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【BEATLES】ポールのベースとバッハの対位法

CDの新譜なんて久しく買わないが、これはちょっと欲しいと思った。

ポール・マッカートニーのベースだけ増し増しで際立たせたビートルズの編集盤。「Listen To This Mr. B」

ベースが大きく聞こえる別ミックス、別バージョンを集めたという。

収録曲は以下のとおり。

1.All My Loving

2.It Won't Be Long

3.You Can't Do That

4.Tell Me Why

5.Tell Me What You See

6.Day Tripper

7. Michelle

8.You Won't See Me

9.Drive My Car

10.The Word

11. Paperbuck Writer

12.Rain

13.Taxman

14.Penny Lane

15.With A Little Help From My Friends

16.Getting Better

17.A Day In The Life

ポールのベースが目立つ曲の代表は、私的には「Hello, Goodbye」だが、もともとベース音が大きので、今回の趣旨には合わなかったのか。

考えてみると、音楽を「立体的に聞く」経験を私に最初に与えてくれたのは、ビートルズかもしれない。

家には安いモノラルのレコードしかなかった。小学生の私が自分のおこづかいで初めて買い、ステレオで聞いたビートルズの「Penny Lane」あたりで、「音楽は複数のパートの独立に動く音から成っている」ことを理解できたと思う。

それまでは音楽を「ひとかたまり」で聴いていた。

その次に買ったアルバム「Sgt. Peppers…」で、アンサンブルの楽しみ方を知った。それもポールのベースのおかげだったような気がする。

まあ、ポリフォニックな音楽の聴き方を知った、ということですね。

でも、そういう聴き方をいったん覚えてしまうと、私の音楽の趣味は、クラシックのほうに向かった。

とくに好きになったのがバッハのポリフォニーだ。


バッハから生まれたポールの「ベース」


しかし、それも道理で、もともとポールの音楽の発想のもとには、バッハがある。

あるインタビューの中で、子供のころバッハのブーレホ短調を好んで弾いたことを語っている。

「私たちが気に入ったのは、メロディラインとベースラインが同時にあることでした。」


バッハのブーレホ短調(リュート組曲)は、昔からギタリストに弾かれた曲だ。

この曲を改めて聞けば、上のインタビューで触れている「Blackbird」だけでなく、「Yesterday」とか「Michelle」とかの曲想のもとが、このあたりにあることがわかるだろう。


要するにポールは、メロディとベースが「対位法的」に動く音楽が、好きだったのである。

だから彼は、ロックを含めた普通のポピュラー音楽に、物足りないものを感じていたのではないだろうか。どんな音楽を聴いても、ポールはバッハ的な対旋律を脳内で補っていたのだと思う。

それで、ビートルズでベースを担当したとき、あのメロディックなベースを生んだのではなかろーか。

だから、私はポール・マッカートニーに導かれて、バッハに到達したと言える。

ビートルズがなぜ「いい」のか。なぜ特別なのか。答えの1つはそのへんにもあるだろう。


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