えるのだが、それはまた別の機会に書きたい。

なお、以前から西原と高須の関係の問題を書いてきたロマン優光が、今回の件も評論していて、共感するところが多い。



ともかく、無責任に言えば、娘さんは、こうした成り行きも、母親を含めた大人たちの愚かさも、人生の糧として、たくましく生きて行って欲しい。

西原は、ともかく自分の筆1つで稼いで、子供たちを育てた。それはそれで立派だ。娘さんも、その恩恵を受けているのは間違いない。豪邸に住み、子供時代から海外旅行に行きまくっていたことが、「毎日かあさん」から知れる。世間的には恵まれて育った。それを有り難がれというのではなく、その好条件だけを生かして生き延びろと言いたい。

もしかしたら、娘さんに告発本を書かせようと、マスコミがもう動いているかもしれない。

強烈な個性の持ち主である毒親、西原理恵子との対決から、自分の人生を始めるのも1つの道かもしれない。

父・井上光晴と瀬戸内寂聴の不倫を題材にした娘・井上荒野の例が最近あった。

家にいれば、周りは西原の味方と高須のファンばかりだったろうが、広い世間には西原や高須が嫌いな人はたくさんいる。

しかし、マスコミに利用されて捨てられないよう気をつけて欲しい。

西原理恵子のような母親を持てば、それは恩恵であるとともに災難だ。以前から、娘さんには「へこたれるな。頑張れ」と伝えたかった。とにかく生き延びて幸せになって欲しいだけだ。



<参考>





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